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再会

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「------というわけなんだがね。メグはどうしたい?
あのバカに会いたくないっていうんなら、何が何でも届にサインさせることも
出来なくはないと思うんだがねえ。」
「すみません。エリーさん。そんな大変な思いをさせてしまって…。」

「いや、そんなのどうってことないさ。一番はメグの気持ちだからねえ。
メグ、あんたが一番大変な思いをしてるんだ。
それに、こうやって頼ってきてくれたことが嬉しいんだよ。」
「ありがとうございます、エリーさん。
あの時逃げるようにあの家を出てしまいましたし。
いざ、ブラッドに会うとなると不安ですが。
でもこの際、一度会ってみようと思います。」

「…そうかい。わかったよ。
本当にいいんだね?もしも気持ちが変わったらいつでも電話してくるんだよ?
よしっ!そうと決まれば、なんかおいしいものでも持っていかないとね!
あのバカもついでに引っさげていくが、大丈夫だよ!何の心配もいらないさ!
何か馬鹿なことをあんたに言うようなら、私がパン生地にうまく練りこんでしゃべれなくしてやる!
よし!じゃあ、無理せず体を大事にね!いいかい?!じゃあね!」
「はい、ありがとうございます。エリーさん!」

エリーさんとの会話の後、ルーナさんとサムさんに事の次第を説明した。


-------それから十日後。
今日は、お店の定休日に合わせて、ブラッドとエリーさんがこの街にやってくる。

昨夜はなかなか眠れなかった。
ブラッドに会うのはあのケーキ屋の前で見かけて以来だ。
エリーさんにブラッドのその後について、
あの時電話でやっぱり教えてもらえばよかったと、少し後悔している。

緊張からか、口が乾いて朝から水ばかり飲んでいる。
落ち付こうとすればするほど、鼓動がどんどん早くなってくる。

そんな時、サムさんがやってきて、エリーさんとブラッドの到着を知らせてくれた。
ついにこの時が来た…。


再会したブラッドは、以前よりもかなりやつれて見えた。
わたしを見た瞬間、震えた声で私の名前を呼んだ。
私は、久々にブラッドの声をきいて、少し泣きそうになった。

ただ、「本当にごめん。メグ。」といって、頭を下げ続けるブラッドに
私は、なんて言っていいのか分からなくなった。

どのくらい経っただろう。
お腹の赤ちゃんが、私のお腹をツンツンと蹴る感覚で我に返った。

ブラッドにサインを記入してもらおうと、離婚届とペンをブラッドの目の前に差し出した。

「ブラッド、ここまで来てくれてありがとう。
突然あの家を出て行ってごめんね。
私がいつまでもあそこにいたら、あなたたちの邪魔にしかならないわ。
新しいあなたの家族といつまでもお幸せにね。
ここに、サインをして。あとは私が協会に持っていくから。
あと、残していった私の荷物は捨ててい「メグ、お願いだから聞いてくれ。」」

私の言葉を遮ったブラッドは、真剣な顔で話を始めた。
あの子供はブラッドの子供ではないこと、あの親子と出会ってから別れるまでのこと。
後悔していること、愛しているのは今も私だけだと。
そして、子供ができてこんな状況なのに本当にうれしかったこと。

私は、それを聞くだけで、再び何と言っていいのかわからなくなった。

「お前一筋なはずの俺が、本当にざまあねえ。
どれだけお前を傷つけちまったんだろうな。最低だよな…。
メグ、…今更だけど困ってることはないか?」

「…。ううん。ルーナさんやサムさんによくしてもらって。大丈夫だよ。」

「そっか…そっか。よかった…。
本当に馬鹿だな俺は。メグ。悪かったな。」

そういったブラッドはうつむいてしまったが、しばらくして離縁届にサインをした。

最後にブラッドが私のお腹を撫でたいというのでそうさせていると、赤ちゃんがまたツンツンとお腹を蹴った。
その瞬間、ブラッドは声を殺して泣いていた。

「愛してるよ、メグ。幸せになるんだぞ。」

そう言い残したブラッドは、私を置いてその場を去っていった。

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