2 / 4
残された者達2
しおりを挟む
居住地区の原生生物『イーター』掃討作戦から実に2日経過した。
僅かな食糧と大量の武器弾薬そして、『エグゾスーツ』を残された兵士と開拓後に居住していた民間人達は山岳地帯の要塞化された軍事基地に住んでいた。
「なんだが日に日に飯の量が減ってきてるな……」
「俺達軍人は仕事がある分飯も優遇されるのだから有難いと思え。 ついこないだ赤ん坊が兄妹2人共病死したばっかなんだぞ」
食糧の配給が始まっていたとき、マリノフと彼の率いる『第4中隊』の隊員の『サリー』が共に食事を取っていた。
プレートに乗せられていたのは少ない麦粥の缶詰と小さなパン、そしてデザートのつもりなのか缶詰のパイナップルが3枚。
兵士の運動量を鑑みれば明らかに足りない量ではあるのだが、民間人はこれより更に少ない食糧での生活を強いられているのだ。
量が圧倒的に少ないので麦粥にパンなど普段から食べる量が人一倍多いのもあってあっという間に食べ切ってしまい、マリノフは残されたパイナップルを惜しそうに少しずつ齧っていた。
他の部隊の兵士は皆食い終わって体力を消耗しないように見張り番以外はテントの中で眠っている。
「……第三世代エグゾスーツがあれば、こんな戦況も覆せたのかね」
サリーは食べ終わったプレートを置くと不意にそう呟くように言った。
『第三世代エグゾスーツ』
惑星開拓時代に東欧連合国軍が公表した新型機だ。
公表したと言っても開発中の機体そのものを出したのではなくあくまでその想定される性能やコンセプトについてが知らされた。
この謎だらけの兵器に対して軍はこう言っていた。
『この兵器はいずれやって来る全ての脅威に対して対抗出来る』
しかし、イーターの発生と連合国の連中が宇宙に逃げてからは続報は無い。
「確かフライトユニットを装備せずに高高度を飛行する能力があり、現行のエグゾスーツを遥かに超える火力と機動力を有する……だったか」
後ろから迫って来ている何者かに気付く事もなくマリノフは話し続ける。
「構想段階でしかなかった兵器が助けになど来てくれるはずも無い。 諦めてデカブツ相手に豆鉄砲を振り回すしか──」
「ギッ!」
「うおっ!?」
唐突に、マリノフの体が前屈みになる。
背中には何かが抱きついている。
その何かは一度マリノフから離れると目の前まで這ってきた。
レインポンチョを着ており、外見は分からない。
マリノフは溜息をつきながらレインポンチョのフードを下ろした。
中にいたのは、全裸の少女だった。
体付きはだいたい15~6歳。
貧相という訳でもなく、かといって主張が激しいということも無い慎ましい体付きをしている。
先程まで水溜まりで遊んでいたのか何も履いてない生足に付いた水滴が恒星の光で照っていた。
そして彼女の肌は病的を通り越して最早そういう人種なのかと思うぐらいに肌が青白い。
髪の毛も肌の色と同じく白髪だ。
「ベリィ、今までどこいってたんだ」
ベリィと呼ばれた少女はマリノフに頭を撫でられるとまるで甘えるような鳴き声を上げて擦り寄ってきた。
彼女はこの星で彼らが見つけた唯一の人型生物であった。
僅かな食糧と大量の武器弾薬そして、『エグゾスーツ』を残された兵士と開拓後に居住していた民間人達は山岳地帯の要塞化された軍事基地に住んでいた。
「なんだが日に日に飯の量が減ってきてるな……」
「俺達軍人は仕事がある分飯も優遇されるのだから有難いと思え。 ついこないだ赤ん坊が兄妹2人共病死したばっかなんだぞ」
食糧の配給が始まっていたとき、マリノフと彼の率いる『第4中隊』の隊員の『サリー』が共に食事を取っていた。
プレートに乗せられていたのは少ない麦粥の缶詰と小さなパン、そしてデザートのつもりなのか缶詰のパイナップルが3枚。
兵士の運動量を鑑みれば明らかに足りない量ではあるのだが、民間人はこれより更に少ない食糧での生活を強いられているのだ。
量が圧倒的に少ないので麦粥にパンなど普段から食べる量が人一倍多いのもあってあっという間に食べ切ってしまい、マリノフは残されたパイナップルを惜しそうに少しずつ齧っていた。
