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邪族の村―タダシ人間らしさを説く

第十一話

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 涙が渇れ果てるまで、泣くように僕は彼らの話を聞いた。わからなくてもよかった。ただ、話そうとしてくれるのがうれしい。字を教えるのもいいかも、なんて思うけどこの世界の文字は使わせたくない。邪族が使っている文字だから。彼女たちも使いたくないだろう。

 日本語を教えてみよう。でも、一朝一夕にはいかない。時間をかけて、ゆっくりなれてもらおう。先ずはひらがなからだ。こちらの言葉もなるべく教えてやれば良い。馴染んだものを使うか、新しく覚えるか。

 俺の言葉は、いつも転移ものとかで謎の翻訳になるみたいなのと同じらしい。さすが、ミミズ神の肉の脳だ。ミミズ神あまり知らないけどな。

「あ、ぅい、え、ぉ」

 とりあえずあいうえお、からだ。舌足らずだが、言えているな。頭を撫で褒めてやると、涙を滲ませた。きっと両親か誰かを思い出しているんだろうな。

「タダシあんたは、なぜそんな言葉を使えるの?」

 ようやく、聞き出せた彼女の名前を知る。チチル。彼女の名だ。邪族の言葉で「家畜の花」彼女は、人間の子どもたちにとっては花であったことから名付けられた。邪族によって。彼女は別の村から来たらしい。ここよりずっと待遇がいい村から。

「僕に答えは言えない」

 彼女は、その名に誇りがある。だけど僕は気に食わない。家畜の花なんて、認めない。あえて日本語を使い「人間の村にしよう」なんて言ったのは彼女たちに人間という言葉は家畜と変換されて受け止められるからだ。染み付いてしまったら、そう受け止めてしまう。なんとなく僕は直感で思った。

「自分たちの不幸に酔うな、嘆くな道は続いているから」

 理解できなくていい。ただ気持ちを伝える。オーバーなアクションでかまわない。伝わるなら大袈裟になればいい。

 ふんぞり返り、威張るように優しく厳しい言葉を伝える。それだけだ。僕は彼女たちを捲き込む。確かな邪神を殺すための宣言をするように。高々に口上するように。

「君たちは最初の解放者だ。人間らしく生きる。家畜ではなくな。あえて言おう、人間らしくのんびりだ。働くのは大切だ、生きるためにはだから戦うんだ運命と」

 僕のいいかげんな口上に彼女たちは何を感じるか。わからないけど、僕は進もう。せっかく異世界に来たんだから。胸くそ悪くても世界の人間に幸を届ける。正しいと信じる僕の言葉に身を委ねる彼女たちに……少しでも。生きて欲しい人間らしく。
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みんなの感想(2件)

関谷俊博
2016.08.16 関谷俊博
ネタバレ含む
山波斬破
2016.08.17 山波斬破

のんびりな進行なので、まだいろいろなのがでるかもです(。^。^。)展開は読めないです。僕も。感想ありがとうございます。

解除
関谷俊博
2016.08.15 関谷俊博

森って好きなんですよ。この後の展開楽しみにしています。

山波斬破
2016.08.15 山波斬破

どう森の中を進むのか僕の中の癒しを求めて、いや主人公の癒しを求めて進む先に何があるか、どんどんのんびりがひどい方向に行かないよう祈りたいです(白目)

解除

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