見捨てられたのは私

梅雨の人

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それからお店を後にした私たちは腹ごしらえに近くの砂浜を歩いております。 

初めて砂浜を歩く私の手を東吾様はやさしく支えてくれます。 

「靴を脱ごう小雪。裸足で歩くと気持ちいいぞ。手伝ってやる、手を貸して?」 

「裸足でですか?わかりました。やってみますね。」 


東吾様に手を借りて裸足になり砂浜に足を下ろします。 
サラサラの砂が足の裏にまとわりついてひんやり致します。 

「本当。本当にとても気持ちいいですね東吾様!」 

「だろう?でも貝殻が落ちているから足を怪我しないように気を付けるんだぞ?ああ、風が気持ちいいな。」 

「波の音も素敵ですね、東吾様。」 

「ああ、本当だな。」 

 

ザザンッ…ザザンッ… 

波の音と穏やかで温かな風に包まれて砂浜に東吾様と並んで腰を下ろします。 

いつの間に拾って下さったのでしょうか、かわいらしい貝殻を東吾様は私に下さいました。 


「一生大事にさせて頂きます、とても可愛いですね。」 

「大げさだなあ小雪。このくらいいつでも君に贈らせてもらうぞ。また二人でここに来ような。」 

「ええ、東吾様。また連れてきてくださいませ。」 

「ああ、もちろんだ小雪…」 

 

見つめあった私たちはどちらからともなく口づけを交わしました。 


◇◇◇◇


「とても素敵な場所ですね、東吾様。」 

「だろう?俺もこの景色がとても気に入ってるんだ。小雪に気に入ってもらえて本当に良かった。」 

新井月に到着したのは夕焼けが綺麗に空に広がる夕暮れ時でございました。 

綺麗な空の色が湖にも反射してとても幻想的でございます。 

木々に囲まれて穏やかな風の過ぎ去る音と鳥たちの穏やかな鳴き声が時折聞こえてきます。
建物は三階建ての洋館で、つい最近購入して大急ぎて手を加えたのだと東吾様が教えてくださいました。


「明日からもたくさん時間があるからな。ゆっくり二人でこの周辺を見て回ろうな。」 

「ええ、東吾様。とても楽しみでございます。」 

東吾様と穏やかに見つめあって、ゆっくりと屋敷の中へ二人で手をつないで歩いて行きます。 

屋敷の前で老夫婦が私たちの到着を歓迎してくれておりました。 
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