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父と兄

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「父上、何か新たに情報は手に入りましたか?」

「ああ、やはり我々が予想した通りあの女の仕業だった。」

「くそっ!!あいつなんかがシャルを婚約者に選らばなかったらこんなことには!!」
「同感だ。悔やんでも悔やみきれん。向こうがどうしてもというから結んだ縁だというのに。」

「で、例の女はどうなるんですか?」

「ああ、今は賊が口を割って、証拠も十分に残っている。いくら侯爵家といえどもお咎めなしとはいかないだろう。もしあそこで、グレゴリーがいなければ間違いなくシャルは賊の手に落ちていただろうからな。」

「そうですね…。くそっ!こんなことで、シャルの大事なグレゴリーがこんなことになるなんて。」

シャルロッテの父も兄も、アレキサンダーの素行には頭を抱えていた。
再三、こちらからの婚約解消を願い出たが向こう側が首を縦に振ることはなかった。

愛するシャルロッテから笑顔が消え、日に日にやつれていくのを目の当たりにし、何もできない日々が続いた。
そしてついに、このような悲劇が起きたのだ。

こうなってしまう前に、どんな手を使ってでもシャルロッテを王都から遠ざけておけばよかった。
婚約解消とまではいかなくても、周囲の悪意からはまもってやることができたのではないか。

溺愛するシャルロッテを守れなかった二人は深く後悔した。

グレゴリーが、ずっとどれだけシャルロッテの傷ついた心を支えてきたか。
そんなグレゴリーが己の命と引き換えにシャルロッテを守ったのだ。

シャルロッテの悲しみは深く、今はだれの言葉も受け付けようとしない。

今二人にできるのは、シャルロッテをただ見守り、今度こそ何者からも守るべく思考を巡らせることぐらいだった。
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