上 下
6 / 15

6.囲い込まれました

しおりを挟む
「父上、失礼します。」
「なんだ?」

宰相様は私とレオンハルト様を交互に見て驚いた様子を見せた。

「父上、異界の渡り人が現れた事はご存知ですよね。」

「ああ、明日陛下との謁見の予定が入っている。」

「この方がそうです。」

「ああ、やはりそうか……。」

宰相様は立ち上がり机を回って私の前に来ると、挨拶をしてくれた。

「ようこそ。キサラギミュウ様。我が国は貴女を歓迎いたします。どうぞごゆっくりお過ごしください。」

レオンハルト様とよく似た顔のパーツだが、丸顔だ。
こちら基準では標準的な顔なのかな?

「は、はい。ありがとうございます。お世話になります。」

レオンハルト様のお父様だ。
印象は良くしておきたいっ!
私は礼儀正しく見えるようにきっちりと頭を下げた。

「それで、私は異界の渡り人であるミュウ様と結婚したいので、この間の縁談は断ってください。」

挨拶が済んだところで、早々にレオンハルト様が本題を切り出した。

「うん?」

「私の顔を見ることも出来ないような令嬢とは結婚出来ませんよ。このミュウ様は私の顔が平気だそうで、結婚の承諾も得ました。」

「そ、そうなのですか?」

宰相様は私の顔を見て確認してくる。
勿論です。
宰相様の息子さん、私のどストライクですっ!

ここはハッキリ自分の意思を伝えなければ!!


「は、はい。私にとってはレオンハルト様のお顔は美男子にしか見えません。そして、この頼りになる強引な性格も好ましく思います。」

私は宰相様の目を真っ直ぐに見て答えた。
異世界へ来て急展開だけど、もう27歳。
女は度胸っ!!

宰相様は私の真意を探るようにじっと私の目を見返していたが、やがてレオンハルト様に似たふわりとした笑顔を浮かべて私たちを応援してくれた。

「分かった。コーチス伯爵令嬢の縁談は断っておこう。けれど、渡り人との婚姻は陛下の許可が必要だ。きちんと説明に伺うように。」

「分かりました。ありがとうございます。」

「ありがとうございます。お義父様。」

私が勢いよくお礼を言ってニカッと笑うと宰相様は少し頬を染めた。

この外見本当に美女らしい……。
宰相様にも笑顔攻撃が効いた!
何だか府に落ちないけど………。


ー・ー・ー・ー・ー


彼のお父様との面会を終えて部屋に戻る途中、廊下を歩きながら縁談についての話を聞いていた。

「私が縁談を壊しちゃったんですか?」

「いえ。気になさることではありません。元々受ける気が無かった縁談なので。」

「そうなんですか?」

「ええ、顔合わせの時、相手の令嬢が私の顔も見れない状態で……。そんな相手とは結婚出来ませんよね。けれど、家はそこそこの名門貴族ですから、支援を目的に縁談は来るんですよ。」

レオンハルト様の顔を見れない??
それって眩しすぎて直視出来なかったんじゃ??
私はもうそこそこの年齢だから、がっつり見るけどさ………。

そんな話をしていると前方からゴルゾン殿下ほどでは無いがポテッとした体格に糸目の男性が近づいてきた。

レオンハルト様からチッと舌打ちが聞こえた。

「サンダルース卿ではないか?」

「ハリス殿下。」

「こちらの美しい女性は?」

「異界の渡り人です。」

「おお!渡り人とはっ!」

ハリス殿下のねっとりとした絡み付くような視線が居心地悪くてレオンハルト様の背中に隠れた。

「サンダルース卿、私をこの美しい女性に紹介してくれないか?」

そう言われ、レオンハルト様はしぶしぶ私にハリス殿下を紹介してくれた。

「ミュウ様、この方は隣国スケイダ王国第2王子のハリス殿下です。我が国で遊学のため滞在中です。」

「ミュウ嬢、良かったら一緒にお茶でも飲みながら異界の話を聞かせてくれないか?」

この視線の意味が分かる。
下心満載だっ!!
断りたいけど、隣国の王子なら不敬?

