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EPISODE 14「気になった事」

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「“魔王復活”というのは……?」

「「「っ!?」」」

 問うた瞬間、周りの空気が一瞬にして凍りついた。
 おつまみを手にしていたクリスティーネさんは、食べようとした所で固まっている。
 他の奴らは“何言ってんだ、こいつ?”と言いたそうな顔で、私を凝視している。

「? クリスティーネさん?もしかして、これ禁句でした?」

「……いえ、禁句ではないわ。寧ろ、人々の口から進んで出てくるような情報なのよ、それは」

 確かに。“魔王復活”なんてワードが出てきたら、すぐに情報は広まる筈だ。
 寮でも、そんな話は出てこなかった。
 自由組合ギルドに来るまでの間も、そんな話は耳にしていない。

「ねぇ、それを言ってたのは誰だったか、覚えてる?出来たら教えて欲しいんだけど……」

「え? えと、インテグリン王国イシアム教会の神官長です。 ……それがどうかしましたか?」

「え?あのアホ神官長!?」

 美人受付嬢にアホ神官長って言われてらぁ。
 哀れな神官長だなぁ……。

「え……もしかしてその神官長、ヘルムートって名乗ってなかった?」

「? えぇ、名乗ってましたよ?信用していいのか、分からない老父ろうふでしたね」

「……なるほど、そういう事ね」

「? どういう事です?」

「……あまりこんな事言うのは駄目なんだろうけど、貴方あなたは知ってた方が良いみたいね……。イシアム教会の神官長ヘルムートを含めたインテグリン王国の貴族以上は、殆どが嘘つきだって言われてるのよ」

 貴族以上が嘘つきって……。
 あれ?クラスの奴らや変態男教師、あの国に滞在してなかったか?
 私を醜女しこめだからって追い出したあの妃殿下も嘘つきなのか?
 何が本当で何が嘘なのか、分からなくなってきたなぁ……。

「それに、つい最近“勇者召喚”ってのをイシアム教会が密かにやってるって情報があちこちに出てきてるの。何だか嫌な気がして、気が気じゃないのよ……」

 “勇者召喚”……。
 それ、私も召喚された奴じゃん。←
 これは言った方が良いのか?

「あと!ついでに言っとくけど、“魔王復活”の前兆は今のところ見られてないわ。あの老父ヘルムートか国王か貴族辺りがそうだと騒ぎ立ててるんでしょうね」

 そうなんだろうね。
 私も召喚された身だけど、面倒だから何も言わないでおこう。
 にしても、“魔王復活”の前兆はデマか……。

「! あの、“魔王復活”の前兆って魔物の活性化ですよね?」

「えぇ、そうね。でも、今はそんな前兆は見られないから心配する事はないわ」

「……そうですか」

 クリスティーネさんはそう言っているが、念の為警戒はしておこう。
 自分の身を守れるぐらいにはしておかないと……。

「分かりました、色々教えて頂きありがとうございます」

「あら?これから何か用事でもあるの?」

「いや……その、ちょっと作らなきゃいけない物があって……」

「そうなの?分かったわ。最後に依頼クエストを一ヶ月間受注しないと、自由組合ギルドカードは剥奪されるから、気をつけてね?」

「分かりました、また来ます。失礼しました」

 席を立ち、自由組合ギルドを後にした。
 さて、早めに帰ってサンドウィッチ作ってあげるか。
 何人ぐらい、私の部屋に来るんだろう?
 人数分作れればいいんだが……。
 念の為、材料は“魔力通販”で買っておこう。
 オムライスも作るか?
 サンドウィッチもエースさんとアベルさんに好評だったからな。
 今日の晩御飯はサンドウィッチとオムライスで決定かな。
 暫く歩いて、寮に戻った。
 ジルさんに一言言って、自室に戻る。

「……これ何人居ます?」

「ざっと数えて20人は居るぞ」

「何故、来ないと思ってた人が居るんですか?」

 階段を上ると、アベルさんとエースさん、アルさん含めた20人の団員達が居座っていた。
 そして、その中には来ないんだろうな~と思ってたシリウスさんも居た。
 何でだよ……。

「まぁ、何人か来るのは分かってたんで良いですけど……。皆、サンドウィッチ食べに来たんですね」

「サンドウィッチ美味かったからな。また食いたい」

「はぁ……そうですか。じゃあ、もうそのまま晩御飯食べていきます?サンドウィッチとオムライスですけど……」

「「「オムライス!?」」」

「って、何だ?」

 うん、まずはそこからか……。

「……口で説明するより、作って見てもらった方が良いみたいですね。作っとくんで、適当にくつろいどいてください」

「「「はーい!」」」

 さて、さっさと準備して作りますか。
 無限収納インベントリから先程買っておいた食材を出して、ガスコンロとフライパンを出して手際よく作っていく。

「……手慣れてんな」

「……まぁ、基本的に家事炊飯は僕が担当してましたし、慣れました」

「……そうか」

 アベルさんは何故か私に引っ付いてるし、シリウスさんは近くで私をジッと睨んでる。
 私が何をしたってんだよ……。

「……おい、それは何だ?」

「? それ?」

「その火のついた奴だ」

「あぁ、ガスコンロですか?」

「ガス、コンロ……?」

 あぁそうか……。
 この世界だと釜戸だったから、ガスコンロの事知らないんだった……。

「それはどこから持ってきた?」

「……神の御加護です」

「神の?イシス神か?」

「まぁ、そうですね。魔力を差し出す代わりに、色々な物を貰っているのです。このガスコンロもフライパンも、魔力を差し出したから貰えたのです」

「ほう……それは俺でも出来るのか?」

「さぁ?どうなんでしょう?御加護と言っても、与えるかどうかはイシス神が決める事ですし……」

「ハッ!ご最もだ」

 そこから暫く、シリウスさんとは特に話す事がなく私は黙々と晩御飯を作り続けた。
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