11 / 11
邪族の村―タダシ人間らしさを説く
第十一話
しおりを挟む
涙が渇れ果てるまで、泣くように僕は彼らの話を聞いた。わからなくてもよかった。ただ、話そうとしてくれるのがうれしい。字を教えるのもいいかも、なんて思うけどこの世界の文字は使わせたくない。邪族が使っている文字だから。彼女たちも使いたくないだろう。
日本語を教えてみよう。でも、一朝一夕にはいかない。時間をかけて、ゆっくりなれてもらおう。先ずはひらがなからだ。こちらの言葉もなるべく教えてやれば良い。馴染んだものを使うか、新しく覚えるか。
俺の言葉は、いつも転移ものとかで謎の翻訳になるみたいなのと同じらしい。さすが、ミミズ神の肉の脳だ。ミミズ神あまり知らないけどな。
「あ、ぅい、え、ぉ」
とりあえずあいうえお、からだ。舌足らずだが、言えているな。頭を撫で褒めてやると、涙を滲ませた。きっと両親か誰かを思い出しているんだろうな。
「タダシあんたは、なぜそんな言葉を使えるの?」
ようやく、聞き出せた彼女の名前を知る。チチル。彼女の名だ。邪族の言葉で「家畜の花」彼女は、人間の子どもたちにとっては花であったことから名付けられた。邪族によって。彼女は別の村から来たらしい。ここよりずっと待遇がいい村から。
「僕に答えは言えない」
彼女は、その名に誇りがある。だけど僕は気に食わない。家畜の花なんて、認めない。あえて日本語を使い「人間の村にしよう」なんて言ったのは彼女たちに人間という言葉は家畜と変換されて受け止められるからだ。染み付いてしまったら、そう受け止めてしまう。なんとなく僕は直感で思った。
「自分たちの不幸に酔うな、嘆くな道は続いているから」
理解できなくていい。ただ気持ちを伝える。オーバーなアクションでかまわない。伝わるなら大袈裟になればいい。
ふんぞり返り、威張るように優しく厳しい言葉を伝える。それだけだ。僕は彼女たちを捲き込む。確かな邪神を殺すための宣言をするように。高々に口上するように。
「君たちは最初の解放者だ。人間らしく生きる。家畜ではなくな。あえて言おう、人間らしくのんびりだ。働くのは大切だ、生きるためにはだから戦うんだ運命と」
僕のいいかげんな口上に彼女たちは何を感じるか。わからないけど、僕は進もう。せっかく異世界に来たんだから。胸くそ悪くても世界の人間に幸を届ける。正しいと信じる僕の言葉に身を委ねる彼女たちに……少しでも。生きて欲しい人間らしく。
日本語を教えてみよう。でも、一朝一夕にはいかない。時間をかけて、ゆっくりなれてもらおう。先ずはひらがなからだ。こちらの言葉もなるべく教えてやれば良い。馴染んだものを使うか、新しく覚えるか。
俺の言葉は、いつも転移ものとかで謎の翻訳になるみたいなのと同じらしい。さすが、ミミズ神の肉の脳だ。ミミズ神あまり知らないけどな。
「あ、ぅい、え、ぉ」
とりあえずあいうえお、からだ。舌足らずだが、言えているな。頭を撫で褒めてやると、涙を滲ませた。きっと両親か誰かを思い出しているんだろうな。
「タダシあんたは、なぜそんな言葉を使えるの?」
ようやく、聞き出せた彼女の名前を知る。チチル。彼女の名だ。邪族の言葉で「家畜の花」彼女は、人間の子どもたちにとっては花であったことから名付けられた。邪族によって。彼女は別の村から来たらしい。ここよりずっと待遇がいい村から。
「僕に答えは言えない」
彼女は、その名に誇りがある。だけど僕は気に食わない。家畜の花なんて、認めない。あえて日本語を使い「人間の村にしよう」なんて言ったのは彼女たちに人間という言葉は家畜と変換されて受け止められるからだ。染み付いてしまったら、そう受け止めてしまう。なんとなく僕は直感で思った。
「自分たちの不幸に酔うな、嘆くな道は続いているから」
理解できなくていい。ただ気持ちを伝える。オーバーなアクションでかまわない。伝わるなら大袈裟になればいい。
ふんぞり返り、威張るように優しく厳しい言葉を伝える。それだけだ。僕は彼女たちを捲き込む。確かな邪神を殺すための宣言をするように。高々に口上するように。
「君たちは最初の解放者だ。人間らしく生きる。家畜ではなくな。あえて言おう、人間らしくのんびりだ。働くのは大切だ、生きるためにはだから戦うんだ運命と」
僕のいいかげんな口上に彼女たちは何を感じるか。わからないけど、僕は進もう。せっかく異世界に来たんだから。胸くそ悪くても世界の人間に幸を届ける。正しいと信じる僕の言葉に身を委ねる彼女たちに……少しでも。生きて欲しい人間らしく。
0
お気に入りに追加
11
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
食うために軍人になりました。
KBT
ファンタジー
ヴァランタイン帝国の片田舎ダウスター領に最下階位の平民の次男として生まれたリクト。
しかし、両親は悩んだ。次男であるリクトには成人しても継ぐ土地がない。
このままではこの子の未来は暗いものになってしまうだろう。
そう思った両親は幼少の頃よりリクトにを鍛え上げる事にした。
父は家の蔵にあったボロボロの指南書を元に剣術を、母は露店に売っていた怪しげな魔導書を元に魔法を教えた。
それから10年の時が経ち、リクトは成人となる15歳を迎えた。
両親の危惧した通り、継ぐ土地のないリクトは食い扶持を稼ぐために、地元の領軍に入隊試験を受けると、両親譲りの剣術と魔法のおかげで最下階級の二等兵として無事に入隊する事ができた。
軍と言っても、のどかな田舎の軍。
リクトは退役するまで地元でのんびり過ごそうと考えていたが、入隊2日目の朝に隣領との戦争が勃発してしまう。
おまけに上官から剣の腕を妬まれて、単独任務を任されてしまった。
その任務の最中、リクトは平民に対する貴族の専横を目の当たりにする。
生まれながらの体制に甘える貴族社会に嫌気が差したリクトは軍人として出世して貴族の専横に対抗する力を得ようと立身出世の道を歩むのだった。
