上 下
1 / 7

1 入学式

しおりを挟む
いつもならみんながいる集会所に入ったら…

あれ?みんないないや。
いつもなら、がやがやわいわい、やかましいったら

それで、私が予定表を見て納得した。

今日は、入学式だったんだ。

魔法学校の入学式は、国の内外から来賓などが来る。
国民なら、誰でも見ることができる卒業式と並んで重要な式典だ。

ただし、いつも厳かな雰囲気で行われる訳ではない。

学校長が少々おかしい?こともあって、毎回なんらかの形でみんなの期待を裏切らない演出をするのだ。

それで、がやがや連中は入学式と卒業式は必ず現地へ行ってる。

わたし?
興味ないわよ。
でも、無関係じゃないけれどね。

お?

集会所の常連の男の子が1人、入って来た。

「あ、ミーア。遅刻しちゃった…ぐすん」

保護欲をくすぐられるカイルが入って来た。
どうやら、入学式ツアーに行きそびれたらしい。

「しょうがないわねぇ。私と一緒に行く?」
「行く」
「手、繋ぎましょ」
「うん」

どこにしようか迷ったけれど、一番目立つ場所にしようと思った。

「では、“転移!”」

転移先は、学校長が壇上で挨拶をしている隣。

挨拶は、まだ終わっていなかったのか。

「んんn、あ~ミーア?仕掛けがダメになったじゃないか。どうしてくれる」
「挨拶はもういいの?」
「あ」

挨拶の途中だったから、会話もばっちりマイクに入っていた。

「ほら、あそこにみんな居るから、行ってらっしゃい」

そういうと、手を離してカイルを解放してあげる。

在校生はもちろん、新入生もカイルを見てほのぼのとしている。
さすが、保護欲をくすぐるだけはある。
これで、集会所もさらに賑やかになるな。

「がっ~こう~ちょ~。私、彼に乱暴…は?」

変に長く話す1人の女性が幕の間から出てきた。
これだけで、仕掛け人ということが分かる。

まぁ、ばらしたのは、学校長なんだけれども。

「えっと、私。どうしたらいい?」

仕掛人が、この状況に戸惑っている。
それはそうだろう。
保護欲をくすぐられ、ほんわかしているところに気持ちを壊されたみんなが険悪な視線を投げているから。

「ぐす。帰ります」

仕掛け人はそういうと壇上から壇の左右正面にある階段を降りていった…が。

「きゃー、かわいい。ね、ね、名前は何て言うの」
「カイル、カイルっていうの」

どうやら、仕掛け人もカイルの魅力(?)にはまってしまったらしい。

「なんだか、カイルに全部持って行かれたな」
「そうね」

分かる。
すごく。
カイルは、かわいくて保護欲をそそられる人物。

ただし、長命種ということもあって、年齢は…考えないことにしよっと。

「学校長。私、帰るわね」
「まぁ、ミーア待ちなさい」
「なんでよ」
「副校長…」
「帰る!」

私はいち早く離脱してきました。

カイル?
ヘルプが来たら、迎えに行きます。

入学式にカイルが出席したから、これ以上の仕掛けは必要ないだろうし。
知らぬは、本人だけ。
保護欲、恐るべし。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

妹の妊娠と未来への絆

アソビのココロ
恋愛
「私のお腹の中にはフレディ様の赤ちゃんがいるんです!」 オードリー・グリーンスパン侯爵令嬢は、美貌の貴公子として知られる侯爵令息フレディ・ヴァンデグリフトと婚約寸前だった。しかしオードリーの妹ビヴァリーがフレディと一夜をともにし、妊娠してしまう。よくできた令嬢と評価されているオードリーの下した裁定とは?

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

えぇ、死ねばいいのにと思ってやりました。それが何か?

真理亜
恋愛
「アリン! 貴様! サーシャを階段から突き落としたと言うのは本当か!?」王太子である婚約者のカインからそう詰問された公爵令嬢のアリンは「えぇ、死ねばいいのにと思ってやりました。それが何か?」とサラッと答えた。その答えにカインは呆然とするが、やがてカインの取り巻き連中の婚約者達も揃ってサーシャを糾弾し始めたことにより、サーシャの本性が暴かれるのだった。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

あの日、さようならと言って微笑んだ彼女を僕は一生忘れることはないだろう

まるまる⭐️
恋愛
僕に向かって微笑みながら「さようなら」と告げた彼女は、そのままゆっくりと自身の体重を後ろへと移動し、バルコニーから落ちていった‥ ***** 僕と彼女は幼い頃からの婚約者だった。 僕は彼女がずっと、僕を支えるために努力してくれていたのを知っていたのに‥

処理中です...