上 下
9 / 160
4【side.タケル】――白

しおりを挟む






 カタリナ高校に赴任して三年目の春。
 僕は三年二組の担任となった。
 四十名の生徒全員、希望ある未来へ向けて立派に送り出す――それが僕の使命だ。

 しかし、今年はまた骨の折れる職務となりそうだ。
 原因はエリック先生の弟。
 口も態度も悪いノア。






 彼を初めて認知したのは去年の今頃。年齢よりずっと幼く見える華奢な少女が、男子の制服を着て校庭を歩いていた。カタリナ高校はジェンダーレス配慮で制服を選択できるため、異なる制服の生徒がいても不思議はない。

「――あいつ、俺の弟だぜ」

 エリック先生の発言でひっくり返りそうになった。
 似ても似つかない。
 男前でがっちりした体躯たいくのエリック先生と正反対、可憐な少女……ではなく少年。

 はっきり言って、エリック先生は教師失格だ。

 言葉遣いは汚く態度も粗暴。
 校則違反する生徒は放置。
 職員室に堂々と趣味に関するものを持ち込み、事務仕事をサボっていることもある。とんでもない不良教師だ。おそらくノアも似たようなものだろう。


 初めてノアと会話したのは担任となって間もない頃、掃除の時間。彼がスマホを触っているところを目撃したため、「しまいなさい」と注意した。

「なんでオレだけ? 他のヤツだってさっきスマホいじってたんすけど」

「その言葉遣い! 正しい敬語を使いなさい!」

「え!? オレ敬語使ってるじゃないっすか!」

「〝ないっすか〟なんてのは敬語と言わない!」

「めんどくさっ」

「いい加減にしなさい!」

「あーもー、分かりましたよ。すいません」

「こういう場合は〝すみません〟と言うべきだ。〝すいません〟というのは砕けた表現であり――」

「マジめんどいな! やってらんねーよっ!」

 ……思ったとおり。
 やはりエリック先生にそっくりだ。

 可愛らしいのは見た目だけ。
 表現は悪いが、中身は悪ガキそのものだった。

 ノアは授業こそ真面目に受けているものの、その言動はさながら〝不良かぶれ〟だ。悪い意味でエリック先生の影響を受けすぎている。

 さらに言えば、同級生よりも明らかに精神年齢が幼い。

 校内でエリック先生を見かければ「アニキ!」と破顔し駆け寄っていく。クラスメイトと接しているときとは違う、小学生のようなはしゃぎっぷり。見ているこちらが恥ずかしくなる。

 家庭内に関して僕に口出しする権利はないが、校内での接し方は改めた方がいい。そう伝えるべく、ノアと二人で話す時間を設けた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい

翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。 それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん? 「え、俺何か、犬になってない?」 豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。 ※どんどん年齢は上がっていきます。 ※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。

もう人気者とは付き合っていられません

花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。 モテるのは当然だ。でも――。 『たまには二人だけで過ごしたい』 そう願うのは、贅沢なのだろうか。 いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。 「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。 ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。 生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。 ※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

俺の彼氏は俺の親友の事が好きらしい

15
BL
「だから、もういいよ」 俺とお前の約束。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!

棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。

処理中です...