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プロローグ

魔界の今

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「どうして――」
「……」

 ミリア・ブンサンが姉のルーナ・ブンサンに変わり。次期魔王になってからすぐ。とある出来事があった後。ミリアの自室ではリリー・ブンサン。ミリアの母が頭を抱えていた。
 そしてミリア自身もうつむいていた。

 何があったかを簡単に説明すると。
 少し前にミリアが次期魔王となり。魔界の町。ユーゲントキーファー中にその話が流れだしたのと同じくして。
 ミリアは、リリーから助言を受けつつ。秘密裏に姉であるルーナをに自分が扱うため。ルーナのいるバアイゼインゼルに極秘部隊を向かわせたが――返り討ちにあったのだ。
 
 ちなみに返り討ちにあった部隊の生き残りはすでに全員が死刑となっている。
 なぜなら彼らは次期魔王様が変わったことで、元次期魔王様などもう不要と判断し。独断で攻撃を仕掛けたとされている者だからだ。
 なお、この件に関しては、はじめは現在の魔王でミリアの父に当たるテオドール・ブンサンも疑っていたが。ミリアは一切関わっていないことがすでに証明されているため疑いは晴れている。
 そしてこの騒動に関しては、一部の町の人も知っているが。今のところ大事にはなっていない。

「ミリア」
「はい」
「当面はなるべく目立たず。あの人のそばにつかえなさい。こちらのことは私がしておきます」
「はい。わかりました」

 しばらくの沈黙があった後。リリーはそれだけ言いミリアの部屋をそっと出て行った。
 
 ◆

「どうして、どうして。あと少しなのにうまくいかない」

 ミリアの部屋を出た後。自室へと戻ったリリーはイライラしながら窓の外を見ていた。
 あと少しで自分のものにここから見るすべてのものがなる。またここからでは見えないものもすべてが自分のものになりそうなのに、それがうまくいかない。それに苛立ちを覚えていた。
 現在ミリアは正式に次期魔王となっているが。ルーナは生きている。ルーナが生きていると。もし――があると。また何かが起こってしまう可能性があるため。リリーは不安要素は徹底的に消すことにしたが。それを失敗。
 またこの事により。ルーナのいるバアイゼインゼルに大きな軍が居る可能性が浮上してしまった。今のところ魔王。テオドールのところまではこの情報。またルーナが魔術を――という情報は入っていない(リリーの側近がテオドールの周りを固めているため)が。仲間から攻撃を受けたことで、バアイゼインゼルの人々がユーゲントキーファーとの行き来を停止していることはさすがに隠すことができなかったらしく。少し前にテオドールから状況を聞かされた。そして後日ルーナに会いに行くことも検討していると。
 現状魔界の土地は少ない。なのにここでバアイゼインゼルが離れてしまうことは避けたいのだ。なので情報を整理し。何があったかを明らかにしてから説明に向かうらしい。
 しかしリリーからすればそんなことは一大事だ。ここでテオドールとルーナが再度つながってしまう可能性があるからだ。
 もうあまり時間は残されていない。
 そしてリリーが考え付いた次なる一手は――。

「――王を、消してしまいましょう」

 そのあとリリーは早急に。そして秘密裏に忙しく根回しを開始したのだった。
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