他の部隊の兵士は皆食い終わって体力を消耗しないように見張り番以外はテントの中で眠っている。
「……第三世代エグゾスーツがあれば、こんな戦況も覆せたのかね」
サリーは食べ終わったプレートを置くと不意にそう呟くように言った。
『第三世代エグゾスーツ』
惑星開拓時代に東欧連合国軍が公表した新型機だ。
公表したと言っても開発中の機体そのものを出したのではなくあくまでその想定される性能やコンセプトについてが知らされた。
この謎だらけの兵器に対して軍はこう言っていた。
『この兵器はいずれやって来る全ての脅威に対して対抗出来る』
しかし、イーターの発生と連合国の連中が宇宙に逃げてからは続報は無い。
「確かフライトユニットを装備せずに高高度を飛行する能力があり、現行のエグゾスーツを遥かに超える火力と機動力を有する……だったか」
後ろから迫って来ている何者かに気付く事もなくマリノフは話し続ける。
「構想段階でしかなかった兵器が助けになど来てくれるはずも無い。 諦めてデカブツ相手に豆鉄砲を振り回すしか──」
「ギッ!」
「うおっ!?」
唐突に、マリノフの体が前屈みになる。
背中には何かが抱きついている。
その何かは一度マリノフから離れると目の前まで這ってきた。
レインポンチョを着ており、外見は分からない。
マリノフは溜息をつきながらレインポンチョのフードを下ろした。
中にいたのは、全裸の少女だった。
体付きはだいたい15~6歳。
貧相という訳でもなく、かといって主張が激しいということも無い慎ましい体付きをしている。
先程まで水溜まりで遊んでいたのか何も履いてない生足に付いた水滴が恒星の光で照っていた。
そして彼女の肌は病的を通り越して最早そういう人種なのかと思うぐらいに肌が青白い。
髪の毛も肌の色と同じく白髪だ。
「ベリィ、今までどこいってたんだ」
ベリィと呼ばれた少女はマリノフに頭を撫でられるとまるで甘えるような鳴き声を上げて擦り寄ってきた。
彼女はこの星で彼らが見つけた唯一の人型生物であった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
CREEPY ROSE:『5000億円の男』
生カス
SF
人生のどん底にいた、何一つとりえのない青年ハリこと、梁木緑郎(はりぎ ろくろう)は、浜辺を歩いていたところを何者かに誘拐されてしまう。
連れ去られた先は、男女比1:100。男性がモノのように扱われる『女性優位』の世界だった。
ハリはそんな世界で、ストリートキッズの少女、イトと出会う。
快楽と暴力、絶望と悔恨が蔓延る世界で繰り出される、ボーイミーツガールズストーリー。
※小説家になろう
https://ncode.syosetu.com/n4652hd/
No.5 トウトリノス
羽上帆樽
SF
別れると、出会い
仮想空間も、物語も、形式的にはすべて終わった。しかし、始まりが明確でない以上、終わりもまた明確でない。円周上にいるとき、向かい側は常に見える。
人工子宮
木森木林(きもりきりん)
SF
この小説は、産婦人科専門医・生殖医療専門医でもある筆者が、人工知能マッチングや人工子宮という架空設定を持ち込んでいますが、現在の産婦人科医療や不妊治療をベースに書きました。
昨今、結婚されない人も増え、また男女とも結婚が遅くなり、挙児を希望しても妊娠しにくいカップルも5組に1組と増えています。
妊娠しにくい原因は色々と考えられますが、「女性加齢」も原因になり、35歳くらいから妊娠率は低下し、流産率が上昇します。これは卵子数の減少と質的低下によるものと考えられます。
体外受精など生殖補助医療による出生児は29216万9797人であり、国内総出生児に対する割合は8.6%(11.6人に1人)になっています。
もちろん「妊娠出産しなければならない」ことはないのですが、「妊娠出産しやすい」「子育てしやすい」環境に向け、私達はどうしたらよいのでしょう?まずは、妊娠出産、不妊治療のことを知っていただきたいと書きました。
挿し絵は医学生時代からの友人「kinZoさん」が描いてくれました。ありがとう!
