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3章

5.

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今日もシオン様とランチをしている。
最近はシオン様の好みも把握し、レパートリーの数も増えた。好きなメニューはシオン様からリクエストされることもある。
「今日も美味しいよ。レティ。いつもありがとう。」
「私こそ、シオン様が美味しいって誉めてくださるので、作るのが楽しいです。」
シオン様は時間を掛けてじっくりと味わってくれる。
ランチが食べ終わり、紅茶を飲みながら、シオン様が切り出す。
「アイリーン嬢のことなんだけど。」
「は、はい。」
最近はアイリーン様に会うこともなく、平和な学園生活を送っていた。だから、すっかり忘れていたのだ。
「アイザックとヘンリックにそれとなく近づいてもらっていたんだー。彼女の目的を知ろうと思ってね。」
シオン様の明るい口調とは裏腹に、その眼は真剣そのものだ。

「結論を言うと、彼女にレティを害する意思はないと思う。少なくとも今は。」
シオン様は溜め息を吐くように続ける。
「以前の行動はちょっと理解しがたいものが多くて、僕心配だったんだー。でも、最近は純粋にアーク殿下を慕っているようなんだよ。」
そっか。アーク殿下狙いなら、お友達になれるかしら?
是非とも話をしてみたい。
「レティ。お話してみたいよね?」
シオン様は私の表情を見て、色々と察してくれる。
でも、私たちは悪役だ。
シナリオからは遠ざかりたい。
「もちろん興味はありますが、少しでもシオン様の危険に繋がることは避けたいのです。卒業まで待ちます。」
「ん。分かった。レティ、ありがとう。」
シオン様が額にキスを落とした後、抱き寄せてくれる。
あー、好きだなーなんてのんびり思う。


暫くすると、私たちの話題は学生らしく、勉強の話へと移っていった。

「ところでレティの研究は進んでる?」
「今考えているのは、魔獣の毒は毒液を吹き付けられるか毒ガスが多いので、毒液に対しては薄いベールのようなもので皮膚全体を覆う事は出来ないかな?と。毒ガスに対しては鼻や口を薄い布で覆うようなものを考えていますが、呼吸が苦しくならないかが検討課題です。」
毒の種類は多くて、解毒は今は諦めた。その代わり体内に入らないような工夫を考えている。
「確かに体内に入る過程に防御を施した方が付加する魔法は少なくて済むね。場所によってどういう魔獣の毒が多いか調査してみるよー。」
イメージは前世の防護衣とガスマスクの形状だ。
ただし、戦闘向きではない。動きやすいようにアイザック様にもアドバイスをもらえると心強い。
その事をシオン様に相談すると
「えー嫌だなー。」即答だ。
仕方がない。自分で考えようと思っていると
「僕が相談に乗るよー。」
「シオン様も剣を持って戦うのですか?」
「一応訓練はしてきたよ。臣籍降下した後、僕が領地として治める土地は魔の森に近くて、更に今回の騒動で王家管理になっているゴメット侯爵の土地も僕が治めることになるよー。なかなかハードな土地なんだー。」
のんびり話しているけどとても大変そうだ。

この可愛いシオン様が剣を振るうなんて想像出来ない。
魔力が多くて剣を使う機会が無かったんだって。訓練見たいなー。
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