12 / 34
EPISODE 12「お手伝い」
しおりを挟む
side アメ
《__________。_______》
……誰?
《__________》
貴方は誰?
何で私と同じ姿をしているの?
《_________。_______て》
口をパクパクして……。
私に何を伝えたいの?
《______。____を見つけて》
?
何を見つければいいの?
雑音が入って、聞こえないよ。
《お願い、灯万里……。______を見つけて》
______________________________
____________________
__________
「……っ!」
目を覚ます。
目の前にあったのは、無機質な天井だった。
「ああ、起きたのね!」
女性の声……と言うよりも、男性の声を少し高めにしたような声が聞こえた。
声のした方を見ると、空色の長髪と薄緑の目を持つ一人の女性(?)が椅子に座って私の方を見ていた。
「目を覚まして良かったわ。貴方、昨日アルに背負われて帰ってきてから、眠ったままだったのよ?」
ああ、思い出した。
確か昨日、依頼を自由組合に提出しようと帰ろうとした時に、息苦しさが襲ってきたんだ。
アル……っていうのが誰なのか分からないが、お礼を言っておかないと。
「えっと……ありがとうございます」
「ふふふっ、お礼はアルに言ってあげて?昨日から、ずっと心配してたわよ?」
「! 分かりました。あの……そのアルという方は……?」
「アルなら、今はシリウスさんの手伝いをしてるんじゃないかしら?お昼時だからね、キッチンに居ると思うわよ?」
「ありがとうございます。行ってみますね」
「行ってらっしゃ~い♪」
ベッドから降りて、部屋を出ていった。
キッチンは一度行った事あるから、道順は覚えている。
そういえばさっきの人の名前、聞いてなかった……。
次会えた時に聞いてみよう。
暫く歩いて、キッチンについた。
少し覗き込むと、シリウスさんと数人の屈強な男達が料理をしていた。
どの人がアルさんなんだ?
キョロキョロと探していると、少し暗くなった。
少し上を向いてみると、そこに立っていたのはラフな格好をしたアベルさんだった。
「何やってんだ?お前……」
「あ……アベルさん、アル?っていう人探してるんですけど……」
「アル?……アレッサンドロか?おい、アレッサンドロ!アメが呼んでる!」
「はいは~い!」
元気な声が聞こえて、駆け寄ってきたのは赤髪の男だった。
この人がアルさんか?
「あの……」
「あっ!アメ、起きたんだ!良かった~、あのまま起きなかったらどうしようかと思ってたよ~」
マイペースな人なのかな?
まぁ、ともかくお礼を言わないと……。
「えと……アレッサンドロ、さん?その、助けていただきありがとうございます……」
「あ~、良いの良いの!アメが無事なら、それで良いんだよ」
アルさんもとい、アレッサンドロさんはフニャリと笑った。
あ……この人、絶対に女の子に勘違いさせてしまうタイプの人だ……。
色々と不安だぞ、この人……。
「そういえば、一昨日ぐらいから入ったから名乗ってなかったな!俺はアレッサンドロ・アレクサンダー。皆から、“アル”って呼ばれてる。アメもそう呼んでくれると嬉しい!」
「……アル、さん」
「さん付けはしなくていいが……。まぁ、慣れていけば良いだろう!宜しくな、アメ!」
「よろしくお願いします」
「暇なら、昼飯作るの手伝ってくれよ」と彼はまた、キッチンに戻っていく。
そういえば、寮父としての仕事が全然出来ていないや。
何かしら出来れば良いんだけど……。
「フンッ!お前が来た所で、何にも変わらんさ」
シリウスさんの小言にはもう慣れてしまった。
小言を言われるのはいつもの事だったから、もう特に気にする事はなくなってきている。
「シリウスさんがごめんな?数年前まではあんな性格じゃないんだ……」
アルさんがこっそりと耳打ちしてくる。
数年前……。小鬼族狂行軍の時からか?
