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7 快適ぬくぬく

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冬。
寒い季節がやってきた。

しかし、エアコン魔法を習得した魔法学校の面々は、快適そのもの…ではなかった。

夏に比べて、発動難易度が上がっていた。

それもそうだ。
どこに魔力回収ポイントがあるのか分からないからだ。

「はぁ~、ぬくぬくだねぇ~」

そんな声を漏らしたのは、ミーアだ。

「しっっもん」

ミーアのすぐ前に座っている生徒が、ミーアに身体を向けて聞く。

「はい、何でしょーか。1ごうくん」

「いちごーくんじゃありません…そんなことより、エアコンで快適にするこつはないのですか」

「こ~つ~?」

「全然、ぬくぬくじゃない!」

言っている本人だけじゃない、他の者。新米先生も注目している。

「一部分だけ、さらに冷やせば良いじゃない」

「「「???」」」

ぬっくぬっくぬっくと本人はご機嫌である。

「癒やしを!」

「「「癒やしを!」」」

新米先生の言葉に、生徒の言葉が唱和する。

「ああもう。寒くても、もっと寒いところがあるでしょう。あれよあれ」

ミーアの言葉は、なんだか要領を得なかったが分かった者がいた。

天才である。

「もしかして、温かくするためには、もっと寒くしないとダメなんじゃ」

「あったり~」

「どいうこと?」

つまり、言いたいのはこういうことだ。
温かくするのは、自分だけでいいのだから、その周囲はもっと寒くてもいい。
周囲から熱(魔力)を奪うということだと。

全員が納得したところで、問題点に気づく。

「すると、取り合いになる?」

「そ~ねぇ~。まぁ、私は領域強化しているから問題なし!」

ぬっくぬっくぬっくと本人は…

バン!

「ずるい!」

机を出席簿で叩くと、新米先生がミーアに突撃する。

「もっといい方法があるでしょ。絶対」

「おいおい」

「周りで寒くなっている場所なんてないもん」

「先生だろ。もん なんていうな」

こいつは、

「サーモしたけど、極零場所なんでないもん」

サーモ?
ああ、温度分布を見たのか。うかつだったな。

「はいはい。そーです。エアコン魔法ではないです」

そう使っていたのは、エアコン魔法ではない。

夏は効率がいいのだが、冬は非効率だし、もっといい方法がある。

「な、なんですか?」

「熱奪魔法です」

「「「ねつだつまほう?」」」

「周りから熱を奪って、温める方法だ」

?さっきと何が違うって顔してるな。

「それって、何?」

代表して聞いているのは、新米先生だ。

「簡単に言えば、周りの暖かさを自分自身の周囲に集めるということだな。これで、暖房機はいらん」

「へえ~……?」

騙されてくれないかな。

無理か。

「「「ミーア!私たちの暖かさを返して!」」」

そんなに大騒ぎをすることか?
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