太陽の花が咲き誇る季節に。
陽奈。
SF
日本が誇る電波塔《東京スカイツリー》
それは人々の生活に放送として深く関わっていた。
平和に見える毎日。そんなある日事件は起こる。
無差別に破壊される江都東京。
運命を惑わされた少女の戦いが始まろうとしている。
イシュタル
平 一
SF
『女神、再臨。』
かつて人類の文明化を助けた、異星種族。
銀河系を分ける大戦の中、地球を訪れた目的は!?
長編『Lucifer(ルシファー)』第二章を、次の作品に感動して口語化しました。
イラスト:『千早』 https://www.pixiv.net/artworks/61620952
『如月千早』 https://www.pixiv.net/artworks/79171941
『アルベド』 https://www.pixiv.net/artworks/68033001
『不死者之王』 https://www.pixiv.net/artworks/100680706
『星を繋いで』 https://www.pixiv.net/artworks/96842614
『紫霧』 https://www.pixiv.net/artworks/93033388
『Lily』 https://www.pixiv.net/artworks/45203956
『百合姫』 https://www.pixiv.net/artworks/98922201
動画:『千早 kokoro』 https://www.nicovideo.jp/watch/sm5842944
(コメントは右下吹き出しをクリックで消えます)
『約束』 https://www.nicovideo.jp/watch/sm21988300
『悠久の旅人』 https://www.nicovideo.jp/watch/sm1375891
『月下儚美』 https://www.youtube.com/watch?v=3m0x-Xfi6Xg
『FairyTaleじゃいられない』 https://www.youtube.com/watch?v=3ZMdF3bhJR0
『M@STERPIECE』 https://www.youtube.com/watch?v=LULl-LJiRVw
素敵な刺激を与えてくれる、素敵な文化的作品に感謝します。
人類の歴史や神話を題材にした、壮大な物語が書きたいと思いました。
あくまでも星間帝国の興亡を描いた、SFです。
昔、私的な問題に悩みネカフェ通いを楽しみにしていた私は、
様々な動画に感動し、『古代の宇宙人』説による暗めの小説を書きました。
しかし動画の素晴らしい芸術性ゆえか、どんどん話が建設的になり、
とうとう社会に役立つ(と思う)文明論まで考えることができました。
ご興味がおありの方は『Lucifer』シリーズの他作品や、
『文明の星』シリーズのエッセイもご覧いただけましたら幸いです。
最後のひと押し
唄うたい
SF
医療アンドロイド【HA-03G】が精神治療を担当することになったのは、SNS上で「天使」と称される美しい女性だった。
※少し過激描写が含まれます。ご注意下さい。
※他サイトでも公開しています。
日本昔話村
たらこ飴
SF
オカルトマニアの唐沢傑は、ある日偶然元クラスメイトの権田幻之介と再会する。権田に家まで送ってくれと頼まれた唐沢は嫌々承諾するが、持ち前の方向音痴が炸裂し道に迷ってしまう。二人が迷い込んだところは、地図にはない場所ーーまるで日本昔話に出てくるような寂れた農村だった。
両親が若い頃に体験したことを元にして書いた話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる