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黒魂―時追正、神魂への路

第六話

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 熊さんが走り去っていってから、僕はまた冒険へ。でも少しお腹が空いたから、猿がおの神様の真似をしてみることにした。地脈だか竜脈だか神脈かは、呼び方なんてわからないけれど美味しいかを試してみたいよね。

「んー? こんな感じかな?」

 ドラゴンさんに力の循環の仕方を教えてもらったから、なんとなーくで、やってみる。

「おー! なんだか力がお腹の辺りにー」

 丹田というのかな? そこ辺りに力がぐるぐる廻る。おー! これお腹に溜まるね。腹持ちが良さそうだよ。今度からお腹が空いたら、これにしよう。でも、赤い実をまた食べたいな。最初に食べたやつだもんね。味をしめる? なんか使い方違うかな? でもそれみたいなものだよね。

 ボスっと土からミミズを大きくしたような神様が出現。

「ほぇ?」

 ミミズ神は、僕に向けて大きな口をあけて怒りにぷるぷる震えているようだ。湯気が頭? から出ているから。

「こりゃー! 荒らすでないわ! 俺が上手く流れを作り出し、植物に栄養を与えとるというのに!」

「そうなんですかー、すみません」

「まったく、黙って野菜でも食べておればいいものを。仕方ないやり方を教えてやる。ん? お前、脳が足りんと思ったら本当に脳がないぞ。誰だこんな中途半端に、まったく、わしの肉で作ってやろう」

 あるぇ? 頭の回転が少しよくなったような? でもミミズの肉で出来た脳か……なんか嫌です。

「俺のありがたい肉を嫌だと? なかなか骨があるやつだ」

 怒るところじゃないの? ミミズ神は心が広いのかな。やさしいのかもしれない。

「ま、これで煩わしいお前もここまでだ。あんまり神の力を与えてもな……」

 そうだよね。神様だもんね? ありがたみを忘れていたよ。ありがたや、ありがたや。

「最高神様が、時期にお前をしょ――」

――――――――――――――――――――

 白い神殿に佇む、真っ白い最高神は頭を抱えていた。神域にあの魂を送り出したことを、女神たちに叱られて事態の深刻さを知る。少なからず神域に影響が出ただろうからだ。

 彼と関わり、変わってしまった神もいるかもしれない。ふむ、待てよ。と、最高神は考える。彼が行く世界を最邪神が支配する世界の範囲内にすれば、彼も神たちの影響を受けたはずだから英雄資質を持つはずだ。

「最高神様、アルティマここに馳せ参じましたぞ? 人の魂を神域に入れてしまうとは……また、世界に影響がでますぞ? しかも、神魂になりそうですからな」

 なんと、なんて頭を抱える最高神は名案を思いつく。力を限定封印して、邪神から世界を救ったらまた望みを叶えてやろうと。早速、彼を呼び出した。善は急げである。

「しょ……? 何だって?」

 そこにはいろいろな神力が渦巻く神魂を持った白髪赤眼の少年がいた。耳に手を添えて何かを聞く姿勢で固まっていた。

「あ、最高神様? と、誰?」

「アルティマだよ私だ」

「え。普通に神様の姿してるよ? 熊さんがなんでお爺さんに?」

「神域に居る時は動物になるんだよ。最高神様の前だぞ。控えよ」

「はぁ、わかりました?」

 どうやら、アルティマも神力を与えた様子だ。頭が痛いと、最高神はさらに女神たちに叱られてしまう! と、心で嘆いた。

「ふむ、お前には邪神が支配する地へ行ってもらう。名を与えようタダシである」

 ポゥッと少年が光に包まれた。

「し、しまった!」

 最高神が直接名付けた事で神力が降り注いでしまった。

「あー、神封印! もうこれでよいわ! さあ行け! タダシよ!」

「は? ちょま……!」

 少年が消えた世界に、幸あれ。最高神は丸投げした。

「めんどくさいんじゃもん……」

 タダシは説明少なく、旅立った。そういう魂もたまには現れてしまうのである。最高神様はボケるから……。
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