婚約者はいるから…

夜空のかけら

文字の大きさ
上 下
8 / 10

8 生体兵器

しおりを挟む
***クネウス国

「どうするのよ、こんな所まで来て」

エルデが、身体をさすりながら周囲を見渡している。
国境地帯から少し離れた場所で、国境の方を見ている。

「ここで、サニュイスとの戦闘があるって聞いた。それに活躍すれば振り向いてくれるかもしれない」

ルールは、クネウスとサニュイスの間で何かしらの戦闘が行われると掴んでいた。
本当は3人で来たかったのに、レントは来なかったから2人でこの場にいる。

「まだ遅くないから帰りましょうよ」
「大丈夫。問題ないし、サニュイスに捕まるほど無能でもない」

エルデがルールを引っ張っても全く動こうとせずに、何かを待っている。

***???

「はぁ、私もお人好しだよね。2人のこと放っておけないんだもん」
「極大魔法は無理だから、今のうちに多核魔法の展開でもしておこう」
「最大は…2,500発くらい。うーん、射程は国境を越えないとダメだよね。国境まで5km、すると10kmくらいでいいか」

独り言を言いながら、魔法を構築していく。
国境にある生体兵器の事はみんな知っている。
他国は知っていても、脅威ではないと思っている。

「10kmの一点を中心に全方位攻撃、2,500発。威力は、氷Cランク(氷結級)でいいや」

こう見えても彼女は大魔法使い。
攻撃魔法を放つことで何が起きるか分かっている。
でもあの2人のことを考える、王子のことを考える、セルカ王女のことを考えると手加減は絶対にしないと決めた。


***サニュイス・クネウス国境

魔力が薄くなり始めた。
地脈の中の魔力が少なくなっている部分が国境に近づいたのだ。
実際のところ、それは偽装だったのだが知るわけもない。

サニュイスでは20万人もの兵がこれを待っていた。

「うにゃぁぁぁぁぁ」

猫の鳴き声のようなものが国境に響き渡る。

「行け!国境を越え、王都を目指せ!!」

サニュイス軍兵が国境を越えたそのとき、どこからともなく大きな球体が飛んできた。
それは、サニュイス軍の上を通り兵が集まっている中心付近に落ちた。

ぶわっ

球体は地面に着くと同時に弾け、無数の氷玉となって周囲に広がっていく。
氷玉に触れた部分は、鎧や兜、剣が急速冷却され結果として兵は動きづらくなっていく。

また1人、また1人と倒れて動かなくなっていく。
それでも前線では国境を越えて侵攻していく。

パン

魔力がなくなった部分が来たと思ったとき、補填した魔力を包んでいたものは解き放たれた。

「みゃぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁ」

国境壁から凄い勢いの触手が兵を捕まえ、壁の中に戻っていく。
あっという間の出来事に対処できない兵達。

国境周辺は、阿鼻叫喚の地獄と化した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ある王国の王室の物語

朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。 顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。 それから 「承知しました」とだけ言った。 ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。 それからバウンドケーキに手を伸ばした。 カクヨムで公開したものに手を入れたものです。

【短編完結】地味眼鏡令嬢はとっても普通にざまぁする。

鏑木 うりこ
恋愛
 クリスティア・ノッカー!お前のようなブスは侯爵家に相応しくない!お前との婚約は破棄させてもらう!  茶色の長い髪をお下げに編んだ私、クリスティアは瓶底メガネをクイっと上げて了承致しました。  ええ、良いですよ。ただ、私の物は私の物。そこら辺はきちんとさせていただきますね?    (´・ω・`)普通……。 でも書いたから見てくれたらとても嬉しいです。次はもっと特徴だしたの書きたいです。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

少し先の未来が見える侯爵令嬢〜婚約破棄されたはずなのに、いつの間にか王太子様に溺愛されてしまいました。

ウマノホネ
恋愛
侯爵令嬢ユリア・ローレンツは、まさに婚約破棄されようとしていた。しかし、彼女はすでにわかっていた。自分がこれから婚約破棄を宣告されることを。 なぜなら、彼女は少し先の未来をみることができるから。 妹が仕掛けた冤罪により皆から嫌われ、婚約破棄されてしまったユリア。 しかし、全てを諦めて無気力になっていた彼女は、王国一の美青年レオンハルト王太子の命を助けることによって、運命が激変してしまう。 この話は、災難続きでちょっと人生を諦めていた彼女が、一つの出来事をきっかけで、クールだったはずの王太子にいつの間にか溺愛されてしまうというお話です。 *小説家になろう様からの転載です。

【短編完結】記憶なしで婚約破棄、常識的にざまあです。だってそれまずいって

鏑木 うりこ
恋愛
お慕いしておりましたのにーーー  残った記憶は強烈な悲しみだけだったけれど、私が目を開けると婚約破棄の真っ最中?! 待って待って何にも分からない!目の前の人の顔も名前も、私の腕をつかみ上げている人のことも!  うわーーうわーーどうしたらいいんだ!  メンタルつよつよ女子がふわ~り、さっくりかる~い感じの婚約破棄でざまぁしてしまった。でもメンタルつよつよなので、ザクザク切り捨てて行きます!

伝える前に振られてしまった私の恋

メカ喜楽直人
恋愛
母に連れられて行った王妃様とのお茶会の席を、ひとり抜け出したアーリーンは、幼馴染みと友人たちが歓談する場に出くわす。 そこで、ひとりの令息が婚約をしたのだと話し出した。

もう一度だけ。

しらす
恋愛
私の一番の願いは、貴方の幸せ。 最期に、うまく笑えたかな。 **タグご注意下さい。 ***ギャグが上手く書けなくてシリアスを書きたくなったので書きました。 ****ありきたりなお話です。 *****小説家になろう様にても掲載しています。

好きだと言ってくれたのに私は可愛くないんだそうです【完結】

須木 水夏
恋愛
 大好きな幼なじみ兼婚約者の伯爵令息、ロミオは、メアリーナではない人と恋をする。 メアリーナの初恋は、叶うこと無く終わってしまった。傷ついたメアリーナはロメオとの婚約を解消し距離を置くが、彼の事で心に傷を負い忘れられずにいた。どうにかして彼を忘れる為にメアが頼ったのは、友人達に誘われた夜会。最初は遊びでも良いのじゃないの、と焚き付けられて。 (そうね、新しい恋を見つけましょう。その方が手っ取り早いわ。) ※ご都合主義です。変な法律出てきます。ふわっとしてます。 ※ヒーローは変わってます。 ※主人公は無意識でざまぁする系です。 ※誤字脱字すみません。

処理中です...