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EPISODE 12「お手伝い」

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 side  アメ

《__________。_______》

 ……誰?

《__________》

 貴方あなたは誰?
 何で私と同じ姿をしているの?

《_________。_______て》

 口をパクパクして……。
 私に何を伝えたいの?

《______。____を見つけて》

 ?
 何を見つければいいの?
 雑音が入って、聞こえないよ。

《お願い、灯万里ひまり……。______を見つけて》

______________________________
____________________
__________

「……っ!」

 目を覚ます。
 目の前にあったのは、無機質な天井だった。

「ああ、起きたのね!」

 女性の声……と言うよりも、男性の声を少し高めにしたような声が聞こえた。
 声のした方を見ると、空色の長髪と薄緑の目を持つ一人の女性(?)が椅子に座って私の方を見ていた。

「目を覚まして良かったわ。貴方あなた、昨日アルに背負しょわれて帰ってきてから、眠ったままだったのよ?」

 ああ、思い出した。
 確か昨日、依頼クエスト自由組合ギルドに提出しようと帰ろうとした時に、息苦しさが襲ってきたんだ。
 アル……っていうのが誰なのか分からないが、お礼を言っておかないと。

「えっと……ありがとうございます」

「ふふふっ、お礼はアルに言ってあげて?昨日から、ずっと心配してたわよ?」

「! 分かりました。あの……そのアルという方は……?」

「アルなら、今はシリウスさんの手伝いをしてるんじゃないかしら?お昼時だからね、キッチンに居ると思うわよ?」

「ありがとうございます。行ってみますね」

「行ってらっしゃ~い♪」

 ベッドから降りて、部屋を出ていった。
 キッチンは一度行った事あるから、道順は覚えている。
 そういえばさっきの人の名前、聞いてなかった……。
 次会えた時に聞いてみよう。
 暫く歩いて、キッチンについた。
 少し覗き込むと、シリウスさんと数人の屈強な男達が料理をしていた。
 どの人がアルさんなんだ?
 キョロキョロと探していると、少し暗くなった。
 少し上を向いてみると、そこに立っていたのはラフな格好をしたアベルさんだった。

「何やってんだ?お前……」

「あ……アベルさん、アル?っていう人探してるんですけど……」

「アル?……アレッサンドロか?おい、アレッサンドロ!アメが呼んでる!」

「はいは~い!」

 元気な声が聞こえて、駆け寄ってきたのは赤髪の男だった。
 この人がアルさんか?

「あの……」

「あっ!アメ、起きたんだ!良かった~、あのまま起きなかったらどうしようかと思ってたよ~」

 マイペースな人なのかな?
 まぁ、ともかくお礼を言わないと……。

「えと……アレッサンドロ、さん?その、助けていただきありがとうございます……」

「あ~、良いの良いの!アメが無事なら、それで良いんだよ」

 アルさんもとい、アレッサンドロさんはフニャリと笑った。
 あ……この人、絶対に女の子に勘違いさせてしまうタイプの人だ……。
 色々と不安だぞ、この人……。

「そういえば、一昨日おとといぐらいから入ったから名乗ってなかったな!俺はアレッサンドロ・アレクサンダー。皆から、“アル”って呼ばれてる。アメもそう呼んでくれると嬉しい!」

「……アル、さん」

「さん付けはしなくていいが……。まぁ、慣れていけば良いだろう!宜しくな、アメ!」

「よろしくお願いします」

 「暇なら、昼飯作るの手伝ってくれよ」と彼はまた、キッチンに戻っていく。
 そういえば、寮父としての仕事が全然出来ていないや。
 何かしら出来れば良いんだけど……。

「フンッ!お前が来た所で、何にも変わらんさ」

 シリウスさんの小言にはもう慣れてしまった。
 小言を言われるのはいつもの事だったから、もう特に気にする事はなくなってきている。

「シリウスさんがごめんな?数年前まではあんな性格じゃないんだ……」

 アルさんがこっそりと耳打ちしてくる。
 数年前……。小鬼族ゴブリン狂行軍スタンビートの時からか?
 まぁ、過去に起きた事をあーだこーだ言うつもりはないけどな。

「あの、今日のお昼は……」

「スープとドラゴンの肉を焼いたのとパンだ」

「……食事ってこんなに極端な物でしたっけ?」

「飯って大体、焼くか茹でるぐらいだからな~。人数分作るのは、一人じゃ時間がかかるんだよ」

「……この騎士団寮に居るのは何人なんですか?」

「そうだな~、大体……200人ぐらいか?」

「250人だ。間違えるな」

「はぁい」

 私の質問にアルさんが答えると、それを否定するようにシリウスさんが答えた。
 250人か……。
 うちの小中高一貫学校は、全校生徒500人は超えてたかなぁ?
 その半分くらいか。
 その分の食事を作る食堂のおばちゃん達、マジすげぇ……。
 私は手を動かしながら、動かせる範囲で目を動かす。
 キッチンの設備としては申し分ないけど、机の上や入れ物の中には色んな物が散乱していて、何をどこに置いたのかが分からなくなっている。
 時間がある時に掃除でもするか……。

「なぁ、アメ……」

「ん?アベルさん、どうしました?」

「……また、作ってくれるか?」

「あれ? ああ、良いですよ。また僕の部屋に来てください。用意します」

「! ……おう」

 アベルさん、サンドウィッチ気に入ったのかな?
 後で何種類か用意しとこ……。

「……ねぇ、副団長が言ってたって何?」

「え……?」

「あっ、それ俺も気になる!何なの?」

「何何?何かあるの?」

 アベルさんに言われた後、アルさんを含む団員達が私の周りに集まり始めた。
 アベルさんは“やっちまった……”と言うように、顔をしかめた。

「あ……えっと、“サンドウィッチ”っていう奴なんですけど……」

「さんどうぃっち……?」

「……何だそれ?」

 あ、これ説明が面倒な奴だ……。

「あ~……。この後、やる事あるんでその後で良いなら作りますが……」

「「お願いします!」」

 私の部屋に来るのは何人になるのだろうか?
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