愛しの婚約者は王女様に付きっきりですので、私は私で好きにさせてもらいます。

梅雨の人

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イザック視点2

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気が付けば僕たちは貪るようなキスをしていた。

どちらからなんてわからない。

あっという間の出来事だった。

ただ僕は王女殿下とのキスにおぼれてしまって、気が付けば互いの服を引きはがすようにして絡み合っていた。

一瞬で熱に侵されてしまったかのように。

でも相手は王女殿下だ。
どうにか理性をかき集めて、王女殿下の処女を奪うことはしなかった。

そういったことを女性とした経験はなかったのにもかかわらず、僕はその一度の経験で王女殿下の熱に溺れてしまった。

それからは、もう僕は王女殿下以外の周りが見えなくなっていた。

そして、王女殿下の悲しみの原因は、留学終了と同時に決められた婚約だと教えていただいた。
相手は、15も年上の多数の愛人を侍らかすような男らしい。

それを聞いた僕はどうにかならないものか、僕がどうにか王女殿下をお救い出来ないだろうかと思考を巡らせることとなった。

ただその婚約に関してはまだ秘匿事項なため、他言無用と言われてはどうしようもならない。

それからというもの、王女殿下をお慰めするべく、僕たちは逢瀬を繰り返してしまった。

だから、僕の友人がローズマリーと留学生の男が最近仲がいいみたいだと教えてくれた時も、特に気に留めることはなかった。

ランチを一緒によく食べているようだと言っていたが、相手は留学生だ。
親切で優しいローズマリーが、こちらの国に不慣れな留学生に親切にしてやっているんだろうくらいにしか思わなかった。

友人はなぜか、かわいそうなものでも見るかのような顔を僕に向けたがそれ以上は何も言わなかった。

ただ、わざわざそんなことを僕に伝えてきたので、ローズマリーに久々に会いに行くことにした。

王女殿下との休日の逢瀬に行く途中の出来事だった。
結局彼女は不在で会うことはできなかったが。

その時に、僕はローズマリーという存在の大きさを思い出して引き返せばよかったんだ。

僕と王女殿下の逢瀬を誰かに見られていたなんて、その時の僕は気が付くことが出来なかった。


ある日、第二王子殿下に呼び出された僕は、王女殿下との距離をもう少しとるようにと注意を受けた。
僕と王女殿下の逢瀬に気が付いたのであろうかと心配になった。

未だ公にはなっていない王女殿下の帰国後の婚約の為にも、今悪い噂を立てることは我が家にとっても王女殿下にとっても得策ではないと言われてしまった。

そのとおりだとわかっているのだが、その婚約者は最悪な相手だろうといってやりたかった。

でも、第二王子殿下がここだけの話として僕に語った内容に頭が真っ白になってしまった。

第二王子殿下が語った内容は、王女殿下の留学前の乱れた私生活についてであった。

どうやら、王女殿下には複数の恋人がいて彼らには皆婚約者がいた。
そして、その全員と体の関係を持っていたようだ。

それがきっかけで、彼らは全員婚約を破棄され、王家からも多額の慰謝料が相手の婚約者に支払われた。
それと共に、関係者には箝口令が出されたらしいが恐らくすでに多くのものがその事実を知っているらしい。

だから今回の留学は、タイミングよく我が国の第三王子殿下があちらの国に留学するのに合わせて、互いの文化を学び国交を深めるという理由を何とかこじつけて実現させたようだ。

要するに、向こうの国にしたら、今回の王女殿下の留学はただの厄介払いにほかならず、我が国にしたら、そんな王女殿下を迎えるというのはあまり乗り気のしないものだったらしい。

道理で、こちらの国の殿下方が積極的にカトレア―ナ王女殿下と交流を持っていなかったわけだ。

そして、さらに第二王子殿下は発言を続けられた。

それは、さすがの王女殿下も自分の国に帰るのは面倒だと思ったのか、この留学の機会に爵位の高い適当な子息を狙っているらしいという事であった。

我が国としてもそんな問題ありの他国の王女には無事にお帰り頂き、余計な面倒ごとは留めておきたくない。
そこで、おそらく王女殿下と懇意にしている僕にこの件を伝えることにしたという事だった。

殿下はそこまでお話になられると、一口茶を召し上がった。
一息ついて、また会話を再開された。

「品行方正とも言えないあの王女が何か問題を起こさないように常に影が付いている。常に王女の行動は監視されている。あのような王女の世話をお前に任せる前に、一言忠告をしておくべきだった。」

背中を冷や汗が伝った。

影が付いているという事は、僕と王女殿下の逢瀬も既に報告があがっているということだ。
処女を奪ってはいないということくらいが救いだ。
いや、殿下のおっしゃった通りなら、既にそんなものは失っているのだろうが。


ローズマリーにもっと好意を寄せてもらえるように責任感の強い男になるよう励んできた。
そして、誠心誠意、カトレア―ナ王女殿下にお仕えしようと日々精進したのも嘘ではない。

でも、結局気が付けば僕は取り返しのつかない愚かな男に成り下がっていたようだ。
何が、責任感の強い男になるだ…。

そしてその日、僕は王女殿下のお世話係の解任としばらくの間、自宅での謹慎を仰せつかった。
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