見捨てられたのは私

梅雨の人

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亮真8

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大河内家は藤堂家との繋がりをなくし、多くの顧客と投資家を失ってしまった。 

当然そうなると兄さんも俺も朝から晩まで大河内家を立て直すために駆けずり回るようになったが、これもいつまで続くのか先行きは不透明だ。 


それもこれも俺が琴葉義姉さんとの関係性を見誤った結果だ。 

大切な愛する小雪を大事に大事にするだけで俺は幸せになれたのに。 

 

風のうわさで小雪が男児を産んだと聞いた。 

嫉妬の嵐で私の頭の中はどうにかなりそうだった。 

さすがに仕事では態度に出せないが、一日が終わり一人になると溺れるように酒を飲んで見たがただただ虚しいだけだった。 


こんな状況でも一人身になった俺はまだ需要があるらしく頻繁に縁談話が舞い込んでくるが、もう俺は誰かを幸せになんて出来そうにない。 

目を閉じると浮かんでくるのは困ったようにはにかんでいる愛おしい小雪で、彼女をあきらめることなど出来ないのだと諦めている。 

せめて小雪が幸せにずっと暮らしていけるように見守っていけるよう、ただそれだけのために日々やるべきことを淡々とこなす日々を過ごしている。 

もしも、もしも... 万が一小雪が困っていたら私が一番に手を差し伸べることが出来るように、その手を小雪に取ってもらえるように、来るか来ないかわからないその時に備えて生きて行くしかないと腹をくくった。 

 

それなのに、大河内家存続のため再婚することになってしまった。 

私に有無を言わさずに兄がとっとと決めてきた新たな妻は最近成り上がったと噂される東林家の長女だ。 

兄はこんな性格だっただろうか。 

弟の私の考えなんてお見通しであろうに、さっさと私に有無を言わせずこんな大事なことを決めて結論だけを私に伝えてきた。 

小雪と離縁してから、いや、離縁する前からこうなることが薄々わかっていたかのような手際の良さで、その視線は何かを達観しているかのようだった。 

式は挙げずに新しい妻となる女性が屋敷にやってきた。彼女も再婚で、離縁の理由は彼女の男の幼馴染の妻と刀傷沙汰を起こして示談で事件をもみ消したと聞いた。 

だから妻の実家も困り果てて、娶ってくれるなら後は好きにしていいからからと大河内家へ援助をする代わりに押し付けられたというわけだ。 

肌を合わせる必要はないと理解して、どうにか心の均衡を保ちつつ現実を粛々と受け入れることにした。 
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