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フォナの儀
不安
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朝日がカーテンのすき間から射し込む。目がシパシパする。あまり寝ていないからだろうか。
「ついに、フォナの儀か……」
僕にはフォナは感じられない。だけど、結果がわかっていてもフォナの儀からは逃れられない。
「サイファー様。お召し物をこちらに用意しております。いかがですかな?」
ティストが衣装を執事見習いと一緒に広げて見せてくれた。黒い戦闘服だ。青白いラインが走るそれは、ナイト家には特別な意味を持つものだ。次期当主の証である。護衛騎士を名乗ることは王家の次に位の高い位置付けになる。
「着せてくれ」
「かしこまりました」
流れるような所作で僕に戦闘服を着せていく。さすが産まれた時から一緒にいるティストだ。
戦闘服に身を包み、姿見の鏡に映る僕の表情は不安に揺れているように見える。気分の問題だろうか。どこか、顔色が悪いような。
「寝不足ですかな? 顔色が悪いですよサイファー様」
ティストにもわかるくらいに、顔に出ているのが証明されてしまった。僕の気のせいじゃないんだ。
「大丈夫だよ。フォナの儀は……成功させるから」
成功させる、よく言えたものだな。僕はそんな言葉に根拠なんか持てないのに。
父がいる書斎へ向かわないといけない。顔を合わせるのが少し怖い。
「ついに、フォナの儀か……」
僕にはフォナは感じられない。だけど、結果がわかっていてもフォナの儀からは逃れられない。
「サイファー様。お召し物をこちらに用意しております。いかがですかな?」
ティストが衣装を執事見習いと一緒に広げて見せてくれた。黒い戦闘服だ。青白いラインが走るそれは、ナイト家には特別な意味を持つものだ。次期当主の証である。護衛騎士を名乗ることは王家の次に位の高い位置付けになる。
「着せてくれ」
「かしこまりました」
流れるような所作で僕に戦闘服を着せていく。さすが産まれた時から一緒にいるティストだ。
戦闘服に身を包み、姿見の鏡に映る僕の表情は不安に揺れているように見える。気分の問題だろうか。どこか、顔色が悪いような。
「寝不足ですかな? 顔色が悪いですよサイファー様」
ティストにもわかるくらいに、顔に出ているのが証明されてしまった。僕の気のせいじゃないんだ。
「大丈夫だよ。フォナの儀は……成功させるから」
成功させる、よく言えたものだな。僕はそんな言葉に根拠なんか持てないのに。
父がいる書斎へ向かわないといけない。顔を合わせるのが少し怖い。
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