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サチさんとヒーさん
別れ
しおりを挟む私は今、サチさんとバイトの帰りでご飯食べていた。
向かい合わせに座る私たち。
「最近さぁ、ヒー残業多くて」
サチさんが言った。
「そうなんですか?忙しいんですね」
私は言う。
「うん。昨日なんてさ。結構遅くてさぁ。ご飯作って待ってるんだけど、すごいお腹すく」
サチさん、笑いながら言っていた。
昨日の夜は、ヒーさんは私と一緒にいた…。サチさん、ご飯食べないで待ってたんだ…。
昨日はなんか、すごい燃えちゃって、3回くらいえっちして、中だしもされちゃった。遅くなっちゃったから、ヒーさん急いで帰ってたのを覚えてる。
「そっかぁ。旦那さんの帰り遅いと大変ですね」
私は言った。
自分も食べないでお腹空かせて旦那さんの帰り待ってるなんて、きっと彼女はいい奥さんなんだと思う。
「うん。帰ってもヒー疲れててすぐ寝ちゃうし。前は、こんなんじゃなかったんだけどな…。冷めて行くって、こんな感じなのかな…」
寂しそうに言うサチさん。
「…………」
私はこの時、私とヒーさんが不倫を重ねた事で、夫婦仲に影響が出始めてる事に、気が付いた。
サチさん…私とヒーさんが不倫してて遅いなんて思ってもいないよね。私とヒーさんがえっちしてる時、サチさんご飯食べずに旦那さんの帰り待ってたなんて…。
寂しそうに彼女を目の前にしたこの時、すごい罪悪感が芽生えた。あれ、なんで私とヒーさんって、サチさんみたいないい人裏切ってあんな酷いことしてるんだっけって。私から誘ったんだけど…。
えっちしてる時って、興奮しちゃって頭飛んでるから、あんまりそんな事思わないんだけど。やっぱり、サチさん目の前にすると、悪いなって思う。我に帰るって言うか…。本当に私、酷いことしてるなって実感する。
最近、ヒーさんとも会いすぎてるし、ちょっと、もう会うのやめた方がいいかなって思った。
私は、こういう状況のえっちが異様に好きって言うか、性癖なだけで、別に夫婦二人の仲を壊したい訳でも、本当にヒーさんが好きな訳でもなかった。サチさんが嫌いな訳でもない。むしろサチさんは好きだし。ただ、そんなサチさんとの旦那さんとの不倫が、興奮するってだけで、本当に、ただそれだけだった。
サチさんの寂しそうな顔を見て、私は、急激に何かが冷めて行くのを感じた。
それから少し経って、またヒーさんから、連絡が来た。今日もアイちゃんに会いたいって。私は、会いに行った。
「ヒーさん。あの、今日は話したい事があって」
車でいつものように合流して、誰もいない公園の駐車場に車を止めた時、私は言った。
「どうした?」
私は、思ってる事を、素直に言った。
「サチさんと話して、ヒーさんが残業続きで、ご飯も食べないでいつも待ってるって言ってました。最近、残業も多いって、サチさんすごい寂しそうで…」
「……………」
「私、サチさん裏切って、ヒーさんとなんでこんな酷いことしてるんだっけって思っちゃって。私から誘って始まったんですけど、サチさんあんな顔させてるって思ったら」
私は、ただ思うがままに話してた。
ヒーさんは黙って聞いていた。
ヒーさんと私は、いつもだったらここでえっちしちゃってる。でもこの時は、そんな空気じゃなかった。なんだか、冷えきったような、現実に引き戻されたかのような、そんな雰囲気だった。
「そうだな…。家帰ったら、サチあいつ、食わずに待ってるよ。俺、アイちゃんと不倫してから帰って来てんのにな。最低だよなって、俺もずっと思ってた…でも、それでも止めらんなくて…」
ヒーさんか静かに言った。
二人で、こんなふうに冷静に話をするのは初めてかもしれない。
今まで、えっちな事ばっかで、まともに話をした事なんてなかった気がする。お互い、良くも悪くも体だけだった。
「私も、ごめんなさい…。サチさん、前はこんなんじゃなかったって、本当に寂しそうで…。もう、会うのやめましょう。本当にごめんなさい」
私は言った。
ヒーさんは、そんな私の言葉を、すんなりと受け入れた。
結局、私とヒーさんは、お互いを好きな訳じゃなくて、良くも悪くも体だけだった。興奮えっちにただハマっちゃってただけで、サチさんを好きな事はお互いに変わってなかったんだと思う。だから、こんなにもすんなりと、離れられる。
この日、私たちは、もうお互いに会わないって決めた。ラインも、互いのを消した。だからもう、連絡だって取れないようにした。
ヒーさん、私を家まで送ってくれた。
そして、ヒーさんはサチさんの下へと帰って行く。もう、頻繁な残業もなくなるはず。
それから、バイトでサチさんに会った。帰りにご飯食べに行ったら、なんだか最近、すごいヒーさんが優しいんだってニコニコしながら言ってた。帰りも早いみたいで、サチさんは、一時的に仕事が忙しかっただけみたいって言ってた。
ヒーさんは、元の奥さんに優しい旦那さんに戻ったんだ。
私はそれから、もうヒーさんに会うことはなかった。サチさんとは仲良かったから、たまにサチさんがヒーさんを呼ぼうとしたときもあったけど、私はそのときはなんだかんだ理由をつけて帰ったり、ヒーさんも、私がいる所に来るのは断ったりしてたみたいだった。
私とヒーさん、お互いに避けあっていたら、自然とサチさんは、ヒーさんを呼ぼうとしなくなった。
それから、半年くらいして、私はバイトをやめる事になるんだけど、サチさんとは仲良しなままだった。でも、何年かして少しずつ疎遠にはなって行っくんだけどね。
風の噂で、夫婦二人は今も仲良くやってるみたいだよ。
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サチさんとヒーさん おわり
読んでくれた方、ありがとうございました
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