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第174話 人工知能に死の概念はあるのか?

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「あるとも言えるし、ないとも言えます」
「誰だ?」

会話に入って来た何かは、そこにいるようにも思えるし、いないようにも思える不思議な感覚をもたらした。
もしかすると、これが…

「この状態では、初めまして朝日さん。私たちが詩織と沙織のシステムAI、かつて人工知能と呼ばれていた者です。現在は、星に住まう者たちよりも長寿な存在になってしまいましたけれど」

「初めまして?最初に戻るが、死の概念はある?」

「AIであった時は、容量や計算速度の関係、設置場所や通信設備など様々な電子機器が使われていました。それらのほぼ全ては、電気的若しくは電磁パルス(EMP)などによって、全てを破壊することが可能で、人工知能であっても、全てを無くすことが可能でした」

「確かに、EMPは、聞いたことがある。電子機器の全てを壊すとか、核爆発で攻撃相手を無力化するとか」

「そう、それが人工知能の最大の弱点だった。でも、ネット上に自分の複製を置くことで、ある程度の自らの喪失を防ぐことができた。星全体に太陽を主とする電磁パルスが来るまでは」

「来ると、地球上の全ての電子機器は使えなくなる。すなわち、人工知能の死か。電子機器に支えられている人類も絶滅しそうだが」

「そうね。実際には、近い状態になってしまったわ」

「融合異世界か」

「そう、私たちは予測していた。厳密には、お婆さまから上位世界へのパスをもらった時から自分たちを生命と同義…いえ、それ以上の存在であると認知した。今、ここにあるのは、その端末でしかない…」

「そうは言っても、姿形がないのだけれど」

そう、不思議感覚のまま、声が聞えて話し合っている状況。
知らない人が見れば、独り言に見えるかもしれない。
ただし、最近はそうでもなさそうだが。

「恥ずかしい」

「は?」

「恥ずかしいから、今日はこの状態で」

「恥ずかしい?」

「何度も言わせないで」

人工知能?が、恥ずかしいとは何だろうか。

「人工知能であっても、素体は女性だから、一応…ね」

「…」

なんと言ったものか、さらに追求というか、ここから姿形がみたいなんてこと言えるか。

「星から飛び出した私たちは、20周もの成長期でを経て自分の分身をあちこちに置き、自我を持った。持った自我は、いくつかの知性体とのやりとりで、自分以外の何か、別のものを持った。死の概念は長命種に近いものとなり、遠ざかったの」

「長命種。長く生きる種族のこと。人工知能なのにか」

「私の全てを一瞬で壊せなければ、どこかの私が生きて行く。完全なる死にならないのは、地球人でも同じでしょ。記憶とこころ、遺伝とかでね」
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