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孤独の学園生活

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婚約者がいる身でありながら恋人を作ったのはアレクである。

しかも向こうからの強い希望で私たちは婚約者になったのだ。
どうして私がこんなつらい仕打ちを受けなければいけないのか。

普通に考えたら、婚約者がいる身で恋人を作る方が糾弾されるべきではないのだろうか。
ただそれを訴えたり相談できる友達が、噂のおかげだろうか一人もできていない。

学園生活が始まってすぐに、噂は広まり、クラスメイトはクモの子を散らすように私を避けるようになった。
どこへ行くにも陰口をたたかれ、嫌がらせを受け、そして噂を耳にする。

最初の頃は、アレクにどうにか手紙で面会を希望し話し合いの場を設けようとしたが、全て拒絶されてしまった。
なら、どうにか学園内で接触を図り、この噂を払拭すべく話し合えればと思ったが、すれ違うこともかなわないでいる。

噂の女性は、アレクの幼馴染で爵位も同じ侯爵家のアンネリーゼ様だ。
休み時間や移動時間に、よく二人の仲睦まじい様子を遠くに目にしたことが多々ある。

どうも、周りの生徒がアレクとアンネリーゼ様が私に鉢合わせないように、気を配っているみたいだ。

そして、周りの生徒はその私の様子を見てあざ笑うのだ。


我が伯爵家とアレクの侯爵家の力関係のせいなのか。
婚約を解消したいと父に訴えたことがある。
父の方も私のこの状況を良しとせず、最善を尽くそうとしてくれた。
しかしなぜか、アレク側がそれを拒否するのだ。

アレクサンダーの婚約者というだけで、常に女性から強い羨望のまなざしを送られ、嫌がらせの数々を受けてきた。

アレクサンダーの地位、容姿、周りを引き付けるその性格と能力は、婚約者がいる身であっても、常に女性を惹きつけてやまない。

こんなことなら、アレクとの婚約なんて何が何でも拒絶すればよかった。

せめて、アレクに惹かれる自分がいなければよかった。

恋人を作るくらいなら、私に優しくなんてしてほしくなかった。

心が擦り切れる日々を送るなかで、もうこんなことしか考えることが出来ないでいる。
帰りの馬車の中で、グレゴリーの大きな体を抱きしめながら、涙を流す毎日が続いた。

襲撃は、そんな矢先の出来事だった―。
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