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フェルナンド殿下の来訪二回目
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私達がリテック王国に来て一週間になる。セインは相変わらず、商談や、組合の会合で忙しく日々を過ごしていた。
私は殆どの時間をセインと一緒に行動した。
ユウは元来自由人らしく、セインが同行を求めなければ、自分の好きなように行動しているようだった。
「異世界でユウは女性だったからな。男としての生活が窮屈なんだろう。」
セインはそう言って、ユウを好きにさせていた。
シイネは町で腕の良いマッサージに通い、かなり楽に動けるようになっていた。
「疲れたな。甘い物でも食べるか?」
商談の後、セインに誘われ小洒落たカフェに入った。
「うん。香ばしくって甘すぎなくて美味しい!!」
「ああ、いい味だ。」
私は見慣れない赤いフルーツを乗せたタルトを食べている。もう二つ目で、一つ目は黄色いゼリーを食べた。
働いた後の甘い物はこれ以上ないご褒美だ!!
甘い味が与えてくれる、幸福感に浸っていると、背後から声を掛けられた。
「リリアベール。」
振り向くと見覚えのある外套を羽織った殿下が。
少し離れた場所に顔見知りの護衛も確認できる。
「フェルナンド殿下。」
「一緒にいいかい?」
私の承諾を得る前に、隣の座席に腰を下ろした。
フェルナンド殿下が近い距離で座ったのが嫌で慌てて立ち上がりセインの隣の席に移動した。
フェルナンド殿下は一瞬不満そうな表情を見せるが、直ぐに余裕のある笑みを浮かべる。
「リリアベール、リタ王国に帰っておいで。心配事は解決したよ。母上にはリリアベールが誤解していることを話しておいた。直接話せば蟠りも解けるだろう。」
何を言っているのだろう?直接話せば盛大な嫌みを言われるに決まっている。
「嫌です。」
「どうしてそんなに頑なになるの?母上が気を遣ってくれているのにっ!」
「私は帰りません。」
「父上もリリアベールに帰って来て貰う事を望んでいる。ロリィのせいで、母上は今離宮で療養しているんだよ。」
ロリィのせいって、……何かあったのだろうか?
「どうしてですの?」
「ロリィが…、母上に虐められたって新聞に話したんだ。母上は今国民の批判を受けて大変なんだ。」
「そうですか。」
ロリィは今までも私に虐められたと嘘を吐いていたのだ。
あんなお妃教育を受けたのなら当然だろう。
「もしかして、まだ正妃に拘ってるの?」
「正妃だろうと側室だろうと関係ありません。戻るのは嫌です。絶対イヤ!!」
殿下は私の強い口調に一瞬怯むが、直ぐに何かに思い当たったようだ。
「ああっ!!そうか!君はロリィと仲が悪かったから一緒の宮に住むのが嫌なんだな。分かったよ。解決してみせる!!」
「嫌ですってば!!」
「兎に角、父上の命令なんだ。リリアベール帰るよっ!!」
フェルナンド殿下が立ち上がり私の腕を引こうとする。
そこで、黙って聞いていたセインが止めに入ってくれた。
「もう、リリアはリタ王国民ではない。」
「え?」
「命令を聞く義務は無い筈だ。」
フェルナンド殿下が怨めしそうに私を見る。
「リリアベール、今まで私に尽くしてくれただろう?どうしたのさ?この男の悪い影響受けたの?」
「違います。セインは私を助けてくれたんです!」
殿下は仕方がないとでも言うように溜め息を吐いた。
「はー、分かったよ。兎に角、住む場所の問題を解決してから迎えに来よう。」
フェルナンド殿下は護衛を引き連れ颯爽と去っていった。
私とセインは呆気にとられていた。
「ねぇ、私ハッキリ断っていたわよね?」
「そうだな。『嫌です』って繰り返してたな。」
「迎えに来るって言ってなかった?」
「言ってたな。また来そうだな。」
二人で同時に溜め息を吐いた。
★☆★☆★
王妃視点
「あー、腹立たしい。平民風情のせいでわたくしがこんな目に合うなんて。リリアベールの方が余程ましね。」
「そうですよ。王宮の中の事を漏洩するなんて……。」
何とかロリィを排除しないと………そうだわ!その手があった。
「ニナ、ロリィに止めさせられた下働きの者が居たわよね?」
「ええ。給仕の者もいますし、侍女もいます。」
「ロリィの横暴なエピソードが話せる者を集めて。」
「え?」
「大衆紙にロリィの横暴な振る舞いを暴露させて。」
「ああ、そういうことですか。かしまりました。」
「あと、彼女王宮に働く男性に色目を使ってないかしら?そういう情報も洩れてくれると助かるわね。」
「あーー、そうですね。そのような素振りを見掛けましたわ。手配致します。」
「お願いね。」
私は殆どの時間をセインと一緒に行動した。
ユウは元来自由人らしく、セインが同行を求めなければ、自分の好きなように行動しているようだった。
「異世界でユウは女性だったからな。男としての生活が窮屈なんだろう。」
セインはそう言って、ユウを好きにさせていた。
シイネは町で腕の良いマッサージに通い、かなり楽に動けるようになっていた。
「疲れたな。甘い物でも食べるか?」
商談の後、セインに誘われ小洒落たカフェに入った。
「うん。香ばしくって甘すぎなくて美味しい!!」
「ああ、いい味だ。」
私は見慣れない赤いフルーツを乗せたタルトを食べている。もう二つ目で、一つ目は黄色いゼリーを食べた。
働いた後の甘い物はこれ以上ないご褒美だ!!
