【R18】異世界を救った女勇者への褒美は王子様！？結構ですから日本に帰らせてください。

13ハインリヒ視点

あんなこと言うつもりも、するつもりもなかったのに、モリガン様があちらに帰還してしまうと聞いて焦ってしまった。

アンナと入れ替わるように部屋を出て、ドアを背に一息吐くと、気配を消していたアインハードが姿を現した。


「意外と謙虚ですね」


「……盗み聞きとはいい趣味してるな。
斬られたいか？」


「たまには手合わせ頂くのも良いですね」


怒りを向けてもニコニコ笑って流すこいつは強者だな。


「愛人とは言わず、伴侶の座を狙えば良いのでは？
お二人は絵に描いたようにお似合いだと思いますが」

勇者と騎士団長。
力を持つ者が寄り添い支え合う夫婦は民の憧れになるだろう。

「それは彼女にとって不利益でしかないだろ」

「そうですか？
たしか、殿下とブルゴー伯爵は特殊な婚約をされているとか」

「あぁ、猶予があるんだったな。
けど、伯爵位である彼女が王族からの婚約を断ればどうなるか、考えなくてもわかることだろ」

「私としては、引く手数多のヴァレンロード分家当主が愛人枠で収まる方がどうかと思いますけどね」

俺も婚期を逃し、今や28。
山のように積まれた見合い話を断続け、夜会の招待状も不参加で出し続けている。

「俺には政略結婚なんてできねぇよ」

「それなのに我が主人には求めるので？
団長も鬼ですね」

「仕方ないだろ」

「それはそうですけどね。
団長が愛人だなんて、面白いなと思いますよ。
女性領主が愛人の子を成した時、親権はどうなるのでした？
お相手が殿下となれば、我が子としてお認めになるのも判りかねるところ」

「……くだらん。
無駄話もそこまでにして、仕事に戻るぞ」

「団長が一日サボられたのでは？」

「うるせぇな」


殿下への気持ちに気付かず、そのまま政略結婚の相手とだけ判断してほしい。
そして、恋愛は自分と。

これは醜い嫉妬と独占欲だ。

恋敵はハプスブルクの天使。
覚悟は決まっている。