22 / 68
第22話 最後の八芒星
しおりを挟む
俺は街の中を走り回った。
死神とベヒを担ぎ探し回った。魔王の部下、八芒星の残り一体であるエイトーンを。
そいつは、思ったよりも早く見つけることができた。
「個人活動。どうしてだ。我々はグループだろう。魔王様はどうして個人活動にこだわるのだ」
塀に腰かけ、何やらぶつぶつとつぶやいている。
ベヒの言っていた通りなら黒い肌にツノの生えたあいつがエイトーンだろう。
なんの話をしてるのか知らないが、巨龍と同時に攻めてきたせいか部下への被害も大きいらしく、近くに誰もいない。
「ベヒちゃん。しにが、シニー。下がってろ」
「なんでシニーは呼び捨て?」
「いいから下がってろ。怖いんだろ」
ベヒが自慢げに胸張って叩かれているが、そんな子どもみたいなことやってる場合じゃないんだが。
まあ、殴られたくらいじゃ死なないだろうが、見た目的に俺が嫌だからってだけだ。
「危ないから喧嘩ならよそでやってくれ」
「ラウルちゃんって優しいよね」
「ラーブもうるさい」
雑談していたせいで、敵に気づかれてしまった。
エイトーンはこちらを見るとすぐにこちらを見た。
「我々はグループ。そう! グ、ループ! 私の指揮に合わせて美しく踊れ、敵に合わせて華麗に舞え!」
エイトーンは謎の棒を取り出すと急に立ち上がった。
だが、セブディと違い突っ込んでくるわけではなく、その場で棒を振っている。
「なにしてるのかな?」
「確か、演奏会かなんかで見た気がする」
勇者パーティなんてのに所属していると、生活するのがやっとだった子ども時代とは違い、さまざまな文化に触れることができた。
その時、どこかの街で見たのが、真ん中に棒を持った、大きな金色の道具を持った団体。
まさかあいつが道具や文化を広めたのか? 確かに、他の街では見聞きもしなかったような。
「演奏会? 会って集まりでしょ? ならなんで誰もいないの?」
「さあ? わからん」
俺たちが不思議がっていると、奇妙なことに地面のガレキがカタカタと音を立て出した。
次第に、ガレキは宙に浮き上がり、俺たちの周りを回り始めた。
ガレキだけじゃない、砂、ゴミ、人、モンスター。近くにあるすべてのものが不規則に動く。
俺たちの動きが奪われていないのはスキルの対象になっていないからか?
「十分な美しさ。十分な量。今だ叩け!」
エイトーンの動きがより激しくなると、動かされていたものが俺たちめがけて降ってきた。
「タマミ! ラーブ!」
神の移動が急なせいでまともな装備をしていない二人を庇うため、俺は勢いよく降りかかる様々なものを殴り飛ばした。
「あ、ありがとう」
「ラウルちゃん、サンキュ」
「言ってる場合か! くそ。これじゃキリがない」
俺一人なら、こんな攻撃突き抜けてエイトーンを殴ればよかった。
だが、タマミは強化はできても武闘派じゃない。ラーブもスキルは驚くものだが本体はそこまで丈夫じゃない。
「ラウル。シニーが守ればシニーちゃんって言ってくれる?」
「なんの話だ」
死神が突然わけのわからないことを言い出した。
ラーブのスキルは敵を手懐けられるのはいいが、性格が変わってしまうのはかなり厄介だな。
いや、性格が変わらないと仲間になってくれないか。
どちらにしろ今は関係ない。
「後にしてく」
「どっち!」
急に叫ばれ、俺は、思わず黙ってしまう。
「ああ。言ってやるよ。それくらいでいいなら。だが、守るったってどうするんだ?」
「こうする。タマミ。シニーに力を」
「でも、シニーちゃんは子どもでしょ」
「シニーを舐めるな。あたしは死神だ」
そう言うと死神は不敵に笑い。自分の体よりも何倍も大きなカマを出現させた。
カマだけで二人を守れるものかと思ったが、俺よりも的確に襲いかかるものを弾いている。
「べ、ベヒもやる」
死神に張り合うようにベヒもそう口にした。
「わかった。ここは二人に任せる」
頷きを合図と受け取り、俺は物の嵐を突っ切った。
「ほう。一人で抜け出してくるとはな。薄情なのか、はたまた仲がいいのか。我々よりもグループなのか? もしくはただ追い出されただけの可哀想なやつか」
「なんの話だ」
「間抜け。グループの話だ。我々は魔王様に続くグループだ。人間ならそれくらい知っておけ」
「だからなんの話だ」
グループだなんだって今関係あるのか?
