見捨てられたのは私

梅雨の人

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すべてを心の中で話し終えた私は妙子様に愚痴を聞いてくれたお礼とお詫びを伝えてその場を後にしようと立ち上がりました。 

「よう、小雪さん。」 

「一宮様。」 

「昨日は大丈夫だったか?なんて聞くのは野暮だな。よし、何か甘いものでも食べに行こう。気分転換だ。」 

「それは、もちろん。でも運転手と侍女に一言告げてからでよろしいでしょうか?」 

「ああもちろん。それでは行こうか。」 

 ◇◇◇◇

「タカさん、こちら以前私が熱を出したときにお世話になった一宮様です。」 

「初めまして、一宮様。以前は奥様が大変お世話になりました。」 

「いや、たいしたことはないさ。それよりも積もる話もあることだしそこの店で甘いものでも食べて屋敷まであとで小雪さんを責任をもって屋敷まで送ろう。」 

「それは…」 


「その必要はありませんよ。」 

「旦那様!」 

「亮真様どうしてこちらに…?」 

「どうしても何も君が突然出かけて行くから…」 

「今日は亮真様もお忙しいかと思いましたので。」 

「忙しいことはない。先ほども一緒に出掛けようと聞いたじゃないか」 

「お義姉様に先ほどの品をお届けになるのではないのですか?」 

「それはそうだが。そんなに時間のかかることではないのだから。届けた後、そのまま出かければいいと思っていた」 

「それは失礼いたしました。お買い物もお義姉様をお誘いしたらいかがでしょう。先ほどの品に加えてお気に召したものを贈られたら喜ばれるのではないでしょうか?」 

「今日くらいは君に何かを贈ろうと思っていた。久しぶりに、君に何か贈りたかった…」 

「久しぶりに、ですか?」 

「ああ、久しぶりに、だ。君に最後に贈ったのは…」 

「亮真様に何かを贈っていただいたことはございませんが、今回はお気持ちだけ受け取らせていただいてもよろしいでしょうか。」 

「君に何も贈ったことがないだなんてそんなことは…」 

「失礼、楽しそうな会話の途中申し訳ないが、ここは寒いし立ち話もなんだからどうだろう。店に入って暖かいものでも一緒に頂こうじゃないか。それで構わないか?小雪さん?」 

「ええ、それはもう。――亮真様。以前お助けしていただいたお礼もかねて一宮様とお茶を頂こうと思っておりますが亮真様はいかがいたしますか?」 

「それは…私も同行させてもらう。」 

「決まりだな。では行こう。」 
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