1 / 28
第1話 忍者の修行は朝早い
しおりを挟む
「わわっ。寝坊した!」
わたし、芹沢真昼の朝は、たいてい慌ただしい。けど今日は、特別慌ただしかった。
それもそのはず。目が覚めて時計を見たら、起きる時間はとっくにすぎてたの。
早く起きないと、お父さんに大目玉食らっちゃうよ。
って言っても、学校に遅刻するってわけじやないの。外を見ると、まだ真っ暗。毎朝こんなに早く起きる小学五年生って、あんまりいないんじゃないかな。
「真昼ー、起きたかー」
「いま行くー」
お父さんの声に急かされながら、素早く着替える。
その格好なんだけど、黒い頭巾に、同じく全身真っ黒な着物。そして背中には刀を背負う。
忍者みたいって思った君、正解!
実は私のうちは代々忍者やってて、毎朝その修行をしてるの。
今日の修行は、家のどこかにいるお父さんを見つけ戦うこと。
普通に歩けばギィギィ鳴る木の廊下を音もなく走り、お父さんを探す。
茶の間の障子を開いても、お父さんの姿は無い。
けど、見えないからっていないとは限らないの。
「集中して、気配を感じとって……そこっ!」
着ていた忍び装束から取り出した手裏剣を、壁に向かって投げつける。
するとその瞬間、壁がフワッと動いて、その中から一人の男の人が出てきた。
「こんなにすぐに隠れ蓑を見破るとは。真昼よ、腕を上げたな」
黒い着物に頭巾っていう、私と同じ忍者スタイルのこの人が、私のお父さん。
今まで姿が見えなかったのは、隠れ蓑っていう壁と同じ色の布で体を覆って見にくくしてたからなんだ。
「だがいくら居場所を見つけても、それだけではどうにもならんぞ!」
お父さんはそう言うと、懐から巻物を取り出す。そしてその巻物を持ったまま叫ぶ。
「忍法、分身の術!」
次の瞬間、お父さんの体は四人に分裂して、わたしを取り囲んだ。
「じゃあわたしも。分身の術!」
お父さんと同じように、巻物を取り出し叫ぶ。
四人に増えた私とお父さんが、それぞれ手裏剣や刀を手に大激突!
って言いたいところだけど、それもほんの短い時間だった。私の分身はすぐに消えちゃって、対するお父さんのは、さらに二倍の八人に増えたんだ。
わたしも抵抗したけど、結局、八人のお父さんに取り押さえらて負けちゃった。
「隠れていたのをすぐに見つけられたのは良かったが、それからがダメだったな」
「うぅ~っ。もっと長く分身が使えたら。それか、火遁の術」
「真昼の分身は使える時間が短いから、もっとタイミングを考えて使うべきだったな。それと、火遁の術を使うには修行が足りないからダメだと言ってあるだろ」
「はーい」
「プロの忍者になるには、まだまだ修行が必要だな」
修行は勝ち負けだけじゃなくて、どうすればよかったかの反省まで含めての修行なの。
けどちょっと待って。今のお父さんの言葉の中に、どうしても聞き逃せないやつがあるんだけど。
「わたし、プロの忍者になるつもりはないよ」
「な、なにっ⁉」
あんぐりと口を開けて驚くお父さん。
あれ? そういえば、お父さんには言ってなかったっけ。
「だって、もう21世紀だよ。令和だよ。それなのに今どき忍者なんて、時代遅れじゃない」
「なっ……なっ……なっ……」
とたんにお父さんの顔が崩れて、崩れ落ちるみたいにガックリと膝を着いちゃった。
えっと……もしかして、まずいこと言っちゃった?
わたし、芹沢真昼の朝は、たいてい慌ただしい。けど今日は、特別慌ただしかった。
それもそのはず。目が覚めて時計を見たら、起きる時間はとっくにすぎてたの。
早く起きないと、お父さんに大目玉食らっちゃうよ。
って言っても、学校に遅刻するってわけじやないの。外を見ると、まだ真っ暗。毎朝こんなに早く起きる小学五年生って、あんまりいないんじゃないかな。
「真昼ー、起きたかー」
「いま行くー」
お父さんの声に急かされながら、素早く着替える。
その格好なんだけど、黒い頭巾に、同じく全身真っ黒な着物。そして背中には刀を背負う。
忍者みたいって思った君、正解!
