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黒への分かれ道
第二章:2話 『ヘイワナニチジョウ2』
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「っはぁ、はぁ…チックショウ!何でてめェはこうも余計なことしかしないんだ!」
王都:ラグラディア。
中世ヨーロッパのような街並み――交通のインフラはしっかりとしており、屋根が三角の形をしたレンガ作り建物がドミノのように並んでいて、平たい屋根の家も少数見えている。その建物らから形成される大通りの道は一直線ではなく、ところどころ曲線になっている。
一人の少年と二人の少女は石畳で綺麗に整備されているその大通りを走っていた。全力で走っているため、体が必要としている酸素を一生懸命口から取り込んでいるせいか、乾いた石の匂いは一切感じられない。
「仕方ないじゃん!あの猫可愛かったんだから!」
学園までの残り登校距離が半分まで来たということで、リリィが路地裏から出てくる猫を発見した。それが今アレスがあせっている原因。
――少し前のこと――
学園までもう半分というところで後ろを見ると、いつの間にかリリィがいないことに気がついたアレス。来た道を逆戻りし、ルナと一緒にリリィを捜索することにした。数分後、すぐにリリィを見つけることができた。彼女は路地裏から出て来そうな黒猫に釘付けだった。アレスはリリィをすぐに見つけたことまではよかった。
しかし、アレスがリリィに声をかけようとしたとき、黒猫が路地裏に戻ってしまったのだ。
「あっはは、まてーー」
それと同時にリリィも黒猫が向かった方向に走っていった。
「――あいつッ!」
それを見たアレスも当然彼女を追いかける。路地裏の空気はひんやりとしており、大通りとは違う石の匂いをアレスたちは感じた。
「リリィ戻ってこい!学校遅れちまうぞ!!」
狭い空間である路地裏でアレスの声が隅々まで響きわたった。願いと声が届いたのか、リリィは急に立ち止まる。
(よし、そのまま戻って来い)
しかし、その願いの方は届かなかった。
(あの野郎また走りだしやがった!!)
よく見れば、リリィが一時停止したのは、リリィの前方を行く黒猫が走ることをやめたからであった。再び黒猫が走り出せば当然リリィはその好奇心に動かされ、走り出す。
「待てっつってんだろ!…くそっ、『オフェンシブアーマー』!」
先に息を切らしているルナと自分に支援魔術をかける。これでルナも少しは楽に走れるだろう。
(急いでてルナのことを考えてなかったぁーー!支援かけたけど、早く捕まえねぇといくら体力自慢のルナでも厳しいな…)
「いい加減に……しろッ!!!」
アレスはリリィの前方5m地点に一歩で飛び移る。空中で一回転し、足に負担がかからないように綺麗に着地した。
「うわっ!?猫がお兄ちゃんになった!?」
「俺は俺だし、猫は猫だ。早く戻らないと授業に遅れるだろうが」
「え~」
視線はしっかりとアレスの顔に向けたまま、力が抜けたかのように体をがっくりと落とすリリィ。
「『え~』じゃない、置いてくぞコラ」
「わかりました。んじゃ行こう!お兄ちゃん」
リリィはこれまでの出来事を全て振り払ってしまう程の可愛い笑顔を見せる。
しかし、アレスをイラつかせるには十分の笑顔だった。おそらく、一般の人が見れば「この笑顔守りたい…」と思ってしまう。リリィの美貌があれば尚更だ。
(こいつ、一回しばいた方がいいんじゃないか……!まぁ、それは学園に着いてから考えるか……。さて、どう戻るんだ?)
「ねぇねぇ!」
リリィの元気で無邪気な声が響く。
そして、
「――ここからどうやって戻るの?」
―――だと思った…―――
という調子で時間を無駄にし、後からやって来たルナによって元にいた道に戻ることができた。正直、【オフェンシブアーマー】で強化された脚力で家の壁と壁を足場にしてジグザグに飛んでいけば、空から帰りの道を見つけることができたかもしれないが、住人の説教を聞かされる可能性と時間が掛かることを考慮し、その案は表に出ることなくアレスの中で自己解決された。
(それよりもルナが来てくれたことが大きいんだけど…)
「ねぇねぇ、もっと早く走ろうよ!遅刻しちゃうよ!」
支援無しにあれだけ走ったというのに、リリィは息を切らしている様子は見られなかった。
(こいつッ!お前のせいなんだぞ!!)
