10 / 15
10.ピンチです
しおりを挟む
王宮での生活はそれなりに忙しい。
私は護衛の兵士と侍女と行動を共にしていた。
マナーやダンスの練習はそれぞれ部屋が違って広い王宮内を移動するのは、大変。
私はその日もはしたなく見えないギリギリの速さで王宮の廊下を歩いていた。
「あっ!ハリス殿下。」
あまり会いたくない人だが、王宮の客人だ。ハリス殿下が近づいて来たので頭を下げた。
すると、ハリス殿下が侍女と護衛に向かって話し掛けてきた。
「私の使っている客室から宝石類が盗まれた。あれは国宝級のお宝だ。早くさがしてくれ!」
「え?宝石ですか?直ぐに人を集めて調べます。」
護衛がハリス殿下に命じられ、私を気にしつつもその場を離れた。
「部屋を掃除する係のヤツが盗んだのかもしれん。直ぐに侍女長に伝えてくれ!」
ハリス殿下は今度は私の後ろに控えていた侍女に対して命令口調で話しかけた。
「で、でも……。」
「急いでくれっ!!両国の関係にヒビが入っても良いのかっ!!」
「は、はいっ!!畏まりました。」
ハリス殿下に怒鳴られた若い侍女は急いでバタバタと廊下を走っていった。
侍女と護衛が居なくなった廊下はがらんとしていて、ハリス殿下と私だけが残っていた。
不味い……
私はハリス殿下から距離を取ろうとしたところで腕を掴まれた。
「な、何をっ!」
ザッザッと背後から音がしたかと思うと布で口と鼻を覆われた。
っ!!
薬品っぽい刺激臭を感じた途端に意識が遠のく。
ヤバい!
そう思ったときには既に意識は混濁し身体に力は入らなくなっていた。
ー・ー・ー・ー・ー
「ん゛?」
次に目を開けると、手足を縛られて狭い所に押し込められていた。
ガタガタとした振動が身体に伝わり、馬車か何かで運ばれているのを感じる。
ゆっ誘拐!!
「う゛う゛う゛……………。」
猿轡をされていて助けを呼べない。
だ、誰がこんなことを?
………。
状況から考えてハリス殿下が拐った??そろそろ、国に帰る予定になっていたはずだ。
私を連れて帰る気??
た、大変……物音を……。
こんなに強硬な手段を選ぶ人を信用なんて出来ない。
どうしよう……怖い……
レオンハルト様……
何とかしようと……必死に身体を動かすけれど、布団の上からロープで縛られているらしく、自分では身動きとれない。
「ミュウ殿、起きたか?すまんな。一緒に我が国へ行こう。」
物音に気がついた殿下が私を上から覗き込む。
どうやら、荷台で運ばれているらしい。
「や、やめ…んぐっ……」
殿下は私の猿轡を外すと何かの錠剤を口の中に押し込んだ。
「毒ではない。安心して欲しい。」
安心できないっ!
そんなの飲みたくないっ!
殿下がグラスを取るため目を離した一瞬の隙をついて、舌の裏に隠していた錠剤を吐き出した。幸い錠剤は口元にあった猿轡の布にへばり着いた。
「水を飲むんだ。」
ごくり。
グラスの水を飲んだ後、ハリス殿下は私の口を開けさせ、口腔内を確認して満足そうに頷く。
「もうすぐ国境だ。検問所を通るから暫く眠っててくれ。」
検問所で騒げば助かるかも……。
私は薬が効いて眠った振りをした。
そして、縛られた手をずりずりと動かして気付かれないようにロープを緩めることに専念した。
私は護衛の兵士と侍女と行動を共にしていた。
マナーやダンスの練習はそれぞれ部屋が違って広い王宮内を移動するのは、大変。
私はその日もはしたなく見えないギリギリの速さで王宮の廊下を歩いていた。
「あっ!ハリス殿下。」
あまり会いたくない人だが、王宮の客人だ。ハリス殿下が近づいて来たので頭を下げた。
すると、ハリス殿下が侍女と護衛に向かって話し掛けてきた。
「私の使っている客室から宝石類が盗まれた。あれは国宝級のお宝だ。早くさがしてくれ!」
「え?宝石ですか?直ぐに人を集めて調べます。」
護衛がハリス殿下に命じられ、私を気にしつつもその場を離れた。
「部屋を掃除する係のヤツが盗んだのかもしれん。直ぐに侍女長に伝えてくれ!」
ハリス殿下は今度は私の後ろに控えていた侍女に対して命令口調で話しかけた。
「で、でも……。」
「急いでくれっ!!両国の関係にヒビが入っても良いのかっ!!」
「は、はいっ!!畏まりました。」
ハリス殿下に怒鳴られた若い侍女は急いでバタバタと廊下を走っていった。
侍女と護衛が居なくなった廊下はがらんとしていて、ハリス殿下と私だけが残っていた。
不味い……
私はハリス殿下から距離を取ろうとしたところで腕を掴まれた。
「な、何をっ!」
ザッザッと背後から音がしたかと思うと布で口と鼻を覆われた。
っ!!
薬品っぽい刺激臭を感じた途端に意識が遠のく。
ヤバい!
そう思ったときには既に意識は混濁し身体に力は入らなくなっていた。
ー・ー・ー・ー・ー
「ん゛?」
次に目を開けると、手足を縛られて狭い所に押し込められていた。
ガタガタとした振動が身体に伝わり、馬車か何かで運ばれているのを感じる。
ゆっ誘拐!!
「う゛う゛う゛……………。」
猿轡をされていて助けを呼べない。
だ、誰がこんなことを?
