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無言で進む婚約破棄劇?

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今日は、とってもよい天気だ。

朝の鳥たちも、静かにしているだろう。


この世界は、静寂に満ちている。

声を出していいのは、親族同士の場合のみ。
音を出してもいいのは、家族がいる場合のみ。

絶対に、声も音も、家族・親族以外のいる前では出してはいけない。


今日は、全校集会がある。

壇上に、静かに登る校長先生。

もちろんな話だが、次第に従って集会は進む。
基本的に、伝達事項が書かれた垂れ幕を指して、まるでモノローグの様に進む。

声や音を出してはいけないということは、くしゃみや咳、寝言やいびきも禁止だ。

仮に、それをすると周囲にいる、静音騎士に連れられて、二度と家族の元へ帰ってこない…とされている。

実際は、帰ってくる。

ただし、静音魔法を付与された状態で。

静音1年という罪は、家族であっても、自分から音を出すことができなくなる術。

もちろん、起訴猶予みたいな形状で、明らかに自分から音を出そうとすれば、静音期間は延びていく。


全校集会も終わりに近づき、生徒会からも伝達事項があるらしい。

生徒会長は、たまたま王子が着任している。

やり方は、全校集会と同じだ。

だれがやっても同じだが、面倒くさいことはみんな避ける。


そこへ突然、目立つように桃色の髪をした女の子が乱入する。

もちろん、壇上に登るときは、静かにゆっくり。

急いで登ろうとすると、音が出やすいためだ。

まぁ、泳いでいるような遅さだ。


黒板のような吹き出しを持って、アピールしている。

しかし、みんなに見せると王子の方は見えず、しきりに回している。

王子の方にも分かるようにだろうが、ゆっくり見せている。

急いで回せば、風切り音がでてしまうためだ。

見せたら、自己主張をするために、黒板消しでゆっくり消す。

消している時に音がするのは、ダメだからだ。

消した際に出た粉は、そよそよと流れる風に載せるかのように静かに落ちていく。

王子は、ゆっくり壇上から静かに降りようとしている。

吹き出しに、待ってくださいと書かれる。

王子の方に見せてから、こっちへ見せる。

ある意味、滑稽な風景だが、ここで笑ってしまうと静音騎士に捕まってしまう。

息も静かにしなければならない。

こういう状況に陥れたあの女には怒りしか出てこない。

拷問としかいいようがないからだ。


吹き出しを見たが、王子は、それを無視して壇上から降りてしまった。

「まって」

桃色髪の女の子は、静音騎士に捕まった。

「言いたいことがあれば、声を出すことを許す」

静音騎士の騎士団長?が、そういう許可を出す。

荒い息をしたり、桃色髪の女の子を批判する者、笑っている者。

様々な者たちが、ここぞとばかりに声や音を出す。

別に、声が出せないという訳ではない。

面倒くさい理由から、声や音を出すことを禁じているのだ。


それは、魔法。

魔法には、音や声に過敏に反応してしまうものがある。

自らの名前は2つあり、片方が通称名。

もう一つは、真の名前とあり、真の名前が知られてしまうと、自分の自由度は失われてしまう。

それを防止するために、声を禁じている。

音も禁じているのは、同じ意味で音に声を載せる、静音術があるからだ。


そして、現在。

静音騎士が許可している間に、あちこちで愛が囁かれている。

ここで、声を出して、プロポーズでもしないと、あの静音の中での愛の語らいは味気ないものになってしまうから。

静音騎士も、分かっているためか、集会のある時点で許可を出す場合が多い。

あの、桃色髪の女の子は、静音騎士が許可するのが待てなかったのだろう。


王子に群がる女の子。

ここぞとばかりに熱が入っている。

私?

もう、結婚しました。

前回の許可時に。

婚約破棄なんてことはしないわよ。

でも、生徒会長の王子さまは、常習犯。


「おお、桃色髪の女よ、我と結婚してくれないか?」

生徒会長は、既婚者です。

静音騎士から、一時開放された桃色髪の女の子は言う。

「今の王子妃の離婚や婚約している女性と婚約破棄をしてください」

「するさ、するから我と婚約を」

…なぜか今の王子妃と同じセリフを聞いた?見た?気がするわ。

「我の女たちよ。開放してやろう。我は、この桃色髪と結婚する」

「「「ありがとうございます」」」

全員の声がひとつになった。

そんなに嫌だったのか?

そして、それに対して歓声があがる。

静音騎士が、

「そこまでだ」

と言えば、すぐに静かになる。

しかし…

「王子さま、嬉しい」

声を発したのは、やっぱり桃色髪の方だった。

嬉しそうな顔をしながら、静音騎士に運ばれていく彼女の運命は?

そして、婚約…結婚はどうなるのだろうか?


まぁ、関係ないと言えば、言える。

私の結婚相手が王族であろうと。

あれと親戚になるのは、嫌だなぁ。
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