甘い味が与えてくれる、幸福感に浸っていると、背後から声を掛けられた。
「リリアベール。」
振り向くと見覚えのある外套を羽織った殿下が。
少し離れた場所に顔見知りの護衛も確認できる。
「フェルナンド殿下。」
「一緒にいいかい?」
私の承諾を得る前に、隣の座席に腰を下ろした。
フェルナンド殿下が近い距離で座ったのが嫌で慌てて立ち上がりセインの隣の席に移動した。
フェルナンド殿下は一瞬不満そうな表情を見せるが、直ぐに余裕のある笑みを浮かべる。
「リリアベール、リタ王国に帰っておいで。心配事は解決したよ。母上にはリリアベールが誤解していることを話しておいた。直接話せば蟠りも解けるだろう。」
何を言っているのだろう?直接話せば盛大な嫌みを言われるに決まっている。
「嫌です。」
「どうしてそんなに頑なになるの?母上が気を遣ってくれているのにっ!」
「私は帰りません。」
「父上もリリアベールに帰って来て貰う事を望んでいる。ロリィのせいで、母上は今離宮で療養しているんだよ。」
ロリィのせいって、……何かあったのだろうか?
「どうしてですの?」
「ロリィが…、母上に虐められたって新聞に話したんだ。母上は今国民の批判を受けて大変なんだ。」
「そうですか。」
ロリィは今までも私に虐められたと嘘を吐いていたのだ。
あんなお妃教育を受けたのなら当然だろう。
「もしかして、まだ正妃に拘ってるの?」
「正妃だろうと側室だろうと関係ありません。戻るのは嫌です。絶対イヤ!!」
殿下は私の強い口調に一瞬怯むが、直ぐに何かに思い当たったようだ。
「ああっ!!そうか!君はロリィと仲が悪かったから一緒の宮に住むのが嫌なんだな。分かったよ。解決してみせる!!」
「嫌ですってば!!」
「兎に角、父上の命令なんだ。リリアベール帰るよっ!!」
フェルナンド殿下が立ち上がり私の腕を引こうとする。
そこで、黙って聞いていたセインが止めに入ってくれた。
「もう、リリアはリタ王国民ではない。」
「え?」
「命令を聞く義務は無い筈だ。」
フェルナンド殿下が怨めしそうに私を見る。
「リリアベール、今まで私に尽くしてくれただろう?どうしたのさ?この男の悪い影響受けたの?」
「違います。セインは私を助けてくれたんです!」
殿下は仕方がないとでも言うように溜め息を吐いた。
「はー、分かったよ。兎に角、住む場所の問題を解決してから迎えに来よう。」
フェルナンド殿下は護衛を引き連れ颯爽と去っていった。
私とセインは呆気にとられていた。
「ねぇ、私ハッキリ断っていたわよね?」
「そうだな。『嫌です』って繰り返してたな。」
「迎えに来るって言ってなかった?」
「言ってたな。また来そうだな。」
二人で同時に溜め息を吐いた。
★☆★☆★
王妃視点
「あー、腹立たしい。平民風情のせいでわたくしがこんな目に合うなんて。リリアベールの方が余程ましね。」
「そうですよ。王宮の中の事を漏洩するなんて……。」
何とかロリィを排除しないと………そうだわ!その手があった。
「ニナ、ロリィに止めさせられた下働きの者が居たわよね?」
「ええ。給仕の者もいますし、侍女もいます。」
「ロリィの横暴なエピソードが話せる者を集めて。」
「え?」
「大衆紙にロリィの横暴な振る舞いを暴露させて。」
「ああ、そういうことですか。かしまりました。」
「あと、彼女王宮に働く男性に色目を使ってないかしら?そういう情報も洩れてくれると助かるわね。」
「あーー、そうですね。そのような素振りを見掛けましたわ。手配致します。」
「お願いね。」
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