まぁ、過去に起きた事をあーだこーだ言うつもりはないけどな。
「あの、今日のお昼は……」
「スープとドラゴンの肉を焼いたのとパンだ」
「……食事ってこんなに極端な物でしたっけ?」
「飯って大体、焼くか茹でるぐらいだからな~。人数分作るのは、一人じゃ時間がかかるんだよ」
「……この騎士団寮に居るのは何人なんですか?」
「そうだな~、大体……200人ぐらいか?」
「250人だ。間違えるな」
「はぁい」
私の質問にアルさんが答えると、それを否定するようにシリウスさんが答えた。
250人か……。
うちの小中高一貫学校は、全校生徒500人は超えてたかなぁ?
その半分くらいか。
その分の食事を作る食堂のおばちゃん達、マジすげぇ……。
私は手を動かしながら、動かせる範囲で目を動かす。
キッチンの設備としては申し分ないけど、机の上や入れ物の中には色んな物が散乱していて、何をどこに置いたのかが分からなくなっている。
時間がある時に掃除でもするか……。
「なぁ、アメ……」
「ん?アベルさん、どうしました?」
「……また、あれ作ってくれるか?」
「あれ? ああ、良いですよ。また僕の部屋に来てください。用意します」
「! ……おう」
アベルさん、サンドウィッチ気に入ったのかな?
後で何種類か用意しとこ……。
「……ねぇ、副団長が言ってたあれって何?」
「え……?」
「あっ、それ俺も気になる!何なの?」
「何何?何かあるの?」
アベルさんに言われた後、アルさんを含む団員達が私の周りに集まり始めた。
アベルさんは“やっちまった……”と言うように、顔を顰めた。
「あ……えっと、“サンドウィッチ”っていう奴なんですけど……」
「さんどうぃっち……?」
「……何だそれ?」
あ、これ説明が面倒な奴だ……。
「あ~……。この後、やる事あるんでその後で良いなら作りますが……」
「「お願いします!」」
私の部屋に来るのは何人になるのだろうか?
《__________。_______》
……誰?
《__________》
貴方は誰?
何で私と同じ姿をしているの?
《_________。_______て》
口をパクパクして……。
私に何を伝えたいの?
《______。____を見つけて》
?
何を見つければいいの?
雑音が入って、聞こえないよ。
《お願い、灯万里……。______を見つけて》
______________________________
____________________
__________
「……っ!」
目を覚ます。
目の前にあったのは、無機質な天井だった。
「ああ、起きたのね!」
女性の声……と言うよりも、男性の声を少し高めにしたような声が聞こえた。
声のした方を見ると、空色の長髪と薄緑の目を持つ一人の女性(?)が椅子に座って私の方を見ていた。
「目を覚まして良かったわ。貴方、昨日アルに背負われて帰ってきてから、眠ったままだったのよ?」
ああ、思い出した。
確か昨日、依頼を自由組合に提出しようと帰ろうとした時に、息苦しさが襲ってきたんだ。
アル……っていうのが誰なのか分からないが、お礼を言っておかないと。
「えっと……ありがとうございます」
「ふふふっ、お礼はアルに言ってあげて?昨日から、ずっと心配してたわよ?」
「! 分かりました。あの……そのアルという方は……?」
「アルなら、今はシリウスさんの手伝いをしてるんじゃないかしら?お昼時だからね、キッチンに居ると思うわよ?」
「ありがとうございます。行ってみますね」
「行ってらっしゃ~い♪」
ベッドから降りて、部屋を出ていった。
キッチンは一度行った事あるから、道順は覚えている。
そういえばさっきの人の名前、聞いてなかった……。
次会えた時に聞いてみよう。
暫く歩いて、キッチンについた。
少し覗き込むと、シリウスさんと数人の屈強な男達が料理をしていた。
どの人がアルさんなんだ?
