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第一章 やとってください!
第7話 物語の始まり
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自分の胸に顔を預けスヤスヤと寝息を立てるタァリを見つめイリヤはため息を吐いた。
目が覚めたら、どんな会話をするべきなのだろう。
悪かったと謝るのが妥当だろうか。
「んっ」
ぐりぐりと額を胸に擦りつけてくるタァリの可愛さに、自分の下半身に痺れるような痛みが走った。
イリヤはまだ仕事用のジーンズを履いていた。
その中のモノは硬く腫れあがり、眉間にシワを寄せたくなるほど痛みを生んでいる。
「はぁ…抜いてくるか…」
今後のことは、この子が目を覚ましたら話し合おう。
今夜のことを許してくれるだろうか。戸惑い気に潤んでいた瞳を思い出し、イリヤはため息をついた。
それでも、もしタァリがイリヤを許してくれるなら、夏の嵐のように現れた少年は、単調な毎日に光を差し込んでくれるはずだ。
.
.
.
「あれ…ここ…あ、そうか。お、おはようございます」
窓の外で鳴く鳥の声でタァリは目を覚ました。
カーテンのせいで外は見えないが、雷も雨の音も聞こえない。
「おはよう、タァリ」
瞼を開いたら目の前には、青くてきらきら輝く瞳が自分を見つめていた。
寝起きの頭で、昨日のことを思い返していると、大変なことをしてしまったような気がした。
「あ!」
だんだんと頬を真っ赤に染めるタァリを目の前に、イリヤは困惑した。
昨日のことを思い出し恐がり出したのか、それとも照れているのか、どちらともとれる表情だった。
「タァリ……昨夜は……」
「あ、あのっごめんなさいっ僕、迷惑かけちゃって」
「え?」
「か、雷嫌いでっ」
「ああ、それは大丈夫だ。これからも雷が鳴ったら俺がいるから心配するな」
「あ、ありがとうございます!」
「それはいい。そうじゃなくて……俺がお前にしたことだ」
「ん?あぁ!あの、気持ちいことっ!」
「気持ちいいこと……タァリ……お前は疎いんだな」
「うとい?」
首をかしげる自分を見つめるイリヤに、「疎い」の意味と昨夜の行為の意味を教える気力はなかった。
「んっ良く分からないけど、気持ちよかったですっ!寝起きも良かったしっ」
「タァリ……お前は変わっているな……」
「ん?」
部屋にアラーム音が響き渡った。
朝食の時間だ。
一人で起き、一人で朝食を食べ、一人で開店準備をしていた毎朝に、不思議な小動物のような少年が加わった。
初めてルバーブのタルトを食べたときのようにイリヤの心が躍った。
「よし、もう起きるぞ」
「も、もう?」
「今日も仕事があるからな」
「んー、まだ眠いです!」
「そのうち慣れる」
「えー!」
「夕飯を食べ損ねただろ。腹は減ってないのか?」
「あっ!そっか!だからグーグーいってるんだっ!」
イリヤがカーテンを開くと、目が痛くなるくらい眩しい太陽の光が差し込んだ。
雲一つない晴天。
昨夜の嵐が嘘のようだ。
これからどんな毎日が待ち受けているかなんて分からない。
イリヤとタァリの物語は始まったばかり。
タァリは毎日タルトを落とすだろうし、そんなタァリを見てイリヤは首を振るだろう。
それでも、1人でいるより2人でいたほうが幸せだから、イリヤとタァリは2人で生きていく。
「さぁ、始めるぞ」
「わぁ!今日もおいしそう!」
開店まで1時間。
二人の一日は始まったばかり。
fin.
目が覚めたら、どんな会話をするべきなのだろう。
悪かったと謝るのが妥当だろうか。
「んっ」
ぐりぐりと額を胸に擦りつけてくるタァリの可愛さに、自分の下半身に痺れるような痛みが走った。
イリヤはまだ仕事用のジーンズを履いていた。
その中のモノは硬く腫れあがり、眉間にシワを寄せたくなるほど痛みを生んでいる。
「はぁ…抜いてくるか…」
今後のことは、この子が目を覚ましたら話し合おう。
今夜のことを許してくれるだろうか。戸惑い気に潤んでいた瞳を思い出し、イリヤはため息をついた。
それでも、もしタァリがイリヤを許してくれるなら、夏の嵐のように現れた少年は、単調な毎日に光を差し込んでくれるはずだ。
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「あれ…ここ…あ、そうか。お、おはようございます」
窓の外で鳴く鳥の声でタァリは目を覚ました。
カーテンのせいで外は見えないが、雷も雨の音も聞こえない。
「おはよう、タァリ」
瞼を開いたら目の前には、青くてきらきら輝く瞳が自分を見つめていた。
寝起きの頭で、昨日のことを思い返していると、大変なことをしてしまったような気がした。
「あ!」
だんだんと頬を真っ赤に染めるタァリを目の前に、イリヤは困惑した。
昨日のことを思い出し恐がり出したのか、それとも照れているのか、どちらともとれる表情だった。
「タァリ……昨夜は……」
「あ、あのっごめんなさいっ僕、迷惑かけちゃって」
「え?」
「か、雷嫌いでっ」
「ああ、それは大丈夫だ。これからも雷が鳴ったら俺がいるから心配するな」
「あ、ありがとうございます!」
「それはいい。そうじゃなくて……俺がお前にしたことだ」
「ん?あぁ!あの、気持ちいことっ!」
「気持ちいいこと……タァリ……お前は疎いんだな」
「うとい?」
首をかしげる自分を見つめるイリヤに、「疎い」の意味と昨夜の行為の意味を教える気力はなかった。
「んっ良く分からないけど、気持ちよかったですっ!寝起きも良かったしっ」
「タァリ……お前は変わっているな……」
「ん?」
部屋にアラーム音が響き渡った。
朝食の時間だ。
一人で起き、一人で朝食を食べ、一人で開店準備をしていた毎朝に、不思議な小動物のような少年が加わった。
初めてルバーブのタルトを食べたときのようにイリヤの心が躍った。
「よし、もう起きるぞ」
「も、もう?」
「今日も仕事があるからな」
「んー、まだ眠いです!」
「そのうち慣れる」
「えー!」
「夕飯を食べ損ねただろ。腹は減ってないのか?」
「あっ!そっか!だからグーグーいってるんだっ!」
イリヤがカーテンを開くと、目が痛くなるくらい眩しい太陽の光が差し込んだ。
雲一つない晴天。
昨夜の嵐が嘘のようだ。
これからどんな毎日が待ち受けているかなんて分からない。
イリヤとタァリの物語は始まったばかり。
タァリは毎日タルトを落とすだろうし、そんなタァリを見てイリヤは首を振るだろう。
それでも、1人でいるより2人でいたほうが幸せだから、イリヤとタァリは2人で生きていく。
「さぁ、始めるぞ」
「わぁ!今日もおいしそう!」
開店まで1時間。
二人の一日は始まったばかり。
fin.
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