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第62話 アンデッドへの対抗策はないが

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 ぞろぞろと湧いてくるアンデッドに俺たちはいとも簡単に囲まれてしまった。

 俺たちみたいな、アンデッドからすると俺たちは格好のエサなのか。

 それとも殴ったのがガイドの言っていたギミックのスイッチだったのか。

「なににせよ。早速ピンチってわけだな」

「おにい!」

 遠くからアルカの声が聞こえてくる。

 心なしか、不安げな声に聞こえた。

「大丈夫だ! ベヒちゃんは無事だから!」

 俺は安心させようと声を上げる。

「そうじゃなくて! 二人ともそこから助かるの?」

「なに言ってんだ! そっちの方が大丈夫に決まってるだろ!」

 と虚勢を張ってみたものの。数が数だ。俺のスキルで相手できるのかわからない。

 一体の強い相手ならなんとかなるが、大量の相手となるとどんな相手かによる。

 今回のような相手は、腐っている体のせいかうまいこと殴れないし蹴れない。

 俺の方が謎のダメージを受けるばかりで、俺も特別な魔法剣を持っているわけでもないためこちらからの有効打がない。

 俺のダメージからすると、おそらくはただのアンデッドではなく、アンデッドのような何かなのだろう。

「まともに相手をするだけ無駄だろう。ギミックというくらいだ。突破方法を用意するからこそ強力な手段を用いることができているのではないか。必要なのは脱出方法を考えることだ」

「つっても俺は空飛んだりできないし、この状況で考えろったって……そうか、なにもベヒちゃんは守るだけじゃない。なあベヒちゃ」

「あ、あああ。あああああ」

「そうだった。混乱してるんだ。こんなにテンパってるんじゃダメだ。話を聞いてくれそうにない」

 もしかしたらベヒなら空でも飛べるのではないかと思ったが、この状況では無理そうだ。

 じゃあジャンプするか? いや、こんな状態のベヒを落とせば助けられない。

 数に限りがあるなら少しずつでも削って持久戦を持ちかけることもできたが、相手の体は少しずつ増えているような気がする。

 力押しじゃどうにもならないか。

「神、一応聞くんだが、敵の数はどのくらいだ?」

「ざっと数百はいるだろう。ここは広いんだな」

「んなこと言ってる場合かよ」

「いや、貴様たち二人以外を狙っていないのが意外でな」

「俺たち以外を狙っていない?」

 となると、俺たちの生命力を狙っているのではなく、殴ったのが原因で今の状況になっているのか。

「とりあえず、他の仲間たちは無事なようだ。そこは安心していい」

「そうか。ならよかった」

 だが、無事でも動かないところを見ると、ガイドはギミックについて知らないのかそれとも教えないのか。

 俺がギミックの突破方法を探る必要があるわけか。

 協力者がいなければいけないなら、実質脱出不可能な気がするが。

 きっと俺たちでもなんとかできるはずだろう。が。

「ええい! 考えるのは面倒だ。ここは一か八か」

 俺はそう言いながら俺に寄りかかる混乱したままのベヒに顔を近づけた。

「なっ、なに? ラウル。ちか、近い! なにするの?」

「いいからじっとしてろ」

「えっ、ここで? ラーブが言ってたアレ?」

 アレがなんだか知らないが、ベヒは気を失ってしまった。

 いや、急にどうしたんだよ。

 むしろ都合がいいか。

「ラウル様! なにをするつもりですか!?」

「お前までなんだよ」

「いや、だって幼な子に」

「こいつ巨龍だから。じゃなくて、今からヨーリンのスキルを使ってモンスターを召喚するんだ」

「ならどうしてそんなにお顔を?」

「抱き上げるだけだよ。召喚したらどうにかしてすぐに道を開ける。そこを俺たちが全速力で避難するんだ」

「なるほどなるほど」

「で、ラーブとタマミにバトンタッチ。二人の力でこいつらにスキルをぶつけていく。相手は大群だがラーブたちを頼る方が勝率が高いはずだ」

 拳で吹き飛ばせばベヒまで飛ばされる。

 かといってこのまま一体ずつ倒そうにも俺の攻撃じゃあアンデッドにトドメを刺せない。

 こうなればトドメを刺せなくとも問題を保留にできるラーブのスキルの出番だ。

「モンスター召喚。なら、ゴーレムを召喚して相手させればいいのではないですか?」

「ゴーレム? その手があったか」

 一人では無理でも複数なら。

 それに時間稼ぎをして考える時間を作れるかもしれない。

「はっ!」

 俺は声を上げ、ゴーレムを作り出した。

 俺に魔法の適性が薄いからか、ヨーリンのスキルで無理矢理作れたゴーレムは一体。

 代わりに俺よりは大きな体のゴーレムだ。

「いくぞ」

 俺はゴーレムとともにアンデッドをタコ殴りにしていく。

 浄化魔法なんてものはなく、ただ、俺の手数を増やした攻撃。

 途中から俺は攻撃手段を剣に変え、アンデッドにダメージを蓄積させていく。

「ふぅ」

「どうやら朽ちたようです」

「攻撃回数を確保できればいいわけか」

 もしくは踏み潰して圧をかけるか。

 俺はゴーレムの肩に乗り、指示を出したが、上から一息に踏み潰せばアンデッドの動きが止まった。

「まあ、どちらにしても気分は悪いが」

 気を紛らわせるため、少し遠くまで見てみる。

 確かに数は数百を超えているように見える。

 どうにも最初に殴ったやつだけ、こちらから離れ建物の奥へ向かっているように見える。しかも、その方向からアンデッドがこちらへやってきているようだ。

 殴り飛ばしたのは失敗だったのかもしれないが、今となっては後の祭りだ。

「ははっ。慣れないことをしたせいかちょっとキツイな」

 攻略をゴーレムだけに任せているが、ゴーレムだけでは倒せそうもない。

 俺も加わりたいが、ゴーレムの生成はタコの時より疲労が激しい。

「やっぱし、脱出してタマミの回復を交えながらゴーレムを量産する。無理ならラーブに任せよう」

「それでなんとかできそうだと分かったのは収穫ですわね」

「アルカ! タコの手で一気に道を開けてそちらへ行く!」

「待って!」

 俺の呼びかけにアルカが制止の声を発した。

「アルカ?」

「準備は整った。よく耐えた。ここは浄化魔法が必要だったのだ」

 神が変なことを言う。

「は?」

「わたしに力を!」

 アルカの力強い声が聞こえてくる。

 それと同時にアルカたちがいた方向から、まばゆい光が届いてくる。

 その光に思わず目を閉じるが、光はとても温かく、俺たちを包むような感覚があった。
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