見捨てられたのは私

梅雨の人

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二月に入りました。
寒さがまだ残る天気の中、今日も琴葉お義姉様がいらっしゃっております。 

琴葉様は亮真様とお二人でいるときは私に近づいていらっしゃらないのに、今日はお義姉様からお声をかけられていらっしゃいました。 

「小雪さん、今日もお邪魔してるわ。」 

「お義姉様いらっしゃいませ。」 

「ふふふっ、はいこれ。亮真さんがあなたが甘いものが好きだっていうから。おみやげよ。亮真さんったら忙しいでしょうにいつも気分転換になんて言って私を連れ出してくれてるの。今日も私のお気に入りのルナ洋菓子店に連れて行ってくれたのよ。ね?亮真さん?」 

「ルナ…洋菓子店ですか…?」

「…ああ…」 

「すごくおいしかったからこれをあなたにと思って。ところでどうかしらこのかんざし素敵でしょう?」 

お義姉様の艶やかな髪をまとめているそのかんざしは、亮真様が以前その出来栄えに目を細めていらしたものでした。 

「すごく…すごく素敵でございますね。」 

「そうでしょう?!亮真さんが私に似合うと言って贈ってくださったのよ!亮真さんに会うときはなるべきつけるようにしてるのだけれど、そういえば小雪さんのその髪飾りも素敵ね?亮真さんに頂いたんでしょう?」 

「いや…それは…」 

「いえ、これは兄からの贈り物です。」 

「あら、ごめんなさいね。つい亮真さんからの贈り物だと思ってしまったわ。駄目ね、私ったらいつも早とちりしちゃって。」 

「いえ…」 

「小雪、「ねえ亮真さん。食べすぎちゃったから庭園を歩きましょうよ?寒いかもしれないけどその時はいつもみたいに手を握ってくれるんでしょう?」 

「手を…ですか…?」 

「…」 

「ええ、そうよ。いつも亮真さんの大きな暖かい手でぎゅっと握ってくれるの。小雪さんにもいつもしてるでしょう?暖かいわよね!」 

「ええ…」 

「義姉さん、何を…小雪」 

「ねえ、小雪さんも一緒に庭へ行かない?」 

「いえ、私はこれから用事がございますのでご遠慮させていただきますわ。」 

「そう?残念ね、それじゃあ行きましょ亮真さん。」 

「小雪。…義姉さん急に引っ張るなよっ…。」 

二人を振り返ることもなくその場を後にする私を周囲の使用人は複雑な表情をしております。 
 
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