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57 諦める者→公爵令嬢⑩ 一応、婚約者

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公爵令嬢は、

こう見えても、一応、なんとなく、王太子の婚約者になっている。

不本意ながら。

貴族側に立つ『公爵家』と『王族』を繋ぎ、内乱などを起こさないための政略結婚という位置づけだからだ。

王太子が公爵令嬢の元へ通うのは、その関係が不快…深いように知れ渡すためのカモフラージュとも言える。

王太子は、公爵令嬢のことを好きではない。

これは、前々回の婚約破棄の時でも分かること。

王太子にとって、公爵令嬢はコンプレックスの塊なのだ。


最終的には、分からないことは分かるやつがすればいい。

俺は、最終判断だけするし、言ったことは、全てやれ。

という、殿様裁き(?)になってしまうのだが。



*

「帰ったわね」

「帰りましたね」

「どれくらい、いたかしら」

「…1,2分でしょうか」


侍女とこそこそ話。

「カモフラージュになっているのかしら」

「なっていないでしょうね。逢瀬なら、もっと長い時間の滞在をしますから」

「そうよね」

「そういえば、商人息子が隣国へ行ったこと知っています?」

「知っているわよ。後から、秘書長補佐が追いかけていったということも」

「あ~あ、補佐の方。良いと思ったのにな~」

「私なら、商人の方かしら。商いなどの話をしてみたいし、何よりもまだ正常でしょう」

ひどい誤解なのだが、正確な情報が伝わりにくい世間など、この程度。

……?

「やっぱり好みは違うわねぇ~」

「昔は、どれでも良かったのですが、ポンコツの相手だけはダメです。バカと脳筋はダメ絶対」

そんな折り、あの事件が起きた。
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