催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~

山田 武

文字の大きさ
上 下
116 / 125
大きな戦いに挑もう

人形で遊ばせよう

しおりを挟む


 道具を扱うことに長けたサリス、だがその才能はスキルとしてステータスに表示されていないので少し困った。

 ゲームで言うところのPS──つまりスキルとは関係なく、本人の資質が発揮される能力……こっちの世界だと認識しづらいな。

 だがそれでも、道具ならいいか……とやや面倒になった思考を凝らし、あるアイテムを製作した。

「──よし、これを使ってくれ」

「あ、あの……これって……」

「見て分からないのか? なら、面倒だがいちおう最初から説明しようか……」

「そ、そうじゃなくて──糸、ですよね?」

 サリスに渡したのは色とりどりの糸だ。
 さすがは異世界ということもあり、その色ごとに特殊な効果が付随されている。

「先に、使うかどうかは別にしてだぞ。お前はそれを上手く使えそうか?」

「えっ? …………は、はい。上手く魔力を通すこともできますので、使い方さえ教えていただければ使えます」

「……さすがだな。まあいいや、それじゃあ使い方を説明するぞ──これに糸を繋げ」

「えっと……お人形、ですか?」

 お人形、と言われるほど可愛いデザインにした覚えはない。
 異空間収納スキルで取りだしたのは、木や金属などさまざまな素材で作った人形だ。

 メイド俺のアイテムなので、全部顔は穴だけとかそんな適当な感じである。
 ……奴隷たちのスキルを試すついでにいろいろ経験済みで、見た目度外視なら作れた。

「魔力回路だけは通してある。この中で、どれが一番使いやすいかを試したいんだが……これもとりあえずだ、やってみろ」

「は、はい」

 言われるがまま、サリスは人形に糸を繋いで魔力を通す。
 すると人形たちは不自然な挙動で立ち上がり、直立する体勢を取る。

「で、できました。あ、あの、もう少し練習すれば、もっと上手く動かせます」

「……本当に、天才っているんだな。それでだ、どれが一番使いやすかった?」

「それだと…………この子、ですね」

「ああ、それか……」

 どういった素材を使ったかを分かりやすくするため、人形たちの表面は素材そのものといった感じだ。

 そしてサリスが指したのは、もっとも人間らしい人形。
 人のような肌があり、内部から素材をふんだんに使っているヤツだ。

「それな、人族が素材なんだ」

「…………えっ?」

「ああ、誤解しないでくれよ。別に生きた人間から剥ぎ取ったわけでも、死体を人形にしたとかそういうことでもない。協力者の皮膚から培養した人工皮膚なんだ。まあ、要するに模造品だな」

「えっ、あぅ……」

 協力者、のお蔭で大量に持っている。
 多様な種族の物があるのでだが、今回は普人版の通常スペック人形にしておいた。

「それを作るのに誰かが死んだわけでも、死者を冒涜したわけでもないから安心……すればいいんじゃないか?」

「ど、どうして疑問形なんですか!?」

「俺自身がどうでもいいと思っているからだな。さて、やっぱり魔力は通せた方が効率はいいみたいだ。なら、人形はやっぱり人族を使った方がいいか」

「えっ、ええ──ッ!?」

 魔力回路を刻むこと自体は、どの人形でもできたが……やはり、もともと人の方が魔力の通しやすいのでもっとも操りやすいのもまた、人族という結論に至る。

「まあ、問題は抵抗だな。けど、お前は達人だからな……たぶん、なんとかなるだろう」

「で、できませんよ!?」

「考えてみろよ。抵抗ってのは、閉じた鍵穴みたいなものだ。針金を使って開けられるような物なんだから、お前の超絶技巧を使えばサクッと解除できるだろう──はい次、今度はこっちをやってみろ」