剣と魔法のファンタジー世界で軍人という異色作品をお楽しみください。
旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします
暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。
いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。
子を身ごもってからでは遅いのです。
あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」
伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。
女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。
妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。
だから恥じた。
「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。
本当に恥ずかしい…
私は潔く身を引くことにしますわ………」
そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。
「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。
私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。
手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。
そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」
こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。
---------------------------------------------
※架空のお話です。
※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。
※現実世界とは異なりますのでご理解ください。
黒き叛竜の輪廻戦乱《リベンジマッチ》
Siranui
ファンタジー
そこは現代であり、剣や魔法が存在する――歪みきった世界。
遥か昔、恋人のエレイナ諸共神々が住む天界を焼き尽くし、厄災竜と呼ばれたヤマタノオロチは死後天罰として記憶を持ったまま現代の人間に転生した。そこで英雄と称えられるものの、ある日突如現れた少女二人によってその命の灯火を消された。
二度の死と英雄としての屈辱を味わい、宿命に弄ばれている事の絶望を悟ったオロチは、死後の世界で謎の少女アカネとの出会いをきっかけに再び人間として生まれ変わる事を決意する。
しかしそこは本来存在しないはずの未来……英雄と呼ばれた時代に誰もオロチに殺されていない世界線、即ち『歪みきった世界』であった。
そんな嘘偽りの世界で、オロチは今度こそエレイナを……大切な存在が生き続ける未来を取り戻すため、『死の宿命』との戦いに足を踏み入れる。
全ては過去の現実を変えるために――
異世界でのんびり暮らしたい!?
日向墨虎
ファンタジー
前世は孫もいるおばちゃんが剣と魔法の異世界に転生した。しかも男の子。侯爵家の三男として成長していく。家族や周りの人たちが大好きでとても大切に思っている。家族も彼を溺愛している。なんにでも興味を持ち、改造したり創造したり、貴族社会の陰謀や事件に巻き込まれたりとやたらと忙しい。学校で仲間ができたり、冒険したりと本人はゆっくり暮らしたいのに・・・無理なのかなぁ?
オタクおばさん転生する
ゆるりこ
ファンタジー
マンガとゲームと小説を、ゆるーく愛するおばさんがいぬの散歩中に異世界召喚に巻き込まれて転生した。
天使(見習い)さんにいろいろいただいて犬と共に森の中でのんびり暮そうと思っていたけど、いただいたものが思ったより強大な力だったためいろいろ予定が狂ってしまい、勇者さん達を回収しつつ奔走するお話になりそうです。
投稿ものんびりです。(なろうでも投稿しています)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!
七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」
その天使の言葉は善意からなのか?
異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか?
そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。
ただし、その扱いが難しいものだった。
転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。
基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。
○○○「これは私とのラブストーリーなの!」
主人公「いや、それは違うな」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
のんびりな進行なので、まだいろいろなのがでるかもです(。^。^。)展開は読めないです。僕も。感想ありがとうございます。
森って好きなんですよ。この後の展開楽しみにしています。
どう森の中を進むのか僕の中の癒しを求めて、いや主人公の癒しを求めて進む先に何があるか、どんどんのんびりがひどい方向に行かないよう祈りたいです(白目)