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繰り返される悲劇
4/5、金曜日
しおりを挟む「三間さん! 晴さん!」
頭が真っ白になり、通話終了と表示されているにも関わらず何度も呼びかけてしまうくらいには、冷静な判断ができなくなっていた。そのことに気づき、着信履歴に戻って、再度かけ直してみる。指が震えて、うまく発信ボタンが押せない。
何度やっても同じだった。「電源が入っていないか、電波の届かない場所に……」という音声ガイダンスに繋がる。
――携帯を落として壊れたとか、そういうことだよね?
そう考える一方で、吐きそうになるほどの胸騒ぎが、そうじゃないと激しく警鐘を打ち鳴らしている。
あの呻き声や何かがぶつかる音は、三間の身に何かあったとしか思えない。
携帯が繋がらないということは、もしかしたら、救急車を呼びたくても呼べない状況かもしれない。
――どうしよう。僕がかわりに救急車を呼んだほうがいいんだろうか……。でも、呼ぶにしても、どこに来てもらえばいいんだ?
今いる場所の手掛かりになるようなことを何か言ってなかったか。僕は必死に三間との会話を思い返す。
――たしか……テレビ局でインタビューの収録があったけど、ちょうど終わったところって
……でも、どこのテレビ局だ?
その瞬間、ふと、何かが引っかかった。
『三間さんはその日、テレビ局でインタビューの収録があるそうなので、それが終わってからなら少し時間を取れるそうです』
随分と昔に聞いた誰かの言葉が、脳裏をよぎったのだ。
そう言ったのは確か…………、一度目の人生の時のマネージャーだった……。
――もしかして、今日って……。
胸騒ぎがはっきりと嫌な予感へと変わり、急ぎスマホの画面を見る。
表示させた最初の画面には、『4/5、金曜日』と表示されていた。
――まさか。
まさか、まさか、まさか――――!
体中の血液が一気に足元に引いていく感覚がする。
眩暈を覚え、僕はぺたんとベッドに尻もちをついた。
日付までは覚えていない。でも、4月の最初の金曜日だった。
一度目の人生で、僕が三間に会うためにテレビ局に行き、階段から突き落とされたのも。
彼が電話に出た直後の、ガチャ、という鍵を回すような音と、ギギギッ、と金属の擦れるような音が、記憶の中の、滑りの悪かった非常階段のドアと重なる。
何故、今度は三間が?
なぜ?
どうして?
疑問が膨れ上がるが、でもそれ以上に、彼が一度目の僕と同じ状況になっているのでは、という恐怖のほうが強かった。
僕の頭の中では、三間があのテレビ局の非常階段で何者かに突き落とされ、踊り場に倒れていることが、既に確定事項になってしまっている。推測で救急車を呼ぶことの害悪について判断できる冷静さは持ち合わせてはいなかった。
119番に電話をかけ、一度目の人生で三間に会いに行ったテレビ局の名前を告げ、電話中に相手が非常階段から転げ落ちたことを伝えると、部屋を飛び出した。
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