実は私のうちは代々忍者やってて、毎朝その修行をしてるの。
今日の修行は、家のどこかにいるお父さんを見つけ戦うこと。
普通に歩けばギィギィ鳴る木の廊下を音もなく走り、お父さんを探す。
茶の間の障子を開いても、お父さんの姿は無い。
けど、見えないからっていないとは限らないの。
「集中して、気配を感じとって……そこっ!」
着ていた忍び装束から取り出した手裏剣を、壁に向かって投げつける。
するとその瞬間、壁がフワッと動いて、その中から一人の男の人が出てきた。
「こんなにすぐに隠れ蓑を見破るとは。真昼よ、腕を上げたな」
黒い着物に頭巾っていう、私と同じ忍者スタイルのこの人が、私のお父さん。
今まで姿が見えなかったのは、隠れ蓑っていう壁と同じ色の布で体を覆って見にくくしてたからなんだ。
「だがいくら居場所を見つけても、それだけではどうにもならんぞ!」
お父さんはそう言うと、懐から巻物を取り出す。そしてその巻物を持ったまま叫ぶ。
「忍法、分身の術!」
次の瞬間、お父さんの体は四人に分裂して、わたしを取り囲んだ。
「じゃあわたしも。分身の術!」
お父さんと同じように、巻物を取り出し叫ぶ。
四人に増えた私とお父さんが、それぞれ手裏剣や刀を手に大激突!
って言いたいところだけど、それもほんの短い時間だった。私の分身はすぐに消えちゃって、対するお父さんのは、さらに二倍の八人に増えたんだ。
わたしも抵抗したけど、結局、八人のお父さんに取り押さえらて負けちゃった。
「隠れていたのをすぐに見つけられたのは良かったが、それからがダメだったな」
「うぅ~っ。もっと長く分身が使えたら。それか、火遁の術」
「真昼の分身は使える時間が短いから、もっとタイミングを考えて使うべきだったな。それと、火遁の術を使うには修行が足りないからダメだと言ってあるだろ」
「はーい」
「プロの忍者になるには、まだまだ修行が必要だな」
修行は勝ち負けだけじゃなくて、どうすればよかったかの反省まで含めての修行なの。
けどちょっと待って。今のお父さんの言葉の中に、どうしても聞き逃せないやつがあるんだけど。
「わたし、プロの忍者になるつもりはないよ」
「な、なにっ⁉」
あんぐりと口を開けて驚くお父さん。
あれ? そういえば、お父さんには言ってなかったっけ。
「だって、もう21世紀だよ。令和だよ。それなのに今どき忍者なんて、時代遅れじゃない」
「なっ……なっ……なっ……」
とたんにお父さんの顔が崩れて、崩れ落ちるみたいにガックリと膝を着いちゃった。
えっと……もしかして、まずいこと言っちゃった?
