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第72話 パス
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春を抱いた-お姫様抱っこ-まま、地下神殿から本殿へ転送された面々は、地上にあっと言う間に上がってきた。
この間も、春に向かって何かが流れているのを感じる。
「お兄さん、ありがと。今、何かが流れている感じ、してるでしょ」
「分かるのか」
「もちろん、それはね。生命力が流れ込んでいるの」
「生命力。とすると、春は死にかけていたということか」
「まぁ、そうね。死なないけれど、死にそうにつらい儀式だから」
あの舞の後には、こんな残酷なことが待っていたのかと思うと、向けようがない怒りを感じた。
「あれはね、神を地上に降ろした際に行う特別な舞なの。地上とはちょっと違うけれど、降ろした場合は、地上と天界を結ぶライン形成がどうしても必要。それには、神格持ちがああやって魔方陣に血を流さないとダメなの。まぁ、そう決めてしまったのは婆ちゃんなんだけど」
元凶は、婆ちゃんだった。
「でも、婆ちゃんを怒らないでね」
「なんでだ」
「この儀式は、当初婆ちゃんだけがしていたの。だから、一度するとしばらく臥せっていたのは、これが原因。その負担軽減のために一部を簡素化、一部の負担軽減で指名された人が最後の奉納血で場を作るようにしたの」
「だからって、何とかならなかったのか」
そう話している間も、春には生命力?のようなものが流れ続けている。
そういえば、おかしいぞ。
自分自身には、生命力を流れ出しているのに、なんともない。
「お兄さんは、既に神族よね」
「トーコから、そう聞いたけれど…」
「あれは、塔子さんとお兄さんの2人が、天界から時間をもらうために同席させた。お兄さんのための儀式だったのよ」
「そうは言っても、天界なんか行ったことはないぞ」
「ここが、半分天界のような場所。時間の流れというか速さが違うって、誰かに聞かなかった?」
「聞いたけど」
「ここから、望めば本物の天界に行けるわよ。塔子さんか、婆ちゃんか、ともえ様の誰かが同行する必要があるけれどね」
「そうなのか」
「天界に行けるようにするための儀式。それがあの儀式と言ってもいいわ」
天界か、どういうところなのか興味があるけれど、すぐに行こうとは思わないな。
ちゅっ
「は、春?」
実家の前まで、いつの間にか来ていた。
「お兄さん、ありがと。もう、降ろしてもらっても良いよ。ただ、肩を貸してくれると助かる」
その言葉で、気がつく。
生命力が流れ出でてない。
くすっ。
春が少し笑った。
「生命力は、始まりと終わりをキスによって制御しているの。特別なパスを二人の間に構築することで、早く回復できるの」
なるほど。
パス構築のために必要なのは、キスなんだ…ん?」
「春。別に唇でなくてもいいんじゃないか?」
「あ、気がついちゃった?他でもいいけれど、せっかくなんだから、やっぱり唇よね」
その言葉に、空を見上げて、してやられたと思った。
この間も、春に向かって何かが流れているのを感じる。
「お兄さん、ありがと。今、何かが流れている感じ、してるでしょ」
「分かるのか」
「もちろん、それはね。生命力が流れ込んでいるの」
「生命力。とすると、春は死にかけていたということか」
「まぁ、そうね。死なないけれど、死にそうにつらい儀式だから」
あの舞の後には、こんな残酷なことが待っていたのかと思うと、向けようがない怒りを感じた。
「あれはね、神を地上に降ろした際に行う特別な舞なの。地上とはちょっと違うけれど、降ろした場合は、地上と天界を結ぶライン形成がどうしても必要。それには、神格持ちがああやって魔方陣に血を流さないとダメなの。まぁ、そう決めてしまったのは婆ちゃんなんだけど」
元凶は、婆ちゃんだった。
「でも、婆ちゃんを怒らないでね」
「なんでだ」
「この儀式は、当初婆ちゃんだけがしていたの。だから、一度するとしばらく臥せっていたのは、これが原因。その負担軽減のために一部を簡素化、一部の負担軽減で指名された人が最後の奉納血で場を作るようにしたの」
「だからって、何とかならなかったのか」
そう話している間も、春には生命力?のようなものが流れ続けている。
そういえば、おかしいぞ。
自分自身には、生命力を流れ出しているのに、なんともない。
「お兄さんは、既に神族よね」
「トーコから、そう聞いたけれど…」
「あれは、塔子さんとお兄さんの2人が、天界から時間をもらうために同席させた。お兄さんのための儀式だったのよ」
「そうは言っても、天界なんか行ったことはないぞ」
「ここが、半分天界のような場所。時間の流れというか速さが違うって、誰かに聞かなかった?」
「聞いたけど」
「ここから、望めば本物の天界に行けるわよ。塔子さんか、婆ちゃんか、ともえ様の誰かが同行する必要があるけれどね」
「そうなのか」
「天界に行けるようにするための儀式。それがあの儀式と言ってもいいわ」
天界か、どういうところなのか興味があるけれど、すぐに行こうとは思わないな。
ちゅっ
「は、春?」
実家の前まで、いつの間にか来ていた。
「お兄さん、ありがと。もう、降ろしてもらっても良いよ。ただ、肩を貸してくれると助かる」
その言葉で、気がつく。
生命力が流れ出でてない。
くすっ。
春が少し笑った。
「生命力は、始まりと終わりをキスによって制御しているの。特別なパスを二人の間に構築することで、早く回復できるの」
なるほど。
パス構築のために必要なのは、キスなんだ…ん?」
「春。別に唇でなくてもいいんじゃないか?」
「あ、気がついちゃった?他でもいいけれど、せっかくなんだから、やっぱり唇よね」
その言葉に、空を見上げて、してやられたと思った。
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