キョロキョロと探していると、少し暗くなった。
少し上を向いてみると、そこに立っていたのはラフな格好をしたアベルさんだった。
「何やってんだ?お前……」
「あ……アベルさん、アル?っていう人探してるんですけど……」
「アル?……アレッサンドロか?おい、アレッサンドロ!アメが呼んでる!」
「はいは~い!」
元気な声が聞こえて、駆け寄ってきたのは赤髪の男だった。
この人がアルさんか?
「あの……」
「あっ!アメ、起きたんだ!良かった~、あのまま起きなかったらどうしようかと思ってたよ~」
マイペースな人なのかな?
まぁ、ともかくお礼を言わないと……。
「えと……アレッサンドロ、さん?その、助けていただきありがとうございます……」
「あ~、良いの良いの!アメが無事なら、それで良いんだよ」
アルさんもとい、アレッサンドロさんはフニャリと笑った。
あ……この人、絶対に女の子に勘違いさせてしまうタイプの人だ……。
色々と不安だぞ、この人……。
「そういえば、一昨日ぐらいから入ったから名乗ってなかったな!俺はアレッサンドロ・アレクサンダー。皆から、“アル”って呼ばれてる。アメもそう呼んでくれると嬉しい!」
「……アル、さん」
「さん付けはしなくていいが……。まぁ、慣れていけば良いだろう!宜しくな、アメ!」
「よろしくお願いします」
「暇なら、昼飯作るの手伝ってくれよ」と彼はまた、キッチンに戻っていく。
そういえば、寮父としての仕事が全然出来ていないや。
何かしら出来れば良いんだけど……。
「フンッ!お前が来た所で、何にも変わらんさ」
シリウスさんの小言にはもう慣れてしまった。
小言を言われるのはいつもの事だったから、もう特に気にする事はなくなってきている。
「シリウスさんがごめんな?数年前まではあんな性格じゃないんだ……」
アルさんがこっそりと耳打ちしてくる。
数年前……。小鬼族狂行軍の時からか?
まぁ、過去に起きた事をあーだこーだ言うつもりはないけどな。
「あの、今日のお昼は……」
「スープとドラゴンの肉を焼いたのとパンだ」
「……食事ってこんなに極端な物でしたっけ?」
「飯って大体、焼くか茹でるぐらいだからな~。人数分作るのは、一人じゃ時間がかかるんだよ」
「……この騎士団寮に居るのは何人なんですか?」
「そうだな~、大体……200人ぐらいか?」
「250人だ。間違えるな」
「はぁい」
私の質問にアルさんが答えると、それを否定するようにシリウスさんが答えた。
250人か……。
うちの小中高一貫学校は、全校生徒500人は超えてたかなぁ?
その半分くらいか。
その分の食事を作る食堂のおばちゃん達、マジすげぇ……。
私は手を動かしながら、動かせる範囲で目を動かす。
キッチンの設備としては申し分ないけど、机の上や入れ物の中には色んな物が散乱していて、何をどこに置いたのかが分からなくなっている。
時間がある時に掃除でもするか……。
「なぁ、アメ……」
「ん?アベルさん、どうしました?」
「……また、あれ作ってくれるか?」
「あれ? ああ、良いですよ。また僕の部屋に来てください。用意します」
「! ……おう」
アベルさん、サンドウィッチ気に入ったのかな?
後で何種類か用意しとこ……。
「……ねぇ、副団長が言ってたあれって何?」
「え……?」
「あっ、それ俺も気になる!何なの?」
「何何?何かあるの?」
アベルさんに言われた後、アルさんを含む団員達が私の周りに集まり始めた。
アベルさんは“やっちまった……”と言うように、顔を顰めた。
「あ……えっと、“サンドウィッチ”っていう奴なんですけど……」
「さんどうぃっち……?」
「……何だそれ?」
あ、これ説明が面倒な奴だ……。
「あ~……。この後、やる事あるんでその後で良いなら作りますが……」
「「お願いします!」」
私の部屋に来るのは何人になるのだろうか?