これ以上早くすると、いくら支援魔術で強化されているルナでもかなりきつい。まあ、アレスが担いで走ればいいのだが、それもリリィに対するささやかな仕返しだろう。アレスはリリィの意見を無視して、同じペースで走り続けた。
「ねぇーーーー!無視しないでよぉ~!」
―――うるせぇ…―――
王都:ラグラディア。
中世ヨーロッパのような街並み――交通のインフラはしっかりとしており、屋根が三角の形をしたレンガ作り建物がドミノのように並んでいて、平たい屋根の家も少数見えている。その建物らから形成される大通りの道は一直線ではなく、ところどころ曲線になっている。
一人の少年と二人の少女は石畳で綺麗に整備されているその大通りを走っていた。全力で走っているため、体が必要としている酸素を一生懸命口から取り込んでいるせいか、乾いた石の匂いは一切感じられない。
「仕方ないじゃん!あの猫可愛かったんだから!」
学園までの残り登校距離が半分まで来たということで、リリィが路地裏から出てくる猫を発見した。それが今アレスがあせっている原因。
――少し前のこと――
学園までもう半分というところで後ろを見ると、いつの間にかリリィがいないことに気がついたアレス。来た道を逆戻りし、ルナと一緒にリリィを捜索することにした。数分後、すぐにリリィを見つけることができた。彼女は路地裏から出て来そうな黒猫に釘付けだった。アレスはリリィをすぐに見つけたことまではよかった。
しかし、アレスがリリィに声をかけようとしたとき、黒猫が路地裏に戻ってしまったのだ。
「あっはは、まてーー」
それと同時にリリィも黒猫が向かった方向に走っていった。
「――あいつッ!」
それを見たアレスも当然彼女を追いかける。路地裏の空気はひんやりとしており、大通りとは違う石の匂いをアレスたちは感じた。
「リリィ戻ってこい!学校遅れちまうぞ!!」
狭い空間である路地裏でアレスの声が隅々まで響きわたった。願いと声が届いたのか、リリィは急に立ち止まる。
(よし、そのまま戻って来い)
しかし、その願いの方は届かなかった。
(あの野郎また走りだしやがった!!)
よく見れば、リリィが一時停止したのは、リリィの前方を行く黒猫が走ることをやめたからであった。再び黒猫が走り出せば当然リリィはその好奇心に動かされ、走り出す。
「待てっつってんだろ!…くそっ、『オフェンシブアーマー』!」
先に息を切らしているルナと自分に支援魔術をかける。これでルナも少しは楽に走れるだろう。
(急いでてルナのことを考えてなかったぁーー!支援かけたけど、早く捕まえねぇといくら体力自慢のルナでも厳しいな…)
「いい加減に……しろッ!!!」
アレスはリリィの前方5m地点に一歩で飛び移る。空中で一回転し、足に負担がかからないように綺麗に着地した。
「うわっ!?猫がお兄ちゃんになった!?」
「俺は俺だし、猫は猫だ。早く戻らないと授業に遅れるだろうが」
「え~」
視線はしっかりとアレスの顔に向けたまま、力が抜けたかのように体をがっくりと落とすリリィ。
「『え~』じゃない、置いてくぞコラ」
「わかりました。んじゃ行こう!お兄ちゃん」
リリィはこれまでの出来事を全て振り払ってしまう程の可愛い笑顔を見せる。
しかし、アレスをイラつかせるには十分の笑顔だった。おそらく、一般の人が見れば「この笑顔守りたい…」と思ってしまう。リリィの美貌があれば尚更だ。
(こいつ、一回しばいた方がいいんじゃないか……!まぁ、それは学園に着いてから考えるか……。さて、どう戻るんだ?)
「ねぇねぇ!」
リリィの元気で無邪気な声が響く。
そして、
「――ここからどうやって戻るの?」
―――だと思った…―――
という調子で時間を無駄にし、後からやって来たルナによって元にいた道に戻ることができた。正直、【オフェンシブアーマー】で強化された脚力で家の壁と壁を足場にしてジグザグに飛んでいけば、空から帰りの道を見つけることができたかもしれないが、住人の説教を聞かされる可能性と時間が掛かることを考慮し、その案は表に出ることなくアレスの中で自己解決された。
(それよりもルナが来てくれたことが大きいんだけど…)
「ねぇねぇ、もっと早く走ろうよ!遅刻しちゃうよ!」
支援無しにあれだけ走ったというのに、リリィは息を切らしている様子は見られなかった。
(こいつッ!お前のせいなんだぞ!!)
これ以上早くすると、いくら支援魔術で強化されているルナでもかなりきつい。まあ、アレスが担いで走ればいいのだが、それもリリィに対するささやかな仕返しだろう。アレスはリリィの意見を無視して、同じペースで走り続けた。
「ねぇーーーー!無視しないでよぉ~!」
―――うるせぇ…―――
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