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愚かな俺
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「パパー」
「ブラッド、本当に楽しかった。今度はいつ会えるかしら。
もう行ってしまうなんて本当に寂しいわ。
早くまた、戻ってきてね。愛してる。」
「ああ。サリー。本当に楽しかったね。じゃあ。」
別れを惜しむように、女はブラッドに自らの肢体を絡ませキスをする。
女の体は、昨夜からの熱がまだ体をくすぶっているのか、
またねと言いながら、昨夜の続きをねだっているようだ。
しかし、男がそれに応じることはない。
そのまま、ドアを開け、去っていった。
サリーとの出会いは、本当に偶然だった。
仕事帰りに、赤子を抱えた女性が馬車にはねられそうになったのを、
とっさにブラッドが助けたのだ。
ついでに、その女の荷物と子供を自分が抱え、家まで送ってあげることにした。
その時、お礼にと食事に誘われたが、メグが待っているし
メグに、変な誤解をされたくなかったので断った。
母子家庭だというので、仕事帰りに見かけたときには、なにかしら手を貸すようになった。
ある日、どうしても、外せない用事あるということで、
子供の面倒を仕事帰りに引き受けた。
小一時間程で、雨にびっしょり濡れた女が帰ってきた。
子供が寝ていたのでそのまま帰ろうとしたが、女がいきなり抱き着いてきた。
いやなことがあった。俺に妻がいるのはわかっている。
でも、どうか慰めてほしいと懇願してくる。
体の線の浮き出たびしょ濡れの服をまとった
涙目のその女をそのまま、抱いてしまった。
その女とそういう関係になるつもりなんて全くなかったのに。
なんて愚かだったのだろうと思う。
それからというもの、仕事帰りにその親子を頻繁に見かけるようになった。
女に誘われるままついて行き、彼女を抱き、
その子供を少しだけあやしてから家に帰るようになった。
メグに対して、不誠実だし、早くこの関係を終わらせなければいけないとわかっている。
でも、子供にパパと呼ばれるようになって、女と肌を合わせるうちに、
なんだかんだとこの関係を続けてしまっている。
目の前に小さな我が家がその姿を現し、ほっとする自分がいる。
鍵を開け中に入り、荷物をとりあえずソファーにおく。
そのまま、風呂場に直行する。
メグに自身の不貞を悟られないように、入念に洗う。
洗濯も率先してするようになった。
メグにはびっくりされたが、共働きなんだから当たり前だと
理由をつけると、太陽みたいな笑顔でありがとうと抱き着いてきた。
本当にかわいくて愛おしくて、同時に、自身の罪悪感が一気に膨れ上がったのを思い出す。
しばらくしたら、メグが仕事から帰ってくるはずだ。
外はしとしとと雨が降り出し、風も吹いてきた。
こんな寒い日はメグの好きなスープを作ろうと、キッチンに向かう。
自身の罪悪感を少しでも拭うように。
おかげで料理も洗濯も、以前より出来るようになった。
そんな自分自身が滑稽で、愚かだと感じ苦笑する。
死ぬほどの絶望と後悔が目の前まで迫ってきているなんて知る由もなく、
愚かな俺は、キッチンに足を踏み入れた--------。
「ブラッド、本当に楽しかった。今度はいつ会えるかしら。
もう行ってしまうなんて本当に寂しいわ。
早くまた、戻ってきてね。愛してる。」
「ああ。サリー。本当に楽しかったね。じゃあ。」
別れを惜しむように、女はブラッドに自らの肢体を絡ませキスをする。
女の体は、昨夜からの熱がまだ体をくすぶっているのか、
またねと言いながら、昨夜の続きをねだっているようだ。
しかし、男がそれに応じることはない。
そのまま、ドアを開け、去っていった。
サリーとの出会いは、本当に偶然だった。
仕事帰りに、赤子を抱えた女性が馬車にはねられそうになったのを、
とっさにブラッドが助けたのだ。
ついでに、その女の荷物と子供を自分が抱え、家まで送ってあげることにした。
その時、お礼にと食事に誘われたが、メグが待っているし
メグに、変な誤解をされたくなかったので断った。
母子家庭だというので、仕事帰りに見かけたときには、なにかしら手を貸すようになった。
ある日、どうしても、外せない用事あるということで、
子供の面倒を仕事帰りに引き受けた。
小一時間程で、雨にびっしょり濡れた女が帰ってきた。
子供が寝ていたのでそのまま帰ろうとしたが、女がいきなり抱き着いてきた。
いやなことがあった。俺に妻がいるのはわかっている。
でも、どうか慰めてほしいと懇願してくる。
体の線の浮き出たびしょ濡れの服をまとった
涙目のその女をそのまま、抱いてしまった。
その女とそういう関係になるつもりなんて全くなかったのに。
なんて愚かだったのだろうと思う。
それからというもの、仕事帰りにその親子を頻繁に見かけるようになった。
女に誘われるままついて行き、彼女を抱き、
その子供を少しだけあやしてから家に帰るようになった。
メグに対して、不誠実だし、早くこの関係を終わらせなければいけないとわかっている。
でも、子供にパパと呼ばれるようになって、女と肌を合わせるうちに、
なんだかんだとこの関係を続けてしまっている。
目の前に小さな我が家がその姿を現し、ほっとする自分がいる。
鍵を開け中に入り、荷物をとりあえずソファーにおく。
そのまま、風呂場に直行する。
メグに自身の不貞を悟られないように、入念に洗う。
洗濯も率先してするようになった。
メグにはびっくりされたが、共働きなんだから当たり前だと
理由をつけると、太陽みたいな笑顔でありがとうと抱き着いてきた。
本当にかわいくて愛おしくて、同時に、自身の罪悪感が一気に膨れ上がったのを思い出す。
しばらくしたら、メグが仕事から帰ってくるはずだ。
外はしとしとと雨が降り出し、風も吹いてきた。
こんな寒い日はメグの好きなスープを作ろうと、キッチンに向かう。
自身の罪悪感を少しでも拭うように。
おかげで料理も洗濯も、以前より出来るようになった。
そんな自分自身が滑稽で、愚かだと感じ苦笑する。
死ぬほどの絶望と後悔が目の前まで迫ってきているなんて知る由もなく、
愚かな俺は、キッチンに足を踏み入れた--------。
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