見捨てられたのは私

梅雨の人

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「太賀?!何してるのよ!」 
「何をしている兄さん!?」 

「まさか、まさかだな。お前たちがそれほどまでとはな…」 

太賀お兄様はそうおっしゃると視線を私に向けてこられました。 

「少しだけ我慢してくれ小雪さん。医師が到着したようだから診てもらおう。私にしっかり捕まって。」 

 お祝いの席に訪れている人の波を縫うように颯爽と会場を後にした太賀お兄様に抱かれた私は別室に連れていかれました。

そこではお医者様が私の到着を待っていてくださいました。 

「先生よろしくお願いします。さあ小雪さん。」 

「小雪、兄さん一体どういうことなんだ?」 

「亮真やっと来たか。どうする小雪さん?君が嫌なら亮真を部屋から追い出すけど?」 

「いえ、亮真のお好きにしてくださって構いません。」 

「優しいなぁ、小雪さんは…亮真、反省しろよ?とにかく私は外で待っているから。では後ほど。」 


「では診ますよ。ああ、これは…。なぜこうなるまで我慢したのですか?腫れがこんなにも。痛いでしょう?まずは痛み止めを飲んでもらうよ。それから足を固定しなければ。よくこうなるまで我慢できたね。いや、勘違いしないでほしいがこれは褒めていないんだよ?君はこんなにひどくなる前に歩くのをやめて足を冷やすなり医者を呼ぶなりするべきだった。少し触るよ?」 

「痛っ…」 
「そんなに痛いのか、小雪…?」

太賀お義兄様との会話の途中も痛んでいた足首は、お医者様を目の前にすると緊張の糸がほぐれてしまったかのように痛みをさらにひどいものに変えてしまったようです。 

「先生、氷をお持ちしました。」 

「ああ、ありがとう。少し冷っとしますよ?あと、これは痛み止めです。ここまでひどくてはほんの気持ち程度のものになってしまうかもしれないな。詳しく調べなければいけないがおそらくひびが入っているんだろうな。薬をもう少し強めのものにしようか…。」  

「先生、それは小雪の体に影響が出てしまうのでは?」 

「ああ、それは多少倦怠感が増す程度だから心配ないだろう。なんだ、あなたが夫君か。うっかりあっちの…いや、なんでもない。とにかく、薬を変更しよう。」 

「ありがとうございます、先生」 

「おや?そういえば先月打ち付けた肩と頭はましになったかな?っとこれは言わないほうがよかったか…。君、傷薬と湿布。後、添え木に…なんだったかな。ああ、飲み薬の先程のより強い分を頼むよ。」 

てきぱきと処置が進められて行き、ついには足に添え木を当てられ大げさに湿布薬を張り付けられてしまいました。 

相変わらず唸るような痛みに一歩も動けずにいる私を先生は横に寝かせてくださいました。 

「祝いの席どころではない。落ち着いたらご自宅に帰られるか痛みがひどいなら私の診療所に入院していただいたほうがよろしいでしょう。」 

「小雪…」 

お医者様が帰られた後には部屋に亮真様と私だけが取り残されてしまいました。 
 
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