「……また、人を使ったのですか? しかも今度は、こんなにそっくりに……」

 普人を再現した人形を用意してみた。
 ただまあ、顔のサンプルは面倒臭かったので、見た目が良かった聖人の遺骸から型を取り張り付けた物を使用している。

 素材は厳選し、回路も古山人のファ……奴隷に作らせた特注のヤツ。
 擬似的に他からの干渉を拒む仕様なので、今回のテストに最適だ。

「ああもう、気にするな。お前は強くなりたい、自分の望む【英雄】になりたい……そうなんじゃないか? 別にお前を悪用したいわけじゃない、ただサンプルが欲しいだけだ」

「サンプル、ですか?」

「そうだ。俺は力を貸す、だからお前はその力を使える姿を見せてほしい。それだけで、俺はもっと上を目指せる……こんな理由なんだが、それでも手伝ってほしい」

「…………」

 催眠魔法で従わせることも考えたが、やはり【英雄】にどう作用するか謎な点が多いので止めておいた。

 代わりにするのはぶっちゃけ話。
 どうせ失敗してもやり直しは効くので、今の内に本性を晒しておく。

「いいか、俺は【導士】だ」

「…………え゛っ?」

「だから初めて会ったとき、狙われていた。サリスよりも上物だからな、寝ていて無防備なヤツなんて」

「で、でも……反応は?」

 目印でもあるのか、【導士】を冠する職業はこの空間だと認識されるとその存在を認知できるシステムが備わっている。

「魔法で隠した。そういうものもある、そこはいちおう生命線でもあるから内緒だぞ」

「そ、そうですか……」

「さて、言うべきことはだいたい言った……協力してくれるか──お人形遊びに?」

 はて、サリスの解答はいかほどに。

しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

俺のスキルが無だった件

しょうわな人
ファンタジー
 会社から帰宅中に若者に親父狩りされていた俺、神城闘史(かみしろとうじ)。  攻撃してきたのを捌いて、逃れようとしていた時に眩しい光に包まれた。  気がつけば、見知らぬ部屋にいた俺と俺を狩ろうとしていた若者五人。  偉そうな爺さんにステータスオープンと言えと言われて素直に従った。  若者五人はどうやら爺さんを満足させたらしい。が、俺のステータスは爺さんからすればゴミカスと同じだったようだ。  いきなり金貨二枚を持たされて放り出された俺。しかし、スキルの真価を知り人助け(何でも屋)をしながら異世界で生活する事になった。 【お知らせ】 カクヨムで掲載、完結済の当作品を、微修正してこちらで再掲載させて貰います。よろしくお願いします。

俺と異世界とチャットアプリ

山田 武
ファンタジー
異世界召喚された主人公──朝政は与えられるチートとして異世界でのチャットアプリの使用許可を得た。 右も左も分からない異世界を、友人たち(異世界経験者)の助言を元に乗り越えていく。 頼れるモノはチートなスマホ(チャットアプリ限定)、そして友人から習った技術や知恵のみ。 レベルアップ不可、通常方法でのスキル習得・成長不可、異世界語翻訳スキル剥奪などなど……襲い掛かるはデメリットの数々(ほとんど無自覚)。 絶対不変な業を背負う少年が送る、それ故に異常な異世界ライフの始まりです。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

【魔物島】~コミュ障な俺はモンスターが生息する島で一人淡々とレベルを上げ続ける~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【俺たちが飛ばされた魔物島には恐ろしいモンスターたちが棲みついていた――!?】 ・コミュ障主人公のレベリング無双ファンタジー! 十九歳の男子学生、柴木善は大学の入学式の最中突如として起こった大地震により気を失ってしまう。 そして柴木が目覚めた場所は見たことのないモンスターたちが跋扈する絶海の孤島だった。 その島ではレベルシステムが発現しており、倒したモンスターに応じて経験値を獲得できた。 さらに有用なアイテムをドロップすることもあり、それらはスマホによって管理が可能となっていた。 柴木以外の入学式に参加していた学生や教師たちもまたその島に飛ばされていて、恐ろしいモンスターたちを相手にしたサバイバル生活を強いられてしまう。 しかしそんな明日をも知れぬサバイバル生活の中、柴木だけは割と快適な日常を送っていた。 人と関わることが苦手な柴木はほかの学生たちとは距離を取り、一人でただひたすらにモンスターを狩っていたのだが、モンスターが落とすアイテムを上手く使いながら孤島の生活に順応していたのだ。 そしてそんな生活を一人で三ヶ月も続けていた柴木は、ほかの学生たちとは文字通りレベルが桁違いに上がっていて、自分でも気付かないうちに人間の限界を超えていたのだった。

良家で才能溢れる新人が加入するので、お前は要らないと追放された後、偶然お金を落とした穴が実はガチャで全財産突っ込んだら最強になりました

ぽいづん
ファンタジー
ウェブ・ステイは剣士としてパーティに加入しそこそこ活躍する日々を過ごしていた。 そんなある日、パーティリーダーからいい話と悪い話があると言われ、いい話は新メンバー、剣士ワット・ファフナーの加入。悪い話は……ウェブ・ステイの追放だった…… 失意のウェブは気がつくと街外れをフラフラと歩き、石に躓いて転んだ。その拍子にポケットの中の銅貨1枚がコロコロと転がり、小さな穴に落ちていった。 その時、彼の目の前に銅貨3枚でガチャが引けます。という文字が現れたのだった。 ※小説家になろうにも投稿しています。

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…

小桃
ファンタジー
 商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。 1.最強になれる種族 2.無限収納 3.変幻自在 4.並列思考 5.スキルコピー  5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

処理中です...