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136回目 いけにえ

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「………、まだだ。まだできる」

「ふん。もうリタイヤしたらどうだね?」

「いけにえを得るために、ここまで来たんだ」

「いけにえか」

そう言うあなた。

舌なめずりするのは、キモチワルイ。

2人は、オセロをしています。

王位決勝戦です。

で、商品は私。


”いけにえ”


この世界では、必ず1人の”いけにえ”が生まれます。

”いけにえ”は、あらゆる願いを叶えます。

でも、生まれた時は何の力もありません。

せいぜい、安らかな眠り(普通の睡眠)を与えるくらい。

きちんとした栄養を取り、きちんとした教育と愛情溢れる家族が、その後の願いにも影響されると分かった。

だから、”いけにえ”を得た家族は、生まれた直後に裕福な家庭に”売り”に出してしまうことが多かった。


”いけにえ”

私は、3日後に18歳を迎えます。

その日が一番強く願いを叶える日でもあります。

そして、”いけにえ”、私が消える日。

次の瞬間に、どこかで私ではない私。

”いけにえ”が生まれる日。


あ~、わ!た!し!覚醒。

今回は、”いけにえ”になっていました。

これはびっくり。

何々(カンペ)、ふむふむ。

”いけにえ”さんのご要望はっと。

いけにえ辞めたい。

そうでしょうそうでしょう。


「さぁ、来い!3日後は、私がこの世界の王となるのだ!」


オセロ?の勝負が着いたようです。

舐めていた人。

悪人(←決めつけ)です。


「嫌」

「な、なんだとう。”いけにえ”は、拒否できないはずだ」


そうなんです。

”いけにえ”さんは、行動制限があって、主からの命令には逆らえないのです。

だから、今回の命令に逆らうなんて、ありえない事なんです。

でも、今の私は”いけにえ”であると同時に”プチ神さま”なので、逆に命令してあげます。


「お手」

「ワン」

「イイ子、イイ子」

なでなで。

「ワォ…、ななんだ」

驚いてる驚いてる。

周囲の人も固まっている模様。


だから


「”いけにえ”辞めます!」

その私の声に応じるかのように現れる、白い光。

「その願い、受け取りました」

光は私を覆い包むとパンと音と共に、周囲に弾けた。

後には何も残らず。


”いけにえ”の願いは、ただ1つ。

もう、”いけにえ”が生まれませんように…


プチ神さまだけど、演出はバッチリよ。
効果もバッチリ。
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