それになんで俺がそんなこと知らなきゃならない。
「いいか。懇切丁寧に教えてやる」
「いらない」
「は?」
「いらないって言ってるんだ。俺はな、今ものすごく機嫌が悪い。自分に物をぶつけられて痛かったからじゃない。仲間が窮地にありながら、俺だけじゃ仲間に何もできなかったからだ」
「はっ。そうか。裏切りを恐れる仲間に追い出されたか。なんと不恰好なグループだ。それならばやはり、我々魔王軍という美しきグループに所属する私が優しく教えてあげ」
「黙れ。お前はそれ以上グループについて語るな。何が言いたいのかてんでわからないが、俺の仲間を馬鹿にされてることはわかる。それ以上喋るな」
未だ棒を振っているエイトーンめがけて俺は走り出した。
そして、エイトーンが反応するより早く、俺はエイトーンを叩き切った。
「ぐあっ!」
その場で倒れるエイトーン。
「あっけなかったな」
八芒星最後の一体が倒れた。
そのことが合図となったのか、空に四つの黒い柱が現れた。
「なんだあれ」
四つの柱は急速に落下してきている。まるで俺を狙うように。
さらに、俺は腰を後ろから引っ張られた。
慌てて確認すると、物の嵐から脱出した死神が俺のことを引っ張っていた。
「お、おい。なんだよ急に」
「ダメだ。あれはダメだ。帰るんだ。ここで戦う必要はない」
死神の様子からすれば、あの黒い柱はかなり危険なものってことなのだろう。
単に、幼女になって怯えているって可能性もあるが、なんとも言えない。
タイミングからして魔王軍に関係しているもの。
俺は初めて見るが。
「ボケっとしてるな」
「いや、でも」
「帰るって? そんなつれないこと言うなよ」
「あ、ああ」
何者かが現れると、死神は力無くその場にへたり込んでしまった。
ニタリと笑った男型のモンスターは眠ったままの幼い少女を抱き抱えて空中に浮いていた。
死神とベヒを担ぎ探し回った。魔王の部下、八芒星の残り一体であるエイトーンを。
そいつは、思ったよりも早く見つけることができた。
「個人活動。どうしてだ。我々はグループだろう。魔王様はどうして個人活動にこだわるのだ」
塀に腰かけ、何やらぶつぶつとつぶやいている。
ベヒの言っていた通りなら黒い肌にツノの生えたあいつがエイトーンだろう。
なんの話をしてるのか知らないが、巨龍と同時に攻めてきたせいか部下への被害も大きいらしく、近くに誰もいない。
「ベヒちゃん。しにが、シニー。下がってろ」
「なんでシニーは呼び捨て?」
「いいから下がってろ。怖いんだろ」
ベヒが自慢げに胸張って叩かれているが、そんな子どもみたいなことやってる場合じゃないんだが。
まあ、殴られたくらいじゃ死なないだろうが、見た目的に俺が嫌だからってだけだ。
「危ないから喧嘩ならよそでやってくれ」
「ラウルちゃんって優しいよね」
「ラーブもうるさい」
雑談していたせいで、敵に気づかれてしまった。
エイトーンはこちらを見るとすぐにこちらを見た。
「我々はグループ。そう! グ、ループ! 私の指揮に合わせて美しく踊れ、敵に合わせて華麗に舞え!」
エイトーンは謎の棒を取り出すと急に立ち上がった。
だが、セブディと違い突っ込んでくるわけではなく、その場で棒を振っている。
「なにしてるのかな?」
「確か、演奏会かなんかで見た気がする」
勇者パーティなんてのに所属していると、生活するのがやっとだった子ども時代とは違い、さまざまな文化に触れることができた。
その時、どこかの街で見たのが、真ん中に棒を持った、大きな金色の道具を持った団体。
まさかあいつが道具や文化を広めたのか? 確かに、他の街では見聞きもしなかったような。
「演奏会? 会って集まりでしょ? ならなんで誰もいないの?」
「さあ? わからん」
俺たちが不思議がっていると、奇妙なことに地面のガレキがカタカタと音を立て出した。
次第に、ガレキは宙に浮き上がり、俺たちの周りを回り始めた。
ガレキだけじゃない、砂、ゴミ、人、モンスター。近くにあるすべてのものが不規則に動く。
俺たちの動きが奪われていないのはスキルの対象になっていないからか?
「十分な美しさ。十分な量。今だ叩け!」
エイトーンの動きがより激しくなると、動かされていたものが俺たちめがけて降ってきた。
「タマミ! ラーブ!」
神の移動が急なせいでまともな装備をしていない二人を庇うため、俺は勢いよく降りかかる様々なものを殴り飛ばした。
「あ、ありがとう」
「ラウルちゃん、サンキュ」
「言ってる場合か! くそ。これじゃキリがない」
俺一人なら、こんな攻撃突き抜けてエイトーンを殴ればよかった。
だが、タマミは強化はできても武闘派じゃない。ラーブもスキルは驚くものだが本体はそこまで丈夫じゃない。
「ラウル。シニーが守ればシニーちゃんって言ってくれる?」
「なんの話だ」
死神が突然わけのわからないことを言い出した。
ラーブのスキルは敵を手懐けられるのはいいが、性格が変わってしまうのはかなり厄介だな。
いや、性格が変わらないと仲間になってくれないか。
どちらにしろ今は関係ない。
「後にしてく」
「どっち!」
急に叫ばれ、俺は、思わず黙ってしまう。
「ああ。言ってやるよ。それくらいでいいなら。だが、守るったってどうするんだ?」
「こうする。タマミ。シニーに力を」
「でも、シニーちゃんは子どもでしょ」
「シニーを舐めるな。あたしは死神だ」
そう言うと死神は不敵に笑い。自分の体よりも何倍も大きなカマを出現させた。
カマだけで二人を守れるものかと思ったが、俺よりも的確に襲いかかるものを弾いている。
「べ、ベヒもやる」
死神に張り合うようにベヒもそう口にした。
「わかった。ここは二人に任せる」
頷きを合図と受け取り、俺は物の嵐を突っ切った。
「ほう。一人で抜け出してくるとはな。薄情なのか、はたまた仲がいいのか。我々よりもグループなのか? もしくはただ追い出されただけの可哀想なやつか」
「なんの話だ」
「間抜け。グループの話だ。我々は魔王様に続くグループだ。人間ならそれくらい知っておけ」
「だからなんの話だ」
グループだなんだって今関係あるのか?