「えっと、レオンハルト様も一緒なら……。」

「え?」

「駄目ですか?」

「君はこの醜男と一緒にお茶を飲む方が良いのかい?」

レオンハルト様を醜男って言ったなっ!!
貴方こそねっ。
ムカムカするけど、表情には出さないように頬をピクピクさせながら笑顔を作る。

「私にとって、レオンハルト様は醜男ではありませんから。急に此方の世界に来てしまって不安なので…。レオンハルト様が一緒に居ないと不安なのです。」

「そうか……。では彼も一緒でも構わないよ。近々連絡しよう。」

「……はい。」

ハリス殿下が見えなくなったのを確認してから声をひそめてレオンハルト様に確認した。

「あれで不敬にはならないですか?」

「はい。ありがとうございます。」

「あー、良かった。私のせいで外交問題になったら大変だと思って。」

「ミュウ様は客人なので、そのような事を気にする必要はありませんが……。」

レオンハルト様は警戒した表情をハリス殿下の背中に向けていた。

真剣な表情も素敵!!!

    
しおりを挟む
感想 55

あなたにおすすめの小説

転生したら美醜逆転世界だったので、人生イージーモードです

狼蝶
恋愛
 転生したらそこは、美醜が逆転していて顔が良ければ待遇最高の世界だった!?侯爵令嬢と婚約し人生イージーモードじゃんと思っていたら、人生はそれほど甘くはない・・・・?  学校に入ったら、ここはまさかの美醜逆転世界の乙女ゲームの中だということがわかり、さらに自分の婚約者はなんとそのゲームの悪役令嬢で!!!?

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

天使は女神を恋願う

紅子
恋愛
美醜が逆転した世界に召喚された私は、この不憫な傾国級の美青年を幸せにしてみせる!この世界でどれだけ醜いと言われていても、私にとっては麗しき天使様。手放してなるものか! 女神様の導きにより、心に深い傷を持つ男女が出会い、イチャイチャしながらお互いに心を暖めていく、という、どう頑張っても砂糖が量産されるお話し。 R15は、念のため。設定ゆるゆる、ご都合主義の自己満足な世界のため、合わない方は、読むのをお止めくださいm(__)m 20話完結済み 毎日00:00に更新予定

美醜逆転異世界で、非モテなのに前向きな騎士様が素敵です

花野はる
恋愛
先祖返りで醜い容貌に生まれてしまったセドリック・ローランド、18歳は非モテの騎士副団長。 けれども曽祖父が同じ醜さでありながら、愛する人と幸せな一生を送ったと祖父から聞いて育ったセドリックは、顔を隠すことなく前向きに希望を持って生きている。けれどやはりこの世界の女性からは忌み嫌われ、中身を見ようとしてくれる人はいない。 そんな中、セドリックの元に異世界の稀人がやって来た!外見はこんなでも、中身で勝負し、専属護衛になりたいと頑張るセドリックだが……。 醜いイケメン騎士とぽっちゃり喪女のラブストーリーです。 多分短い話になると思われます。 サクサク読めるように、一話ずつを短めにしてみました。

穏やかな日々の中で。

らむ音
恋愛
異世界転移した先で愛を見つけていく話。

婚約者は醜女だと噂で聞いたことのある令嬢でしたが、俺にとっては絶世の美女でした

朝比奈
恋愛
美醜逆転ものの短編です。 男主人公にチャレンジしてみたくで以前書いたものですが、楽しんでいただければ幸いです。

美醜逆転の世界に間違って召喚されてしまいました!

エトカ
恋愛
続きを書くことを断念した供養ネタ作品です。 間違えて召喚されてしまった倉見舞は、美醜逆転の世界で最強の醜男(イケメン)を救うことができるのか……。よろしくお願いします。

私は女神じゃありません!!〜この世界の美的感覚はおかしい〜

朝比奈
恋愛
年齢=彼氏いない歴な平凡かつ地味顔な私はある日突然美的感覚がおかしい異世界にトリップしてしまったようでして・・・。 (この世界で私はめっちゃ美人ってどゆこと??) これは主人公が美的感覚が違う世界で醜い男(私にとってイケメン)に恋に落ちる物語。 所々、意味が違うのに使っちゃってる言葉とかあれば教えて下さると幸いです。 暇つぶしにでも呼んでくれると嬉しいです。 ※休載中 (4月5日前後から投稿再開予定です)

処理中です...