………。
状況から考えてハリス殿下が拐った??そろそろ、国に帰る予定になっていたはずだ。
私を連れて帰る気??
た、大変……物音を……。
こんなに強硬な手段を選ぶ人を信用なんて出来ない。
どうしよう……怖い……
レオンハルト様……
何とかしようと……必死に身体を動かすけれど、布団の上からロープで縛られているらしく、自分では身動きとれない。
「ミュウ殿、起きたか?すまんな。一緒に我が国へ行こう。」
物音に気がついた殿下が私を上から覗き込む。
どうやら、荷台で運ばれているらしい。
「や、やめ…んぐっ……」
殿下は私の猿轡を外すと何かの錠剤を口の中に押し込んだ。
「毒ではない。安心して欲しい。」
安心できないっ!
そんなの飲みたくないっ!
殿下がグラスを取るため目を離した一瞬の隙をついて、舌の裏に隠していた錠剤を吐き出した。幸い錠剤は口元にあった猿轡の布にへばり着いた。
「水を飲むんだ。」
ごくり。
グラスの水を飲んだ後、ハリス殿下は私の口を開けさせ、口腔内を確認して満足そうに頷く。
「もうすぐ国境だ。検問所を通るから暫く眠っててくれ。」
検問所で騒げば助かるかも……。
私は薬が効いて眠った振りをした。
そして、縛られた手をずりずりと動かして気付かれないようにロープを緩めることに専念した。
30
お気に入りに追加
1,358
あなたにおすすめの小説
不妊を理由に離縁されて、うっかり妊娠して幸せになる話
七辻ゆゆ
恋愛
「妊娠できない」ではなく「妊娠しづらい」と診断されたのですが、王太子である夫にとってその違いは意味がなかったようです。
離縁されてのんびりしたり、お菓子づくりに協力したりしていたのですが、年下の彼とどうしてこんなことに!?
6年後に戦地から帰ってきた夫が連れてきたのは妻という女だった
白雲八鈴
恋愛
私はウォルス侯爵家に15歳の時に嫁ぎ婚姻後、直ぐに夫は魔王討伐隊に出兵しました。6年後、戦地から夫が帰って来ました、妻という女を連れて。
もういいですか。私はただ好きな物を作って生きていいですか。この国になんて出ていってやる。
ただ、皆に喜ばれる物を作って生きたいと願う女性がその才能に目を付けられ周りに翻弄されていく。彼女は自由に物を作れる道を歩むことが出来るのでしょうか。
番外編
謎の少女強襲編
彼女が作り出した物は意外な形で人々を苦しめていた事を知り、彼女は再び帝国の地を踏むこととなる。
私が成した事への清算に行きましょう。
炎国への旅路編
望んでいた炎国への旅行に行く事が出来ない日々を送っていたが、色々な人々の手を借りながら炎国のにたどり着くも、そこにも帝国の影が・・・。
え?なんで私に誰も教えてくれなかったの?そこ大事ー!
*本編は完結済みです。
*誤字脱字は程々にあります。
*なろう様にも投稿させていただいております。
妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。
前世を思い出したので、最愛の夫に会いに行きます!
お好み焼き
恋愛
ずっと辛かった。幼き頃から努力を重ね、ずっとお慕いしていたアーカイム様の婚約者になった後も、アーカイム様はわたくしの従姉妹のマーガレットしか見ていなかったから。だから精霊王様に頼んだ。アーカイム様をお慕いするわたくしを全て消して下さい、と。
……。
…………。
「レオくぅーん!いま会いに行きます!」
幼馴染みとの間に子どもをつくった夫に、離縁を言い渡されました。
ふまさ
恋愛
「シンディーのことは、恋愛対象としては見てないよ。それだけは信じてくれ」
夫のランドルは、そう言って笑った。けれどある日、ランドルの幼馴染みであるシンディーが、ランドルの子を妊娠したと知ってしまうセシリア。それを問うと、ランドルは急に激怒した。そして、離縁を言い渡されると同時に、屋敷を追い出されてしまう。
──数年後。
ランドルの一言にぷつんとキレてしまったセシリアは、殺意を宿した双眸で、ランドルにこう言いはなった。
「あなたの息の根は、わたしが止めます」
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
悪役令嬢が残した破滅の種
八代奏多
恋愛
妹を虐げていると噂されていた公爵令嬢のクラウディア。
そんな彼女が婚約破棄され国外追放になった。
その事実に彼女を疎ましく思っていた周囲の人々は喜んだ。
しかし、その日を境に色々なことが上手く回らなくなる。
断罪した者は次々にこう口にした。
「どうか戻ってきてください」
しかし、クラウディアは既に隣国に心地よい居場所を得ていて、戻る気は全く無かった。
何も知らずに私欲のまま断罪した者達が、破滅へと向かうお話し。
※小説家になろう様でも連載中です。
9/27 HOTランキング1位、日間小説ランキング3位に掲載されました。ありがとうございます。
わたしの旦那様は幼なじみと結婚したいそうです。
和泉 凪紗
恋愛
伯爵夫人のリディアは伯爵家に嫁いできて一年半、子供に恵まれず悩んでいた。ある日、リディアは夫のエリオットに子作りの中断を告げられる。離婚を切り出されたのかとショックを受けるリディアだったが、エリオットは三ヶ月中断するだけで離婚するつもりではないと言う。エリオットの仕事の都合上と悩んでいるリディアの体を休め、英気を養うためらしい。
三ヶ月後、リディアはエリオットとエリオットの幼なじみ夫婦であるヴィレム、エレインと別荘に訪れる。
久しぶりに夫とゆっくり過ごせると楽しみにしていたリディアはエリオットとエリオットの幼なじみ、エレインとの関係を知ってしまう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる