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EPISODE 26「洗脳……? side 五十嵐あこ」

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 side  五十嵐いがらしあこ

 私の名前は五十嵐いがらしあこ。
 小中高一貫の学校に通う、高校二年生で委員長を担っている女子高生だ。

 突然なんだけど、私達は今異世界に居る。
 何故、異世界に居るのかと言うと、一人の女子生徒が突然悲鳴をあげ、クラス一同が振り返ると目の前が一瞬で真っ白になって、気付いたら見知らぬ場所に倒れていたのが一連の流れだ。
 全員が驚き、慌てていた。
 いつも陰口を叩かれたりノートや教科書を隠されたり、陰湿ないじめを受けている雨宮あまみや灯万里ひまりも居たけど、彼女だけはとても落ち着いていた。
 まるで、全てを知っているかのような感じだった。
 ヘルムートと名乗る老父ろうふが説明してくれて、私達は“魔王復活”を阻止する為に喚ばれた“勇者”なのだという。
 ヘルムートさんは私達を連れて、海外にありそうな広い教会の部屋に移動する。
 そこからはテレポート?とやらで、景色が部屋に変わった。
 そして、ヘルムートさんが連れてきた人達はこの国の国王様と王妃様らしい。
 国王様に促され、先生も含め、椅子や床に座って話を聞いた。

「全く、異界の者は礼儀を知らないのね。オマケに醜女しこめも居るじゃない!」

醜女しこめ?ジュリエッタ、何を言っているんだい?」

「そこに居るじゃない、金髪の醜女しこめが!何であんなのも居るのよ!?ふざけないでちょうだい!」

 王妃のジュリエッタ様が不快そうに言う。
 醜女しこめと聞いて、思わず雨宮あまみやさんを見てしまう。
 彼女は普段からいじめを受けていた。
 だからこそ、ここに居るクラスメイト全員が彼女をジロリと見てしまうのだろう。
 兵士達が雨宮あまみやさんを追い出していってしまう。
 一人だけ、知り合いの居ない見知らぬ異世界で野放しにされるのはかなり危険だ。

「あの!彼女一人だけ、この世界に放り出すのは危険ではないでしょうか!?」

「……貴様、誰に向かって物申しておる?」

「っ……彼女はこの世界について何も知らない、我々と同じです。知り合いもいないまま、彷徨さまようのは危険です」

「ふんっ!あんな醜女しこめがどこぞで野垂れ死のうか、わらわには関係ない。わらわの考えが一番正しい!」

「!? (なんて傲慢な人……。何故こんな人が王妃をやってるの?)」

 ほんの少し、恐怖が芽生えた。
 クラスの中で浮いた存在であった雨宮あまみやさんをいじめていた人達を凝縮させたような感じだ。
 そんな人が王妃の座に就いている。
 私は恐怖で、これ以上何も言えなかった。

 翌日から、訓練が始まった。
 皆、それぞれの職業クラスを割り当てられ、それに見合った訓練をさせられた。
 割とクラスをまとめていたリーダー格の加倉かくら清人きよとが“勇者”となり、私は“指揮官”、他は“魔導師”や“剣士”、“呪師”、“治癒士”、“探索者”、“聖女”と様々な職業クラスがあった。
 訓練が厳しすぎて逃げ出そうとする人も居たけど、訓練それと同じくらい警備も厳しく、彼らの脱走は終わりを告げた。

 そうして、数ヶ月が経った。
 それなりに皆、慣れていった。厳しすぎる訓練と警備によって、逃げ出そうと考える人は居なくなった。
 衣食住は保証されて居たけど、逃げる事は出来ない。
 それが今の現状だ。
 まるで洗脳されているかのように感じた。
 一緒に来た坂倉先生は優遇されていて、私達以上の豪華なご飯と部屋を用意されていた。
 それでも、今ではそれがだと皆思っているのだろう。

「いやぁ、本当!あいつが居なくなって良かったと思うぜ!こんな生活、あいつにはさせられないからな!」

「そーそー。あんなお嬢様にこんな良い思いをさせるなんて、俺達が許さねぇもんな!」

「ジュリエッタ王妃殿下が追い出してくれたから、俺達が追い出す手間が省けたし」

「何より、くたばった時のあいつの顔を拝んでみたいしな!」

「「アハハハハハハ!」」

 廊下を歩いていると、聞こえてくる雨宮あまみやさんへの悪口。
 そういえば、雨宮あまみやさんは無事なのだろうか?
 あれから彼女の情報は聞いていないし、兵士達は彼女を必死に探そうともしていなかった。
 まぁ、には関係ないわ。
 今、目の前の状況だけを見ていればいい。
 私が、皆を導かなければならないのだから……!
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