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37 失踪してもらいましょう

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グリーンも少し寝袋で横になるとのことだったから、こちらはベッドを使わせてもらった。
着替えるのかと思ったけれど、何かあると大変だからという理由で宿屋に泊まる時はよほどのことがない限りいつもの服装なのだそうだ。
何かって何だろうか。

時刻はまだ24時だ。
いや、明日になった。
朝食は、6時くらいから食べられるらしい。
クエストを前日のうちに取っておいて、翌日朝早く町を出る人がいるそうなのだ。

眠れない。
まぁ、向こうでぐっすり眠ってしまったからな。
でも、目を閉じてじっとしていようか。

バタン。
隣の部屋のドアが閉まった音が響く。

カチャカチャ。

…この部屋のカギを解錠しようとしている?
盗人か?

カチン。
開いた?

ギー…

「デライト」

次の瞬間、部屋に満ちる白い光。

「きゃあ」

悲鳴が上がる。
女性の声だ。

「パラライズ」
「ぐっぎぎぎああ」

容赦なく飛んでいく魔法か?

バタバタバタ。
聞いた感じだと2,3人倒れたか?

「夜中にカギを開けて泥棒かと思いきや、ここの宿主と常連客っぽいわね」

2人の女性と1人の男性は、体中が痺れるのか声も上げられず身体も動かせられず、呻いている。

「どうしようかしら。衛兵に突き出すのは簡単なのだけれど」

グリーンは何か考えている。

「エリア遮断」

外の声や音が聞えなくなった。

「今、外へ声や音が伝わらないようになる魔法を掛けたの」
「それで、これをどうする?」

ベッドから出て、目の前で倒れている3人組を見る。

「衛兵に目を付けられるのは面倒くさいし、説明も大変そうだし、今周囲の音を集めているからそれ次第かな」
「周囲の音?」
「まぁまぁ、そういう感じのことよ」

そう言うとグリーンは、3人を見ながら黙ってしまった。
時刻は、そろそろ午前3時だ。

「タイムリミットは、午前4時半。集まった音を聞くに、この宿は宿泊客が朝早く出て行くことが多いみたい。突然いなくなることもあるみたいだけれど、それはこういう訳だったのね」
「というと?」
「つまり、宿泊客を襲って金目の物を奪って、客は奴隷か何かにするか、ここで殺してしまって処分するってことね。オススメしてくれたギルド職員もグルかもしれないわね。油断も隙もないわね」
「ギルドを敵に回すことにならないか」
「そうね。それなら、この人たちには失踪してもらいましょう」
「どうやって?」

バックパックの中をごそごそしていて、取り出したのはビン。
ビンのフタはコルクで出来ていて、何かが書いてある。
ビンのラベルには、日本語で『圧縮瓶』と書かれて、シールが貼ってある。

シールを剥がして、盗人に貼り付けるを3回繰り返し、

「回収」

そう言うと盗人は小さくなりながら瓶の中に入った。

「これは?」
「これは圧縮瓶。町の外とかで犯罪者を拘束、運搬するときに使う必需品よ」
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