それになんで俺がそんなこと知らなきゃならない。
「いいか。懇切丁寧に教えてやる」
「いらない」
「は?」
「いらないって言ってるんだ。俺はな、今ものすごく機嫌が悪い。自分に物をぶつけられて痛かったからじゃない。仲間が窮地にありながら、俺だけじゃ仲間に何もできなかったからだ」
「はっ。そうか。裏切りを恐れる仲間に追い出されたか。なんと不恰好なグループだ。それならばやはり、我々魔王軍という美しきグループに所属する私が優しく教えてあげ」
「黙れ。お前はそれ以上グループについて語るな。何が言いたいのかてんでわからないが、俺の仲間を馬鹿にされてることはわかる。それ以上喋るな」
未だ棒を振っているエイトーンめがけて俺は走り出した。
そして、エイトーンが反応するより早く、俺はエイトーンを叩き切った。
「ぐあっ!」
その場で倒れるエイトーン。
「あっけなかったな」
八芒星最後の一体が倒れた。
そのことが合図となったのか、空に四つの黒い柱が現れた。
「なんだあれ」
四つの柱は急速に落下してきている。まるで俺を狙うように。
さらに、俺は腰を後ろから引っ張られた。
慌てて確認すると、物の嵐から脱出した死神が俺のことを引っ張っていた。
「お、おい。なんだよ急に」
「ダメだ。あれはダメだ。帰るんだ。ここで戦う必要はない」
死神の様子からすれば、あの黒い柱はかなり危険なものってことなのだろう。
単に、幼女になって怯えているって可能性もあるが、なんとも言えない。
タイミングからして魔王軍に関係しているもの。
俺は初めて見るが。
「ボケっとしてるな」
「いや、でも」
「帰るって? そんなつれないこと言うなよ」
「あ、ああ」
何者かが現れると、死神は力無くその場にへたり込んでしまった。
ニタリと笑った男型のモンスターは眠ったままの幼い少女を抱き抱えて空中に浮いていた。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
おっチャンの異世界日記。ピンクに御用心。異世界へのキッカケは、パンツでした。
カヨワイさつき
ファンタジー
ごくごく普通のとあるおっチャン。
ごく普通のはずだった日常に
突如終わりを告げたおっチャン。
原因が、朝の通勤時に目の前にいた
ミニスカートの女性だった。女性の
ピンク色のナニかに気をとられてしまった。
女性を助けたおっチャンは車にはねられてしまった。
次に気がつくと、大きな岩の影にいた。
そこから見えた景色は、戦いの場だった。
ごくごく普通だったはずのおっチャン、
異世界であたふたしながらも、活躍予定の物語です。
過去の自身の作品、人見知りの作品の
登場人物も、ちょっと登場。
たくさんの方々に感謝します。
ありがとうございます。
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
やがて最強の転生者 ~超速レベリング理論を構築した男、第二の人生で無双する~
絢乃
ファンタジー
スキルやレベルが存在し、魔物が跋扈する世界――。
男は魔物を討伐する「冒険者」になりたいと願っていたが、虚弱体質なので戦うことができなかった。そこで男は数多の文献を読み漁り、独自の超速レベリング理論を組み立て、他の冒険者に貢献しようとした。
だが、実戦経験のない人間の理論を採用する者はいない。男の理論は机上の空論として扱われ、誰にも相手にされなかった。
男は失意の中、病で死亡した。
しかし、そこで彼の人生は終わらない。
健康的な肉体を持つ陣川龍斗として生まれ変わったのだ。
「俺の理論に狂いはねぇ」
龍斗は冒険者となり、自らの理論を実践していく。
そして、ゆくゆくは超速レベリング理論を普及させるのだ。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
峻烈のムテ騎士団
いらいあす
ファンタジー
孤高の暗殺者が出会ったのは、傍若無人を遥かに超えた何でもありの女騎士団。
これは彼女たちがその無敵の力で世界を救ったり、やっぱり救わなかったりするそんなお話。
そんな彼女たちを、誰が呼んだか"峻烈のムテ騎士団"
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる