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「それで、1票のあなたがその他の全部の私の婚約者だと言うの」

「当たり前だ」

「そんなわけ無いでしょ。いつの時代よ。そんな婚約者なんていう時代錯誤なものは」

一応言っておくと、ここは中世ヨーロッパに魔法を掛け合わせた世界では無い。

歴とした現代世界に神秘という名の魔法が使える世界。

神秘を使えるのは、一部の女性に限られているが、ほんの少しの神秘で何ができる。

せいぜい、鉛筆を転がすとか捜し物の発見しやすいとか、役に立っているのかどうなのか微妙な内容。

私もできますよ。

ただし、気配遮断というもの。

これまた意味が分からない。

距離が近ければ効果なし。

普通、逆じゃない?

それはともかく、

「何を言っているかわからなんな」
「私もあなたが何を言っているか理解不能です」

「お前は悪役令嬢で婚約者。俺はその悪役令嬢からメイプルを救う正義者。悪役令嬢は断罪されて処刑されるべきだ」

「処刑~?」

「絞首刑がいいか?斬首刑がいいか?火あぶりなんていうのもあるな」

繰り返すけれど、ここは現代世界で中世ヨーロッパのように処刑なんてない。

「ばっかみたい」

体育館がざわざわして来ました。

いよいよ強制排除のお時間です。

「なんだと~メイプルを虐めたのは確かだ。婚約破棄だ!」

「それで、メイプルさんは”どこの”メイプルさんなの。私もメイプルなんだけれど」

「あ?」

周囲を見渡す「自称王子」。

「いない。さっきまで後ろにいたのに」

…それって、私のこと?間抜けにも程がある。

「愛しいメイプル。悪役令嬢と破棄したぞ。出ておいで、もう君を害するものはいない」

しかし、体育館の在校生は誰も名乗りを上げない。

そりゃそうだ。

得票数1票の1票は自分で入れたと思われるもの。
メイプルさんも実在しているかどうか。

聖書に酔っている「自称王子」だから。

「さて、「自称王子」生徒総会の私的使用につき拘束する」

先生も「自称王子」とか使っているし。

「離せ~拘束されるのはあっちだ~離せ~………」

先生達に連行されて体育館を出て行く。

わめき声も遠くなっていく。

「さて、「自称王子」による混乱もありましたが、生徒総会を開催します」

全く、悪役令嬢=婚約者なわけないでしょ。

私は聖女。

神秘の力を持つ生徒会長なのよ。
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