見捨てられたのは私

梅雨の人

文字の大きさ
上 下
16 / 147

16

しおりを挟む
さすがに今から何をするかは心得ておりますので緊張いたします。 

「小雪、入るぞ。」 

ノックの後に亮真様が現れました。 

お風呂上がりの亮真様はの髪の毛はまだしっとりと濡れております。おそらく乱れているのを手ぐして整えたのでしょう。大人の男性の色気を感じ頬が熱くなっております。 

ゆっくりと近づいてきた亮真様は無言で私の隣に腰を下ろされました。 

「不束者ですがこれからどうぞよろしくお願いいたします、亮真様。」 

「ああ…」 

どうしたのでしょう。 

亮真様の目じりが朱に染まっております。私をじっと見つめられたままそっと抱き寄せてくださいました。 

初めての私はただ亮真様に縋りつくばかりでしたが、亮真様の苦しそうな息遣いと私の乱れてしまった意味のない声が部屋に響き、何度も絶頂させられました後に胎に温かなものが広がっていくのを感じました。

痙攣したように震える私を亮真様はぎゅっと抱きしめてくださいまして、再び亮真様が激しく腰を打ち付けてまいります。再び胎に温かなものが広がるのと同時に私はそのまま意識を失ってしまいました。 

しばらくして未だ眠たいと思うのにうつろうつろと目を醒ましてしまった私は、藤堂家とはまた違う爽やかな部屋の匂いにハッとして目を開けました。 

小鳥の囀る声が聞こえます。時計は7時を指しておりますが隣には亮真様はいらっしゃいませんでした。 

ふと見ると亮真様の部屋へ続く扉がほんのわずかに開いておりまして無意識のうちにそっと中をうかがうために足を動かします。 

そっと部屋をのぞき込みますと、一人でお休みになられている亮真様がいらっしゃいました。 


夢のような初夜を終えたというのに胸に重苦しいものがのしかかって参ります。 

初夜を終えた新妻が夫婦の寝室で一人寝をしていたのだという事実に強く打ちひしがれてしまいます。 

旦那様は私と共寝をするのがそんなに嫌だったのかと思うと自然と涙があふれてきました。 


夫婦の寝室というものは夫婦で交わるためだけの場所なのでしょうか。今更情けなくてそのようなことを誰にも聞けません。 
 

これからは夫婦の行為が終われば私も同様に自分の部屋に戻っていかなければならないのかと思うと、胸の奥がツンとして、ますます涙が頬を伝って参りました。 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

私が愛する王子様は、幼馴染を側妃に迎えるそうです

こことっと
恋愛
それは奇跡のような告白でした。 まさか王子様が、社交会から逃げ出した私を探しだし妃に選んでくれたのです。 幸せな結婚生活を迎え3年、私は幸せなのに不安から逃れられずにいました。 「子供が欲しいの」 「ごめんね。 もう少しだけ待って。 今は仕事が凄く楽しいんだ」 それから間もなく……彼は、彼の幼馴染を側妃に迎えると告げたのです。

私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜

月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。 だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。 「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。 私は心を捨てたのに。 あなたはいきなり許しを乞うてきた。 そして優しくしてくるようになった。 ーー私が想いを捨てた後で。 どうして今更なのですかーー。 *この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

わたしは不要だと、仰いましたね

ごろごろみかん。
恋愛
十七年、全てを擲って国民のため、国のために尽くしてきた。何ができるか、何が出来ないか。出来ないものを実現させるためにはどうすればいいのか。 試行錯誤しながらも政治に生きた彼女に突きつけられたのは「王太子妃に相応しくない」という婚約破棄の宣言だった。わたしに足りないものは何だったのだろう? 国のために全てを差し出した彼女に残されたものは何も無い。それなら、生きている意味も── 生きるよすがを失った彼女に声をかけたのは、悪名高い公爵子息。 「きみ、このままでいいの?このまま捨てられて終わりなんて、悔しくない?」 もちろん悔しい。 だけどそれ以上に、裏切られたショックの方が大きい。愛がなくても、信頼はあると思っていた。 「きみに足りないものを教えてあげようか」 男は笑った。 ☆ 国を変えたい、という気持ちは変わらない。 王太子妃の椅子が使えないのであれば、実力行使するしか──ありませんよね。 *以前掲載していたもののリメイク

【完結】私の婚約者はもう死んだので

miniko
恋愛
「私の事は死んだものと思ってくれ」 結婚式が約一ヵ月後に迫った、ある日の事。 そう書き置きを残して、幼い頃からの婚約者は私の前から姿を消した。 彼の弟の婚約者を連れて・・・・・・。 これは、身勝手な駆け落ちに振り回されて婚姻を結ばざるを得なかった男女が、すれ違いながらも心を繋いでいく物語。 ※感想欄はネタバレ有り/無しの振り分けをしていません。本編より先に読む場合はご注意下さい。

お飾りの妃なんて可哀想だと思ったら

mios
恋愛
妃を亡くした国王には愛妾が一人いる。 新しく迎えた若い王妃は、そんな愛妾に見向きもしない。

完結 「愛が重い」と言われたので尽くすのを全部止めたところ

音爽(ネソウ)
恋愛
アルミロ・ルファーノ伯爵令息は身体が弱くいつも臥せっていた。財があっても自由がないと嘆く。 だが、そんな彼を幼少期から知る婚約者ニーナ・ガーナインは献身的につくした。 相思相愛で結ばれたはずが健気に尽くす彼女を疎ましく感じる相手。 どんな無茶な要望にも応えていたはずが裏切られることになる。

その眼差しは凍てつく刃*冷たい婚約者にウンザリしてます*

音爽(ネソウ)
恋愛
義妹に優しく、婚約者の令嬢には極寒対応。 塩対応より下があるなんて……。 この婚約は間違っている? *2021年7月完結

本編完結 彼を追うのをやめたら、何故か幸せです。

音爽(ネソウ)
恋愛
少女プリシラには大好きな人がいる、でも適当にあしらわれ相手にして貰えない。 幼過ぎた彼女は上位騎士を目指す彼に恋慕するが、彼は口もまともに利いてくれなかった。 やがて成長したプリシラは初恋と決別することにした。 すっかり諦めた彼女は見合いをすることに…… だが、美しい乙女になった彼女に魅入られた騎士クラレンスは今更に彼女に恋をした。 二人の心は交わることがあるのか。

処理中です...