17 / 156
今度は兄貴肌?
おから効果(?)
しおりを挟む「おからって豆腐作るときに出る粕のことだよな? 朝昼晩食べて飽きねーのか?」
僕の苛立ちをを知ってか知らずか。三間は質問を畳みかけてくる。その口調があまりに自然体だったから。完全に毒気を抜かれてしまった。
意図はわからないけど、それを知りたがっていることは本当のようだ。
「それは……、料理で工夫すれば、それなりに。ご飯や小麦粉の代わりにもなりますし。ネットを見れば、色んな調理法が載っていますよ」
三間は顎に指をあて、ふむ、と唸った。
「ネットに書いてあっても、俺は料理しねーからな」
彼女に作ってもらえば、と言おうとし、言葉を飲み込む。三間の彼女は人気女優の中島佑美だった。料理をする時間なんてないだろう。
「監督から、撮影までに筋肉を落としてほしいって言われてるんだが。つけるよりも落とすほうが難しい」
僕は、はぁ、と曖昧な相槌を返した。
飲み会の帰りに二次会には行かずジムに来たのは、僕とは真逆の理由ということか。
確かに戦時中というのは僕の高校時代以上に食べる物に困っていた時代なので、三間のように筋骨たくましすぎる男がいることに違和感を感じる人もいるかもしれない。
「年末から時間があるときには有酸素運動をしているが、今のところ効果が見られない」
「はぁ」
三間が一方的に話を続け、僕は聞き役に徹する。
「食事を減らすべきなんだろうが、腹が減るとイライラするから、演技に影響が出ても困る」
「はぁ」
「おからで痩せられるって言うんなら、それを試してみたい」
「はぁ」
「だから、俺に飯を作ってくれないか?」
「はぁ。…………って、え……? えええ?」
思わず素っ頓狂な声を上げてしまい、慌てて口に手を当てた。きょろきょろと辺りを見回す。幸い近くには人がいないので、大丈夫そうだ。
「飯を作ってくれるんなら、材料費とここの会費は俺が出す。俺の家はここから近いから、演技リハが終わった後、ここでトレーニングしてうちに来ればいい。飯食ったら家まで車で送って行く」
「いや、でも……。そういうわけには……」
「他にいい方法が思いつかないから、協力してくれると助かる。なんなら飯食った後、台本読みに付き合ってもいい。人助けと思って、お願いします」
深々と頭を下げられ、僕は一層焦った。
「あ、あの、頭を上げてください!」
一歩踏み出し、二歩分あった距離を半分に詰める。その上で、念のため声のトーンを落とした。
トレーニングジムの会費を払ってくれることと、台本読みに付き合ってくれることはめちゃくちゃありがたい。相手が三間でさえなければ喜んで話に飛びついていただろう。だが、相手は三間だ。
1,685
お気に入りに追加
3,465
あなたにおすすめの小説

新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
※沢山のお気に入り登録ありがとうございます。深く感謝申し上げます。

王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
*
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが吃驚して憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編をはじめましたー!
他のお話を読まなくても大丈夫なようにお書きするので、気軽に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。

【完結】可愛いあの子は番にされて、もうオレの手は届かない
天田れおぽん
BL
劣性アルファであるオズワルドは、劣性オメガの幼馴染リアンを伴侶に娶りたいと考えていた。
ある日、仕えている王太子から名前も知らないオメガのうなじを噛んだと告白される。
運命の番と王太子の言う相手が落としていったという髪飾りに、オズワルドは見覚えがあった――――
※他サイトにも掲載中
★⌒*+*⌒★ ☆宣伝☆ ★⌒*+*⌒★
「婚約破棄された不遇令嬢ですが、イケオジ辺境伯と幸せになります!」
が、レジーナブックスさまより発売中です。
どうぞよろしくお願いいたします。m(_ _)m

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる