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第54話 天竺味噌

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「天竺味噌はね。天界で製造される天界での暮らしには欠かせないものなの。まぁ、他にも色々あるけれどね。でね。この味噌、相反するものを混ぜるっていう変な効果を持ってるの。今回の場合は熱湯に炭酸。しかも、強炭酸っぽいわね。ちょっと時間が経ち過ぎちゃって、熱湯というよりぬるま湯になっちゃってるけど」

天界の調味料か。
なんだか、興味が出てきた。
でも、本業が先に進んでいないような。

「お料理も終わりだし、お風呂にも入った。あとはお部屋で過ごしましょ」
「食べ応えはあった。でも、なんというか、うーん。日常か??」
「いいじゃない、日常」

ちょっと納得がいかないのは、仕方が無いことかもしれない。

トーコと2人で部屋に戻ってきたら、和室の中央に筒が置いてあった。

「審査、終わったみたいよ」

そう言って、横になっていた筒を立たせると、その上から光が広がって、空中に像を結んだ。

『アーサー及びトーコから申請があった、入国等の審査は問題なく終了した。中央城にて、入城及び謁見を認める』

映像の中に出てきた案山子(そう見えた)は、そう言うと筒は横に倒れ映像は消えた。

「これね。こうすると」

と言いつつ、また筒を立たせると

『アーサー及びトーコ…』

そこまで進むと筒を倒す。
映像消える。
立たす。
映像出て、言葉が出る。
倒す。

『アー』

一語で倒す。

「おもしろいでしょ」

映像とは言え、なんだか可哀想に感じるのはなぜだろうか?

そして、また立たせる。

しかし、その次の言葉がいままでと違っていた。

『おとなしく職務に忠実な我で遊ぶな。我の職務は終わった。さらばだ』

その言葉とともに、筒が消えて行き、しばらくすると筒がなくなってしまった。

「あ~面白かった」
「トーコ知ってた?」
「もちろん。あの仕事って、新米天使の仕事だから。私はしなかったけれど」
「へぇ~。天使の仕事…ねぇ~」

ゲームも手が込んでるな。
さっきのご飯といい、お風呂といい。

「現実だよ。ちょっと非現実っぽいけれど」
「何も言っていない」
「ゲームだと思っていたでしょ。話さなくても分かるから。愛の力で!」
「はいはい」

適当にあしらい、部屋の窓から外を見る。

いつの間にか、周囲は暗くなっていて、窓から街の全域が見えた。
見えた?

「この窓は、見たいものが見えるの。もちろん、普通に見ることもできるけど。ただし、見たくないならそう言えば、それも望むものだから、そうなるわ」

見たくないもの、見たいもの。

「なんでも望めばね。あなたは、何を見たいのかしら」
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