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4【side.タケル】――白

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 カタリナ高校に赴任して三年目の春。
 僕は三年二組の担任となった。
 四十名の生徒全員、希望ある未来へ向けて立派に送り出す――それが僕の使命だ。

 しかし、今年はまた骨の折れる職務となりそうだ。
 原因はエリック先生の弟。
 口も態度も悪いノア。






 彼を初めて認知したのは去年の今頃。年齢よりずっと幼く見える華奢な少女が、男子の制服を着て校庭を歩いていた。カタリナ高校はジェンダーレス配慮で制服を選択できるため、異なる制服の生徒がいても不思議はない。

「――あいつ、俺の弟だぜ」

 エリック先生の発言でひっくり返りそうになった。
 似ても似つかない。
 男前でがっちりした体躯たいくのエリック先生と正反対、可憐な少女……ではなく少年。

 はっきり言って、エリック先生は教師失格だ。

 言葉遣いは汚く態度も粗暴。
 校則違反する生徒は放置。
 職員室に堂々と趣味に関するものを持ち込み、事務仕事をサボっていることもある。とんでもない不良教師だ。おそらくノアも似たようなものだろう。


 初めてノアと会話したのは担任となって間もない頃、掃除の時間。彼がスマホを触っているところを目撃したため、「しまいなさい」と注意した。

「なんでオレだけ? 他のヤツだってさっきスマホいじってたんすけど」

「その言葉遣い! 正しい敬語を使いなさい!」

「え!? オレ敬語使ってるじゃないっすか!」

「〝ないっすか〟なんてのは敬語と言わない!」

「めんどくさっ」

「いい加減にしなさい!」

「あーもー、分かりましたよ。すいません」

「こういう場合は〝すみません〟と言うべきだ。〝すいません〟というのは砕けた表現であり――」

「マジめんどいな! やってらんねーよっ!」

 ……思ったとおり。
 やはりエリック先生にそっくりだ。

 可愛らしいのは見た目だけ。
 表現は悪いが、中身は悪ガキそのものだった。

 ノアは授業こそ真面目に受けているものの、その言動はさながら〝不良かぶれ〟だ。悪い意味でエリック先生の影響を受けすぎている。

 さらに言えば、同級生よりも明らかに精神年齢が幼い。

 校内でエリック先生を見かければ「アニキ!」と破顔し駆け寄っていく。クラスメイトと接しているときとは違う、小学生のようなはしゃぎっぷり。見ているこちらが恥ずかしくなる。

 家庭内に関して僕に口出しする権利はないが、校内での接し方は改めた方がいい。そう伝えるべく、ノアと二人で話す時間を設けた。


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