見捨てられたのは私

梅雨の人

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「いらっしゃいませ、大河内様。」 

「やあ、よろしく頼むよ。」 

「お連れ様がお待ちでございます。このままご案内させて頂きますがよろしいでしょうか?」 

「ああ。頼んだよ。」 

「亮真様?お連れの方がいらっしゃるのですか?」 

「ああ、兄さんたちも来ているんだ。」 

 

「こちらでございます。」 

「来たな亮真、小雪さん。」 

「亮真さん、小雪さん。お久しぶりね!」 

「お待たせ二人とも。」 

「ご無沙汰しておりました、お義兄様、お義姉様」 

 「小雪座ろう。ああ、こちらの方が暖かそうだな。小雪はこちらに座ってくれ。寒くないか、小雪?」
「ええ、亮真様…」


お義兄様のお隣にはお義姉様が座られておりました。亮真様に勧められるままお義兄様達に向かい合うようにして亮真様と二人並んで座りました。 

「亮真…お前も何というか、不器用だがかわいいやつだなあ…」 

「兄さん、突然何を…?」 

「いや、なあ…亮真、気持ちはわかるがそれでは小雪さんが食べ辛いだろう。料理が目の前にあるのだから手を放してあげてくれ。」 

亮真様はお義兄様にそういわれて不承不承と私の手を開放してくださいました。手のぬくもりが離れて行ったことに寂しさを感じてしまいます。 

「まあ…いつの間にそんなに仲がよくなっちゃったのかしら。ねえ…ふふふっ」 

「いつの間にって、そんないい方しなくてもいいでしょう義姉さん。」 

「まあ、弟夫婦の仲が良いのは素晴らしいことだ。ということで頂こうではないか。小雪さん、勝手にこちらで料理を選ばせてもらったからもしも好き嫌いがあれば遠慮なく伝えてくれ。」 

「ありがとうございます、お義兄様。頂きます。」 

 

お料理はとても手が込んでおります。旬で新鮮なものをふんだんに使用しており、お箸がどんどん進みます。 

「小雪、それが気に入ったのか?ほら、私のも食べるといい。」 

「いえ、そんな。亮真様の分まで頂くだなんて…」 

「君はもっと食べたほうがいいんだから」 

「あまり食べたら太ってしまいます」 

「太ってもいい」 

ご遠慮いたしますと申し上げましても聞いてくださらない亮真様はそのまま私の口に料理を運んでくださいました。

「ほら、美味しいだろ?」

「ええ…」

恥ずかしくて直視できませんでしたが、ちらりと見るとわずかに亮真様が私に微笑んで下さいました。
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