9 / 47
本編
9話
しおりを挟む
引越しする前日、母は毎年恒例の町内婦人会の温泉旅行で不在だった。
ショウも引っ越す当日に母がいようといなかろうとあまり気にしていなかったが、母が旅行に行くことを少し渋っていた。
「でも毎年行ってるし、一年に一度の楽しみなんだから行って来いよ」
「うん、わかった…」
母はショウに説得されて温泉旅行へと旅立った。
「ショウ、ちょっといいかな?」
母を見送り部屋に戻ろうとしたショウの背中にイツキが声をかける。
「なんだよ」
ショウは振り向きもせずに答えた。
「明日、引っ越しちゃうんだよね」
「あぁ」
「その…大学の合格祝い、まだできてなかったから、せっかくだから今夜どうかな?」
イツキは珍しくショウを誘ったのだ。
「…いいぜ」
ショウもこの日でイツキと二人きりになるのは最後だろうと思った。
「よかった。じゃあ料理とか用意しておくから」
「うん」
…
その日の夕方、イツキは嬉しそうに部屋にいたショウをリビングに呼び出した。
机の上にはイツキの手料理が所狭しと並んでいた。
毎日、母の手料理しか食べたことがなかったので、ショウにはイツキの料理は新鮮だった。
「ショウ、大学合格と引越しおめでとう」
「どうも」
二人のグラスが軽くぶつかる。
イツキはビールを飲んでいた。
ショウはまだ未成年なのでコーラだ。
「今日、断られるかと思ったよ」
イツキは嬉しそうに、そして結構なピッチでビールを飲んでいく。
ショウは何気に初めてイツキ酒を飲んでいるところを見る。
「これ、美味しいから食べてみてよ」
「ん」
…
お酒が入り、イツキの気がだいぶ緩んできたことをショウは感じた。
「なぁ…俺のことどう思ってんだよ」
突然、ショウがイツキに尋ねる。
「え?」
イツキはグラスから口を離した。
「…うーん、大切な息子かな」
ふんわりとイツキが微笑む。
ショウは何故かその微笑みと言葉に苛立ちを覚えた。
「俺は…俺はお前のこと父親だと思えない」
ショウは箸を置いて立ち上がり、リビングから出ようとした。
イツキは慌てて立ち上がるとショウを追いかけた。
「ま、待ってよ。じゃあ、じゃあどうしたら俺はショウの父親になれる?」
イツキがショウの腕をつかんだ。
ショウはパッと振り向いた。
二人の視線が交わる。
「…こうしたらかな」
ショウも引っ越す当日に母がいようといなかろうとあまり気にしていなかったが、母が旅行に行くことを少し渋っていた。
「でも毎年行ってるし、一年に一度の楽しみなんだから行って来いよ」
「うん、わかった…」
母はショウに説得されて温泉旅行へと旅立った。
「ショウ、ちょっといいかな?」
母を見送り部屋に戻ろうとしたショウの背中にイツキが声をかける。
「なんだよ」
ショウは振り向きもせずに答えた。
「明日、引っ越しちゃうんだよね」
「あぁ」
「その…大学の合格祝い、まだできてなかったから、せっかくだから今夜どうかな?」
イツキは珍しくショウを誘ったのだ。
「…いいぜ」
ショウもこの日でイツキと二人きりになるのは最後だろうと思った。
「よかった。じゃあ料理とか用意しておくから」
「うん」
…
その日の夕方、イツキは嬉しそうに部屋にいたショウをリビングに呼び出した。
机の上にはイツキの手料理が所狭しと並んでいた。
毎日、母の手料理しか食べたことがなかったので、ショウにはイツキの料理は新鮮だった。
「ショウ、大学合格と引越しおめでとう」
「どうも」
二人のグラスが軽くぶつかる。
イツキはビールを飲んでいた。
ショウはまだ未成年なのでコーラだ。
「今日、断られるかと思ったよ」
イツキは嬉しそうに、そして結構なピッチでビールを飲んでいく。
ショウは何気に初めてイツキ酒を飲んでいるところを見る。
「これ、美味しいから食べてみてよ」
「ん」
…
お酒が入り、イツキの気がだいぶ緩んできたことをショウは感じた。
「なぁ…俺のことどう思ってんだよ」
突然、ショウがイツキに尋ねる。
「え?」
イツキはグラスから口を離した。
「…うーん、大切な息子かな」
ふんわりとイツキが微笑む。
ショウは何故かその微笑みと言葉に苛立ちを覚えた。
「俺は…俺はお前のこと父親だと思えない」
ショウは箸を置いて立ち上がり、リビングから出ようとした。
イツキは慌てて立ち上がるとショウを追いかけた。
「ま、待ってよ。じゃあ、じゃあどうしたら俺はショウの父親になれる?」
イツキがショウの腕をつかんだ。
ショウはパッと振り向いた。
二人の視線が交わる。
「…こうしたらかな」
0
お気に入りに追加
111
あなたにおすすめの小説
部室強制監獄
裕光
BL
夜8時に毎日更新します!
高校2年生サッカー部所属の祐介。
先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。
ある日の夜。
剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう
気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた
現れたのは蓮ともう1人。
1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。
そして大野は裕介に向かって言った。
大野「お前も肉便器に改造してやる」
大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
僕が玩具になった理由
Me-ya
BL
🈲R指定🈯
「俺のペットにしてやるよ」
眞司は僕を見下ろしながらそう言った。
🈲R指定🔞
※この作品はフィクションです。
実在の人物、団体等とは一切関係ありません。
※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨
ので、ここで新しく書き直します…。
(他の場所でも、1カ所書いていますが…)
社長の奴隷
星野しずく
恋愛
セクシー系の商品を販売するネットショップを経営する若手イケメン社長、茂手木寛成のもとで、大のイケメン好き藤巻美緒は仕事と称して、毎日エッチな人体実験をされていた。そんな二人だけの空間にある日、こちらもイケメン大学生である信楽誠之助がアルバイトとして入社する。ただでさえ異常な空間だった社内は、信楽が入ったことでさらに混乱を極めていくことに・・・。(途中、ごくごく軽いBL要素が入ります。念のため)
少年ペット契約
眠りん
BL
※少年売買契約のスピンオフ作品です。
↑上記作品を知らなくても読めます。
小山内文和は貧乏な家庭に育ち、教育上よろしくない環境にいながらも、幸せな生活を送っていた。
趣味は布団でゴロゴロする事。
ある日学校から帰ってくると、部屋はもぬけの殻、両親はいなくなっており、借金取りにやってきたヤクザの組員に人身売買で売られる事になってしまった。
文和を購入したのは堂島雪夜。四十二歳の優しい雰囲気のおじさんだ。
文和は雪夜の養子となり、学校に通ったり、本当の子供のように愛された。
文和同様人身売買で買われて、堂島の元で育ったアラサー家政婦の金井栞も、サバサバした性格だが、文和に親切だ。
三年程を堂島の家で、呑気に雪夜や栞とゴロゴロした生活を送っていたのだが、ある日雪夜が人身売買の罪で逮捕されてしまった。
文和はゴロゴロ生活を守る為、雪夜が出所するまでの間、ペットにしてくれる人を探す事にした。
※前作と違い、エロは最初の頃少しだけで、あとはほぼないです。
※前作がシリアスで暗かったので、今回は明るめでやってます。
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる