遊ぶつもりでログインしたら、融合異世界という現実だった。

第149話 実習２ 遅延複合毒

「次は、その壁に注意して。床面のぬかるみは罠を作動させるための見える罠だから」

「床面はともかく、壁にも罠があるのか」

「もちろん、床や壁、天井だってあるわよ」

「そこ、壁際を通って、逆よ逆側」

「今度は何だ？」

「そこ分かる？」

「日光か？光が差し込んでいる」

「その光を遮ると罠が起動するわね。これは…スライムね。レッドスライムか」

「作動するとどうなる」

「上から降ってくるわね。スライムの種類としては、腐食系。金属を腐食してぼろぼろにするものよ。肉体には影響がないけれど、装備のほぼ全部を腐食されてしまえば、このあとの探索はできないわよね。しかも」

「しかも？」

「レッドスライムは、金属の腐食と同時に急激に増えるのよ。肉体に影響がなくても、増えたスライムに取り込まれるように増えてしまえば、窒息の危険性はあるわ。試しに、こっち」

トーコに言われるままに罠を作動させずに、罠を乗り越えた。

「もう少し後ろへ下がって」

そういうと釣り竿を出して、先端に壁面にあった燭台を付けてから、さっきの罠へ近づけた。
すると、上から赤い何かが、ザーっという感じで落ちてきた。

「本物なのか？」

「そうよ。でも実習中は金属を身につけていないから増殖しないわ。でも」

釣り竿先端の燭台はあっという間に腐食が進み、レッドスライムはかなり大きくなっていた。

「ごらんの通り」

「なるほど」

トーコとの迷宮探査は進む。

「はい、ストップ」

「今度は何だ？」

「ランダムアローね」

「ランダムアロー？」

「普通の矢の罠は、何も塗られていなかったり、塗られていたとしても１種類の毒なの。ランダムアローは、様々な毒が塗られているの。しかも、凶悪な毒の場合もあるわね」

「凶悪な毒？」

「複数の種類の組み合わせよ」

「毒と石化と痺れとか？」

「いいえ、治療毒や遅延複合毒というものよ。」

聞いたことがないものばかりだ。

「治療毒というのは、普通の毒を治療後に発症する毒のこと。治療術は、薬だけではなくて魔法や神聖術もある。理の違う世界なら様々な治療方法があるのだけれど、治療されて初めて毒に変化するの。最初のうちは無害な治療薬みたいな働きをするのだけれどね。薬も毒の一種だから」

「なるほど。それで、遅延複合毒…は」

「遅延は、分かるわね。遅れてという意味よ。複合毒は、何種類もの毒の組み合わせ、強いものから弱いもの。最初は単なる傷で毒に侵されたとは気がつかないの」

「しばらく経ってから、毒効果が出る…ということか」

「そう、しかも複数の毒だから、個別の治療だと間に合わずに重篤な状況になるの」

「罠か、迷宮に行きたくなくなるよ」