1
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
がらくた屋 ふしぎ堂のヒミツ
三柴 ヲト
児童書・童話
『がらくた屋ふしぎ堂』
――それは、ちょっと変わった不思議なお店。
おもちゃ、駄菓子、古本、文房具、骨董品……。子どもが気になるものはなんでもそろっていて、店主であるミチばあちゃんが不在の時は、太った変な招き猫〝にゃすけ〟が代わりに商品を案内してくれる。
ミチばあちゃんの孫である小学6年生の風間吏斗(かざまりと)は、わくわく探しのため毎日のように『ふしぎ堂』へ通う。
お店に並んだ商品の中には、普通のがらくたに混じって『神商品(アイテム)』と呼ばれるレアなお宝もたくさん隠されていて、悪戯好きのリトはクラスメイトの男友達・ルカを巻き込んで、神商品を使ってはおかしな事件を起こしたり、逆にみんなの困りごとを解決したり、毎日を刺激的に楽しく過ごす。
そんなある日のこと、リトとルカのクラスメイトであるお金持ちのお嬢様アンが行方不明になるという騒ぎが起こる。
彼女の足取りを追うリトは、やがてふしぎ堂の裏庭にある『蔵』に隠された〝ヒミツの扉〟に辿り着くのだが、扉の向こう側には『異世界』や過去未来の『時空を超えた世界』が広がっていて――⁉︎
いたずら好きのリト、心優しい少年ルカ、いじっぱりなお嬢様アンの三人組が織りなす、事件、ふしぎ、夢、冒険、恋、わくわく、どきどきが全部詰まった、少年少女向けの現代和風ファンタジー。
スペクターズ・ガーデンにようこそ
一花カナウ
児童書・童話
結衣には【スペクター】と呼ばれる奇妙な隣人たちの姿が見えている。
そんな秘密をきっかけに友だちになった葉子は結衣にとって一番の親友で、とっても大好きで憧れの存在だ。
しかし、中学二年に上がりクラスが分かれてしまったのをきっかけに、二人の関係が変わり始める……。
なお、当作品はhttps://ncode.syosetu.com/n2504t/ を大幅に改稿したものになります。
改稿版はアルファポリスでの公開後にカクヨム、ノベルアップ+でも公開します。
イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~
友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。
全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。
わたしの婚約者は学園の王子さま!
久里
児童書・童話
平凡な女子中学生、野崎莉子にはみんなに隠している秘密がある。実は、学園中の女子が憧れる王子、漣奏多の婚約者なのだ!こんなことを奏多の親衛隊に知られたら、平和な学校生活は望めない!周りを気にしてこの関係をひた隠しにする莉子VSそんな彼女の態度に不満そうな奏多によるドキドキ学園ラブコメ。
ずっと、ずっと、いつまでも
JEDI_tkms1984
児童書・童話
レン
ゴールデンレトリバーの男の子
ママとパパといっしょにくらしている
ある日、ママが言った
「もうすぐレンに妹ができるのよ」
レンはとてもよろこんだ
だけど……
お姫様の願い事
月詠世理
児童書・童話
赤子が生まれた時に母親は亡くなってしまった。赤子は実の父親から嫌われてしまう。そのため、赤子は血の繋がらない女に育てられた。 決められた期限は十年。十歳になった女の子は母親代わりに連れられて城に行くことになった。女の子の実の父親のもとへ——。女の子はさいごに何を願うのだろうか。
カイイノキヲク
乾翔太
児童書・童話
【あらすじ】
中学二年生のソラは、人に話しかけることが得意ではない内気な女の子。そんなソラには、同じクラスで唯一仲が良い、山本ミサキという名の快活な友達が居た。
夏休みの前日。ソラとミサキは教室で、あるおまじないをする。ミサキいわく、そのおまじないは二人の友情がずっと続くおまじないであるということであった。
その後、ソラは見慣れぬ不気味な廃校に迷い込む。そこはと呼ばれる異空間で、と呼ばれる怪物の住処だった。
怪異に襲われてソラが絶体絶命のピンチに陥ったその時、幼い頃からソラが大切にしていた柴犬のぬいぐるみのポチ太が光り輝く。ソラを守りたいという強い気持ちを抱いたポチ太が、怪異に対抗できる力を持つという存在になったのだ。
さらにクラスメイトのリクトと、龍の神獣である輝龍丸も助けに訪れる。
リクトは輝龍丸と協力しながら、という怪異を浄化する仕事をしていた。
怪異とは強い未練を残したまま死んだ人間が怪物になった姿であり、浄化するには怪域のどこかにある記憶の核と呼ばれるものを見つける必要がある。そうリクトから説明を聞いたソラは、彼らと協力して記憶の核を探すことになるのであった。
――これは、少女たちが恐怖を乗り越え、過去の悲しみを断ち切る物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる