約束の続き

夜空のかけら

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第9章 理の使命2

89 1の封印”金の開放”

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反転魔法陣が形成されていく。もの凄く久しぶりに見たけれど、これで何をするのかが分からない。あの人の声が聞こえる。
「高度を上げる。ついてこれるか?」
「あなたからの能力底上げを受けているんだから、少しなら大丈夫。時間がないから手短に。」
そんな声を聞いたと同時に、エリーさんが空中に描き出された魔法陣の中央に割り込んできた。私より上の方に。そして、
「2人からの話を聞いてね。時間は少ししか与えられないし、この後また私は療養に戻ることになるだろうから。」
「起動するぞ、呼び戻すのはまかせろ。」
「お願い。」
反転魔法陣が輝きだす。
その光が眩しくて、周囲が真っ白になった時、声が聞こえてきた。懐かしい、お姉ちゃんの声。少し混じって、あいつの声も。昔のまま。
周囲が真っ白だったけれど、その中でなぜか動き回ることができたので、魔法陣が輝く前に私より高い位置にいたはずのエリーさんを探すと、案の定、そこにエリーさんはいた。でも、目を閉じ、意識があるように見えない。気絶をしているようで、話しかけても反応がない。この状況に困惑していたら、エリーさんの目が開き、横になったまま私の方を見た。
「変わったわね。」
声こそエリーさんのままだったけれど、その一言は紛れもないお姉ちゃんの言葉だった。眼から涙がこぼれ始めた。記憶が薄れていく霞んでいく状態でも、どこかにお姉ちゃんを求めていたのかもしれない。
「あなたには、迷惑ばかり掛けてごめんなさいね。あなたが苦労していることは、エリーさん経由で見ていたわ。」
「見ていた。帰ってきていたなら、どうして会いに来てくれなかったの。」
「会いに行きたかった。でも、もう私は、ううん。私たちの実体はないから。」
「実体?」
「そう、身体のこと。あなたと同じような身体をもう持っていないの。ここで話ができるのも、この場所を作ってくれたのも、あの人とエリーさんなの。エリーさんを介しないと私たちは外の情報を知ることはできない。エリーさんの意識がある状態だと、私たちの意識は眠りについているから、会話は難しいかな。」
あいつの声は聞こえない。声を聞きたいとおもったその時に
「あーなんだ。結婚とか新婚旅行とか騙して悪かったな。あの時は、時間がなくて苦肉の策だったが、結果として最悪な状況を作ってしまった。すまん。」
「うん。」
なぜか他に言うことがなくなってしまった。昔、好きだった時に戻ったような感じがした。
白い空間のどこからか、声が聞こえた。
「そろそろいいか、魔法陣の効力がかなり落ちてきた。」
あいつが、慌てたように、
「時期に、俺らは、お前と一心同体…ちょっと違うか。でも、そんな感じになる。元に世界に復帰する際、おまえを縛っていた封印の1つを解く。あとは、自力で全部で12ある封印を解いていけ。」
その言葉を残し、周囲の空間が真っ白な状況からあの草原に戻っていく。
空中に描かれた魔法陣は消えており、いつの間にかにエリーさんは、あの人に抱えあげられていた。エリーさんは、気を失っているらしい。顔に垂れた髪の毛を丁寧にずらしているあの人は、どこかの誰を彷彿させる。
あの人と2人の子供が近づいてくる。私の手の届く範囲まで近寄ってきたが、あの人の顔などにも汗が流れおちていて、物凄い疲労感なのが見て取れる。
「あいつから聞いたと思う。今から封印の1つを解く。身体の痛みは凄いと思うから、このまま王城の治療院に入院してもらう。学校の方は気にしなくていい。エリーの妹、王女が面倒を見るとのことだ。」
次の瞬間、王城内の治療院に着くやいなや、身体が熱くなり、身体の内側から身体が弾け飛ぶような鋭い痛みが全身を走った。思わず、大きな悲鳴が出てしまった。
あの人が言った。
「封印に触っただけでか。こりゃ、難儀なことだが、あいつのことだし、今後のこともある。予定通り、封印の解除を行う。」
そんなことを聞いた直後、身体が蒸発するかのような爆発するような全身を貫く強烈な痛みがいたるところから湧き上がった。そんな強烈な痛みで、意識が遠のき、そして私は、そのままベッドに倒れ込んでしまった。

あれから、何度か起きて、痛みで気絶し、しばらく経ってから起きて、また痛みで気絶するのを繰り返していたそうだ。なぜ、他人ごとのようになってしまったのは、私自身にその記憶がないから。実感としてイメージが湧かないから。ただ、壮絶な痛み、痺れなどの症状と意識がなかった時は、全く飲食物を受け付けなかったそうで、体重が急激に減少。痛みは引いて、前に比べると見えないはずの場所が見えたりする能力が発現していことが分かった。
しかし、あと11回、これを繰り返すというのは、かなりきつい話。体力が回復しないと、痛みや痺れ、その他の問題で激痛死もあると…かなりの間、この王城内の治療院に入院することは決まったようなものだった。
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