0
お気に入りに追加
73
あなたにおすすめの小説
【完結】身売りした妖精姫は氷血公爵に溺愛される
鈴木かなえ
恋愛
第17回恋愛小説大賞にエントリーしています。
レティシア・マークスは、『妖精姫』と呼ばれる社交界随一の美少女だが、実際は亡くなった前妻の子として家族からは虐げられていて、過去に起きたある出来事により男嫌いになってしまっていた。
社交界デビューしたレティシアは、家族から逃げるために条件にあう男を必死で探していた。
そんな時に目についたのが、女嫌いで有名な『氷血公爵』ことテオドール・エデルマン公爵だった。
レティシアは、自分自身と生まれた時から一緒にいるメイドと護衛を救うため、テオドールに決死の覚悟で取引をもちかける。
R18シーンがある場合、サブタイトルに※がつけてあります。
ムーンライトで公開してあるものを、少しずつ改稿しながら投稿していきます。
前世で処刑された聖女、今は黒薬師と呼ばれています
矢野りと
恋愛
旧題:前世で処刑された聖女はひっそりと生きていくと決めました〜今世では黒き薬師と呼ばれています〜
――『偽聖女を処刑しろっ!』
民衆がそう叫ぶなか、私の目の前で大切な人達の命が奪われていく。必死で神に祈ったけれど奇跡は起きなかった。……聖女ではない私は無力だった。
何がいけなかったのだろうか。ただ困っている人達を救いたい一心だっただけなのに……。
人々の歓声に包まれながら私は処刑された。
そして、私は前世の記憶を持ったまま、親の顔も知らない孤児として生まれ変わった。周囲から見れば恵まれているとは言い難いその境遇に私はほっとした。大切なものを持つことがなによりも怖かったから。
――持たなければ、失うこともない。
だから森の奥深くでひっそりと暮らしていたのに、ある日二人の騎士が訪ねてきて……。
『黒き薬師と呼ばれている薬師はあなたでしょうか?』
基本はほのぼのですが、シリアスと切なさありのお話です。
※この作品の設定は架空のものです。
※一話目だけ残酷な描写がありますので苦手な方はご自衛くださいませ。
※感想欄のネタバレ配慮はありません(._.)
【R18】人気AV嬢だった私は乙ゲーのヒロインに転生したので、攻略キャラを全員美味しくいただくことにしました♪
奏音 美都
恋愛
「レイラちゃん、おつかれさまぁ。今日もよかったよ」
「おつかれさまでーす。シャワー浴びますね」
AV女優の私は、仕事を終えてシャワーを浴びてたんだけど、石鹸に滑って転んで頭を打って失神し……なぜか、乙女ゲームの世界に転生してた。
そこで、可愛くて美味しそうなDKたちに出会うんだけど、この乙ゲーって全対象年齢なのよね。
でも、誘惑に抗えるわけないでしょっ!
全員美味しくいただいちゃいまーす。
私、異世界で監禁されました!?
星宮歌
恋愛
ただただ、苦しかった。
暴力をふるわれ、いじめられる毎日。それでも過ぎていく日常。けれど、ある日、いじめっ子グループに突き飛ばされ、トラックに轢かれたことで全てが変わる。
『ここ、どこ?』
声にならない声、見たこともない豪奢な部屋。混乱する私にもたらされるのは、幸せか、不幸せか。
今、全ての歯車が動き出す。
片翼シリーズ第一弾の作品です。
続編は『わたくし、異世界で婚約破棄されました!?』ですので、そちらもどうぞ!
溺愛は結構後半です。
なろうでも公開してます。
西谷夫妻の新婚事情~元教え子は元担任教師に溺愛される~
雪宮凛
恋愛
結婚し、西谷明人の姓を名乗り始めて三か月。舞香は今日も、新妻としての役目を果たそうと必死になる。
元高校の担任教師×元不良女子高生の、とある新婚生活の一幕。
※ムーンライトノベルズ様にも、同じ作品を転載しています。
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる