懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人

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恐怖

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「メグ、なんか悪かったな。大丈夫か?」
「うん、平気だよ。ブラッドって相変わらず人気者なんだね。」
「…、まあ、俺はお前に人気がなけりゃ何も意味がないと思っているけどな。」

「ちょっと!あんたまあまあだったじゃないか!あんたがあの女にああいってやらなきゃ、私がぎゃふんと言ってやろうとおもってたのにさ!ほらほら、疲れたろ?メグも少し休憩してきな。」

少し休憩することになったので、ぐっすり眠っているテオを確認してから、ブラッドとお茶を飲むことにした。

「さっきの女の人本当によかったの?あんなことを言ってしまったら、仕事とかやりづらくなるんじゃない?」
「大丈夫だ。全く問題ないから。」

「もしも私とテオに遠慮してるんなら、私たちは大丈夫だから。ブラッドがもし誰かいい人がいるのなら、無理にここに来てくれなくても…。」
…大丈夫、とまで言葉が出なかった。あんなに心がえぐられても、傷つけられてもまだブラッドのことをふっ切れていないのだから。

そう言ってからテオのおでこにキスをして、私はまたルーナさんたちの元へ戻っていった。

その日の夜遅く、テオの鳴き声で目が覚めた私は異変に気が付いた。
焦げたようなにおいが鼻をついてくるのだ。
テオを抱きかかえて、外に逃げようとした。
でも、ドアの取っ手が熱く一瞬で私の手はやけどを負ってしまった。
恐怖で身がすくむ。
煙が室内にどんどん侵入してくる。

この離れはルーナさんたちの住む母屋とはさほど離れていない。
どうかルーナさんたちが気が付いてくれることを祈る。
テオはずっと泣きっぱなしだ。
煙の量から見てかなりの火があがっているのがわかる。

実際数分のことだったのかもしれないが酷く長い時間に感じた。

「メグ―――!!テオ――――!!」

ルーナさんとサムさんの声が遠くから聞こえる。
煙で息も絶え絶えになってきたときに、窓が割れた音を聞いた。

目の前に炎が迫ってくる。
意識がもうろうとする中、腕の中のテオを抱きしめたまま床に蹲ることしかできなかった。
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